19960205

住専処理問題 国民の税金を銀行救済に使うな

大銀行の儲けをはき出させよ


 一月二十二日開会の通常国会 で破たんした住専(住宅金融専門会社)処理問題が最大の焦点となっている。
 政府は住専処理のために六千八百五十億円もの国民の税金を投入することを九六年度予算案に盛り込んでいる。さらに、住専処理の過程で今後発生する「二次損失」についても、その半分は国民の税金で穴埋めするとしている。「二次損失」は二兆円を超えるとも予想されており、六千八百五十億円に加えて一兆円を超える巨額の税金が、バブルに踊った銀行・金融機関の尻ぬぐいのために投入されることになる。これは国民一人当たり一万三千五百円、四人家族で五万四千円もの負担である。
 橋本政権は「金融システムの安定」「国際的な信用の維持」のためなどと危機感をあおって国民への負担を合理化しようとしているが、とんでもないことである。
 われわれは、銀行救済のために国民の税金を使うことに断固反対する。橋本政権の銀行救済、銀行優遇の実態を徹底的に暴露し、大銀行の忠実な手代としての正体を明らかにし、国民の怒りでこの暴政を阻止しなければならない。

住専破たんの責任は大銀行
 国会の審議やマスコミでは、住専破たんの責任の所在や処理をめぐる関係者の負担について議論が盛んに行われている。やれ、貸し手の農林系金融機関の負担が足りない、やれ、借り手の暴力団問題などなど。これらにはもちろんそれなりの責任があるのは当然だ。
 だが、はっきりさせなければならないのは主たる責任はどこにあるかということである。住専の成立と破たんの経過を見るならその主たる責任が、住専を設立し、これを利用してバブル投機で暴利をむさぼり、果ては破たんに追い込んだ大銀行(母体行)にあることは明白である。また、対米追随の円高、協調利下げ政策でバブルを発生させ、こうした大銀行と癒着し、「監督」してきた大蔵省、歴代政府にある。
 政府が公表した資料によれば、破たんした住専七社の常勤役員の八八%が母体行の出身者、五%が大蔵省からの天下り官僚である。母体行が住専の主要役員を独占して経営の実権を握り、住専を子会社として利用してきたのは明白である。
 なぜ、住専は不動産融資にのめりこんでいったのか。もともと住専は、銀行が個人の住宅ローンに消極的だったために、大蔵省の肝入りで、個人住宅融資を専門とするノンバンクとして設立された。しかし、一九八五年頃からの低金利で個人住宅融資が好調になると、母体行はそれまで見向きもしなかった個人向け融資に乗り出し、系列を利用して住専の個人客まで奪った。その結果、住専は新たな融資先を求め、本来の業務である個人住宅融資から逸脱して不動産融資を拡大した。
 こうした傾向を一挙に拡大させたのが、九〇年三月の大蔵省銀行局長の「不動産融資に対する総量規制」の通達で、その対象から住専がはずされた。融資規制でも農林系金融機関が対象外となった。こうして農林系金融機関――住専――不動産という資金の抜け道ができたが、バブルがはじけ担保物件が不良債権化すると、住専破たんへの道となった。
 不動産融資でも、母体行は住専を徹底的に利用した。住専にきた優良客を母体行にまわさせ、母体行にきた危険性の高い客は「紹介融資」で住専に引き受けさせた。母体行は住専にリスクを負わせ、不動産融資のトンネル会社として最大限に利用したのである。農協系金融機関の住専への膨大な融資も、何らかの母体行の「了解」があったといわれている。その結果、バブルの崩壊とともに、住専七社の不良資産は約九兆六千億円、総資産の七四%にのぼった。
 こうした経過を見るなら、大銀行が住専破たんの後始末に全責任を負うのは当然である。大銀行のこうした勝手し放題を容認し、何一つ有効な手だてをこうじてこなかった大蔵省、歴代政権の責任は重大である。

すでに銀行には手厚い救済が
 だが、政府の銀行優遇、救済策は、これが初めてではない。すでに国民の目をかいくぐって数兆円もの国民の税金が使われている!
 その一、超低金利政策。「利息から盗られ税金から盗られ」。『朝日新聞』にこんな川柳がのっていた。 政府は昨一年間だけで、公定歩合を一・七五%から〇・五%へ、一・二五%も引き下げた。銀行全体の預金残高は約五百兆円だから、単純に計算すれば、銀行は六兆二千五百億円の利息を払わずにすんだことになる。その結果、住専の母体行である大手二十一行の業務純益は、不況にもかかわらず九五年九月中間決算で約二兆五千億円となり、史上最高を記録した。九五年度全体の業務純益は五兆円を超すと予想されている。 政府の低金利政策によって、預金者は受け取るはずの利息から六兆二千五百億円を銀行に「盗られ」たのである。
 その二、無税償却。朝日新聞社の推計によれば、大手二十一行は九二年四月から九五年九月までの三年半で、七兆五千億円の不良債権を無税償却し、法人税・住民税の免除額は三兆六千億円にのぼるという。不良債権の償却は必ずしも無税償却となるものではないが、国税庁が無税償却を認めて、最近では九割が無税償却になったとみられている。これは三兆六千億円の税金を銀行にくれてやったのと同じだ。
 国税庁は、今回の住専処理で母体行などが負担する五兆七千三百億円についても、その全額を無税償却することを認め、本来は課される法人税を免除する方針を固めた。法人税の免除額は約二兆千五百億円(このほかに住民税の免除額が六千三百億円)にのぼると推定され、母体行の負担はほぼ半減する。政府は「一次損失」で投入する六千八百五十億円のほかに、陰でその四倍にあたる約二兆七千八百億円の税金を投入することになる。
 国民は、すでに過去三年半の間に大手二十一行によって三兆六千億円を「税金から盗られ」た。政府の住専処理案を許せば、さらに今年は三兆五千億円を「税金から盗られ」、将来も一兆円近くを「税金から盗られ」るのである。どうしてこんなことが許せようか。

橋本政権への怒りを行動に
 住専の破たん問題は、大銀行を中心に莫大な利益をあげたバブル経済の帰結の一側面にすぎない。かれらは地上げ屋を使い、土地投機に走り、株式ブームを扇動して、錬金術師のように暴利をあげた。八五年十二月から八九年十二月までの四年間のバブル膨張期に、株式で三百五十二兆円、土地でなんと千三十七兆円のキャピタルゲイン(資産値上がり益)が生み出された。この内の多くを大銀行が支配し、バブルの最大の受益者だったことは周知の通りである。
 こうした土地投機のばくちに手を出し、さんざんボロ儲けした後で、バブルが崩壊し、そのツケが回ってきたのである。
 だからそのツケは、大銀行自らが全責任をとって払うべきで、国民の税金で尻ぬぐいさせるなどおかど違いもはなはだしい。バブル期にさんざんボロ儲けした利益をはき出すべきである。しかも今日、大銀行は超低金利政策下で史上最高の業務純益に加えて、株価の上昇で株式含み益も増やしている。二月一日の平均株価(二万九百三十五円)だと、大手二十一行の株式含み益は二十兆円余に達し、昨年九月末より八兆円も増えることになる。
 橋本政権は、こうした大多数の国民からみれば当然の処理策ではなく、あえて大銀行の救済に国民の税金を使うという提案をしている。これはこの政権が歴代政権と同様、徹頭徹尾、大銀行の忠実な手代であることを自己暴露するものである。
 日本の国家財政が先進国中最悪であることを知らぬはずはない。なのに、住専処理に六千八百五十億円、銀行への隠し減税二兆千五百億円を惜しげもなく大銀行の救済に投入しようというのである。結果、赤字国債発行高は前年度の四・二倍、十二兆円にのぼり、国債残高は来年度末には二百四十一兆円に達する。
 大銀行の救済には、国家財政の破たんも辞さない。そのツケは、さらに消費税増税で国民に押しつける。 こうした政府は国民の敵である。 倒産、廃業、営業難、首切り、就職難、賃下げに苦しむ国民各層の怒りを行動にかえ、この暴政を阻止しなければならない。

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