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2022年4月5日号 1面

ロシア制裁、中国敵視の
軍備増強をやめよ

岸田政権はインフレ対策急げ

食料品値上げ相次ぐ
 私たちの毎日の生活に直接響く食料品の店頭価格が相次いで値上げされている。
 食品の主要60品目の中で、昨秋以降にメーカーが値上げを表明した14品目のうち12品目の店頭価格が値上げされた。前回の値上げ局面だった19年は7品目のうち4品目の値上げにとどまったが、今回、店頭価格への転嫁が早いペースで進んでいる。
 食パンと菓子パンは6〜7%それぞれ上昇した。冷凍食品と乾燥パスタはともに3%上がった。菓子パンは最大手の山崎製パンが1月に、冷凍食品もニチレイフーズが2021年 月に値上げした。価格転嫁が想定通りに進んでいる商品も目立つ。山崎パンは食パンを平均9%の引き上げを表明し、2月の店頭価格も9%上がった。
 これまでメーカーが値上げを表明しても小売り側が拒み、店頭価格に反映される商品は限られていた。今回の値上げが浸透しているのは物流費や人件費の上昇に加え、原材料の高騰が重なってメーカーが強く値上げを求めている。2月に値上げしたしょうゆメーカーは「大豆の価格が大きく上昇し価格を改定しなければ事業として続けられないようなレベルだ」と指摘する。大手スーパーも「メーカーが次々に値上げする中で自社で吸収するのは限界がきた」と語っている。
 小麦価格は、ウクライナ戦争が始まる以前から、米国やカナダでの不作の影響で昨年後半から高値が続いており、政府は輸入小麦の売り渡し価格を4月から平均17%引き上げた。年2回の政府による売り渡し価格は、昨年10月にも19%引き上げられており、それに伴い今年1月から食パンやうどんなどが値上げされている。
 小麦の国際価格は3月に史上最高値を更新。現状の高値が継続すれば今年10月以降の政府売り渡し価格がさらに値上がりする。穀物輸出大国のロシアとウクライナの戦争が長期化すればさらに小麦・穀物不足に拍車がかかる。
 国連食糧農業機関(FAO)によると、2月の世界の食料価格指数(14〜16年=100)は140・7と前11年ぶりに過去最高を更新した。
 食料品の相次ぐ値上げは物価全体を押し上げている。2月の消費者物価指数(CPI、20年=100)は変動の大きい生鮮食品を除く総合指数が100・5と前年同月比0・8%上昇した。そのうち食料品が0・35ポイント押し上げた。4月以降も値上げが相次ぐ予定で、足元で進む急激な円安も物価上昇に拍車をかける。

企業物価やエネルギーも
 コロナ禍や半導体不足など世界的なサプライチェーン(供給網)の乱れに円安も加わり、海外からの部品、現在料の輸入物価も値上がりしている。日銀がまとめた2月の企業物価指数も前年同月比9・3%上昇した。上昇率は石油危機後の1980年12月以来の高水準となった。
 原材料費などの高騰で、食料品だけでなく日用品など幅広い商品・サービスで値上げが相次いでいる。
 さらに、電力大手10社と都市ガス大手4社は3月30日、全社が値上げを発表した。東京電力では1年前と比べて、平均的な家庭で月1600円超の値上がりとなる。5月分からは、脱炭素を進めることを口実とする「再生可能エネルギー発電促進賦課金」も24円値上げとなる。
 電力小売り自由化で全国に約750社の「新電力」が出来たが、電力調達価格の高騰は発電設備を持たない「新電力」の経営の重荷となって、供給の停止だけでなく、経営破綻に追い込まれる企業も出ている。21年以降に事業を停止した新電力は約20社に上る。
 ガソリンなど燃料価格の高騰も、日常生活だけでなく、運送事業者をはじめ農林漁業者の営業、営農などに大きな負担となっている。メーカーと違って農林漁業者は燃料費や資材費の高騰を販売価格に転嫁できない。
 労働者や高齢者は年金の減額や賃上げが抑ええられ、生活費の切りつめを強いられている。

「悪い円安」動けぬ日銀
 3月16日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)で、連邦準備制度理事会(FRB)は利上げ開始を決めた。
 一方、日銀は3月18日、大規模な金融緩和の維持を決めた。米欧が金融引き締めに転じて日米の金利差は拡大する方向である。なのに逆を向く大規模緩和はさらなる「悪い円安」を招く。だからと言って、インフレ抑制のために金融引き締めに動けば、低迷する景気をさらに冷やすリスクを増大させる。黒田日銀は、インフレと「円安」、景気低迷と世界最悪の財政赤字の複雑な関係のなかで効果的な政策をとれなくなっている。
 わが国の経済構造は、過去の輸出主導で稼ぐ経済から、海外への投資、M&A(合併・買収)による子会社からの配当や株式・債券投資などの「第1次所得収支」で支えられてきた。ロシア制裁が欧米の実体経済に波及すれば、海外景気や金利上昇が支えてきた所得収支の黒字も影響を受ける。財務省が3月8日発表した1月の国際収支統計(速報)では経常収支は1兆1887億円の赤字となった。赤字は2カ月連続で、赤字額は14年1月に次いで過去2番目の大きさとなった。今回の赤字はエネルギー価格高騰に円安が重なったのが主要因で、対ロ制裁が長引けばエネルギー価格の上昇はおさまらず、経常収支の赤字が常態化する可能性さえある。赤字の拡大が止まらなけなれば、世界でも突出した政府債務を民間の貯蓄で支えるバランス(ISバランス)が崩れ、政府の政策遂行にも大きな影響が出る。日本経済にとって一大事ともいえる事態が迫っている。

岸田政権は制裁をやめよ
 岸田政権は、米欧など7カ国首脳会議(G7)や北大西洋条約機構(NATO)諸国と足並みを揃えてロシア制裁に血道を上げている。
 足元のエネルギー価格など諸物価の高騰が国民生活を脅かしていることに対する対策はまったくおろそかである。また感染が再拡大しつつあるコロナ対策も、経済最優先で「まん延防止措置」の解除や入国制限の緩和などを相次いで行なった。肝心のワクチン接種は予定通りには進まず、毎日数万人の新規感染者が出ているにもかかわらず「他人事」のようである。
 政府は、ようやく4月5日に「原油価格・物価高騰等総合緊急対策」の会議を開き、4月末までに取りまとめるとしている。遅きに失していると言わねばならない。対策の柱は、原油高対策やエネルギー・食料の安定供給、中小企業支援、生活困窮者支援の4つを対策の柱としている。こうした経済対策が効果がまるでないとは言えないが、あくまで対症療法的なものである。原油高対策といっても日本が原油価格を決められるわけでもない。より実際的にはコロナ対策を効果的・抜本的に強化して、経済回復の道筋をつけることこそが大切ではないか。
 岸田政権が踏み込んでいるロシア制裁は、制裁に加わっているわが国経済にも確実に跳ね返ってくる。国民生活を悪化させるロシア制裁は直ちにやめるべきである。また中国対抗のために軍事費の国内総生産(GDP)比1%の枠を飛びぬけた軍備拡大をやめ、国民生活擁護に回すべきである。
 岸田政権に政策転換を求める広範な世論を形成しなければならない。
 労働者・労働運動は自らの生活を守り、向上させるために闘うことは当然だが、平和な環境を作り、広範な国民生活を守るために闘うことが求められている。(H)


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