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2022年3月25日号 1面

岸田政権は直ちにロシア制裁やめよ

国民生活守るため全力を

 ウクライナ危機の長期化で、コロナ禍で悪化していた国民生活がさらに苦しくなってきている。
米欧など帝国主義諸国は、ウクライナへの武器供与や軍事費支援、周辺国への部隊の増派などで事態をさらに悪化させている。大量の武器供与はウクライナとロシアの非人道的で残酷な殺し合いを助長するだけである。また、ロシアへの過酷な金融・経済制裁は、コロナ禍で悪化した世界経済の危機をいっそう深刻化している。
 そうした中で岸田政権も七カ国首脳会議(G7)と同調してロシア制裁に加わり、事態の悪化に加担している。
 直ちにロシアへの制裁をやめて、事態の平和的解決に向けた外交努力に舵を切るべきである。

続く値上げラッシュ
 急速な資源高や円安によって国内でもインフレが加速してきた。二月の消費者物価上昇率は〇・六%と、コロナ禍以前の二〇二〇年二月以来の伸び幅となった。六カ月連続の上昇である。一・五ポイントの携帯値下げの影響を除くと上昇率は二%を超える。また、ロシアのウクライナ侵攻後、国際商品市場はさらに高騰に拍車がかかり、国内の物価上昇率も四月以降二%台半ばに迫る勢いである。
 総務省が三月十八日発表した二月の消費者物価指数は生鮮食品を除く全五百二十二品目のうち六割以上の三百十九品目が上昇し、前月からさらに増えた。
 原油価格の高騰でエネルギーが二〇・五%上昇し、第二次石油危機後の一九八一年一月以来、四十一年ぶりの伸びとなった。灯油(三三・五%)やガソリン(二二・二%)、電気代(一九・七%)など軒並み上昇した。しかも、火力発電向けの原油や液化天然ガス(LNG)価格はさらに高騰しており、冷房を多く使う夏まで電気料金が上がり続ける可能性が高まっている。電力五社は五月に家庭向け電気料金を引き上げる。東電など五社の値上げは九カ月連続となる。東電では一年前より二割超高くなる見通しで、企業収益や家計への負担がさらに重くなる。
 また、値上げが相次いでいる食料品も食用油(二九・八%)、輸入牛肉(一一・一%)、食パン(八・二%)などが上昇している。値上げはマヨネーズや菓子類などあらゆる食料品に広がっている。日用品や衣料品などにも価格転嫁の動きが顕著となっている。ロシア産の水産物、肥料や飼料にも影響が出れば、農業者や水産業者も影響を受ける。
 四月から年金支給額が〇・四%減額になるなど庶民の生活はいちだんと厳しくなる。今春闘でのわずかな賃上げも吹き飛ぶ。多くの低賃金労働者には値上げがそのままのしかかる。

産業界から「慎重に」の声
 こうした値上げの動きは庶民の生活だけでなく、資源高や円安による原材料や部品の輸入価格の上昇などで企業活動にも大きな影響が出てきていた。ロシアやウクライナに多く依存してきたニッケルやネオンなど一部の原材料の価格や原料の確保にも影響している。海運、航空、鉄道などの輸送の混乱や停滞などで運賃コストも上昇している。
 G7各国の追加制裁に同調して、岸田政権もロシアへの最恵国待遇の撤回など制裁を強化する方針であるが、産業界からは「制裁は慎重に」という声も上がっている。
 電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は十八日、会見で「日本は島国でエネルギー資源に乏しい。(ロシアへの)経済制裁にロシア産のエネルギー資源を含めることについては慎重に議論すべきだ」と述べた。米英はロシア産石油などの禁輸や輸入の段階的な終了を表明しているが「日本はエネルギー資源が乏しく、米英などとは状況が大きく異なる」とした。ロシアからの輸入が途絶えた場合「LNGの需給は非常にタイトだ」として代替調達は容易ではないとの見方も示した。
 岸田政権やマスコミはウクライナ危機を騒ぎ立て、ロシアやベラルーシへの制裁を強化せよという世論づくに躍起になっている。ウクライナ危機を口実にアジアで中国への対抗を強めようという狙いもあるからである。大半の野党もこれに同調してロシアへの非難を強めている。共産党は、政府に対して本年度予算案から「日ロ経済協力関連予算の削減・凍結は当然」(小池書記局長)と迫るなど、ロシアへの圧力強化を迫っている。共産党のこうした主張は事態の平和的解決と全く逆行するもので、言語道断である。
 ロシアへの制裁が強化され、長期化すれば、国民生活にいちだんと跳ね返り、企業活動への悪影響も加速するのは必至である。いくらかでも国民生活を守ろうとするなら、制裁を直ちにやめるべきである。

国民生活省みぬ岸田政権
 昨年来のコロナウイルスの第六波の急拡大と感染者数の高止まりで、国民生活や経済活動に大きな打撃となっている。
 岸田政権は、昨年十月の発足以降、コロナ対策を最優先するとしてきた。今年の施政方針演説でも「総理に就任した時から、最悪の事態を想定して、万全の体制を整えるべく、政府を挙げて、取り組んできた」と述べた。
 だが、その後も感染爆発は止まらず、連日数万人の新規感染者数を数えている。三月初め、国内の感染者数は累計で五百万人を超え、減少ペースは遅い。死者も増え続けている。さらにアジアではオミクロン株の派生型の新規流行も拡大し始めている。感染しても入院できず自宅で亡くなる人も多く、小児の病床はひっ迫したままである。
 感染予防のための三回目のワクチン接種は計画通りには進まず、三月半ばでようやく全人口の三割を超えたところである。高齢者の接種率は七割を超えているが、感染が広がっている若年層の接種率は低いままで、一日当たりの接種回数も百万回の目標に届かない日が多いのが実際である。
 他のG7諸国では、米国をやや上回るものの、カナダ(五割弱)、ドイツ・英国・フランス(五割台)、イタリア(六割)と比較しても明らかに低い。「万全の体制」という掛け声とは裏腹に、実際の対策はないがしろにされてきた。
 岸田首相は、財界の声に押されて入国制限の緩和やまん延防止措置の解除などに踏み切っているが、国民の命と生活は置き去りにされたままである。
 さらに三月十六日には宮城、福島を中心に震度六強の地震が襲い、大きな被害が出た。幸い津波の被害はなかったが、建物やインフラへの被害は大きい。政府は住民生活の再建と被害の普及のために全力を挙げるべきである。
 国民生活を考えるならロシア制裁にうつつを抜かすような時期ではないはずである。

直ちにロシア制裁をやめよ
 米国は、ウクライナ危機を最大限利用して西側の同盟再構築を図ろうとし、武器援助などで危機をいっそう加速している。米欧によるウクライナへの武器援助は、ウクライナ国内での戦闘を激化させ、米欧は血を一滴も流さず、人民だけが犠牲になるというきわめて残酷・非人道的な行為である。湾岸戦争以降、イラクでは百五十万人もが医薬品不足などで殺された。
 米国は「ロシアを支援すれば制裁する」と中国へのどう喝も強めているが、中国は原則的な立場を堅持している、世界の大多数もロシア制裁には加わっていない。冷戦終結後の世界秩序は大転換する情勢である。
 岸田首相は、アベノミクスの破たんで行き詰まった経済の再建のためと称して「新しい資本主義」を掲げて登場した。だが、いまだ「新しい資本主義」の輪郭さえ打ち出せていない。資本主義的生産様式そのものが行き詰まっている時代だから、打開の方向を打ち出せないのは当然だが、お粗末と言うほかない。
 米中対立の狭間で揺さぶられ、国の生き方が問われる内外情勢のなかで右往左往してきた岸田政権だが、今回のウクライナ危機はまさに政権のあり方が根本的に問われる事態である。
 わが国がアジアで将来にわたって平和・互恵の国際関係を築くために、岸田政権は直ちにロシア制裁をやめ、平和解決のために中国やインドなどアジア諸国と手を携え、平和解決に力を注ぐべきである。それが国民生活を守る道である。そのために、労働者をはじめ各界の人びとが連携し、広範な国民の世論でロシア制裁を直ちにやめさせよう。(H)


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