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2022年1月1日号 2面〜5面

2022年新春座談会

 昨秋、日本労働党は秋山秀男議長を中心とする新たな中央体制を確立した。新指導部は、結党以来四十八年に及ぶ全党の政治的資産、経験を引き継ぎながら、まさに歴史的転換期のさなかにある内外情勢に立ち向かって闘う決意にあふれている。新年にあたり、新しい指導部のうち四人の同志の座談会を行った。
平石 新年を迎えて、この新年号が新指導部の一員として最初のお目見栄になります。それぞれ、簡単な自己紹介をお願いします。

大嶋 第十七回中央委員会総会で政治局と総政治部の責任者を兼任することになった大嶋です。よろしくお願いします。

長岡 私は大嶋さんと同年で、一九九四年に党専従になりました。現在は大阪府委員長で政治局常務委員です。

田中 来年は、日中国交正常化と沖縄の施政権返還から五十周年です。沖縄では一九七二年に生まれた子を「復帰っ子」と言いますが、私も同年です。二〇〇一年に党の専従になり、「労働新聞」編集部に籍があり、主要には労働運動を担当することが多いです。青年学生対策を兼任しています。

平石 「労働新聞」の編集長として大嶋さんを引き継ぎました。七五年に入党し、大衆運動、住民運動の中で活動しました。一九八五年に党専従になり、熊本や福岡など主に九州ブロックで活動し、一昨年から中央で活動しています。
 昨年三月、党創立以来一貫して中央委員会議長として全党を指導した大隈鉄二同志が亡くなりました。私たちは、全党で大隈同志を追悼し、その遺志を継いで闘う決意を新たにしましたね。
 それで十七中総で新しい党指導部として選出された同志に集まって頂きました。よろしくお願いします。
 新春ですから、皆さんの身の回りのことや世相だとかで気づかされたことはありませんか。
 コロナが一応下火になって、街も少し活気が戻ってきた。これにオミクロン株がどうなるのかというのはあるのだけれども、昨年の今頃はとても大変だったですね。
田中 本当に町から活気が失われた沈んだ感じでしたね。

大嶋 コロナでここ二年ぐらい、さまざまな変化が起きています。ある同志から聞きましたが、今年の労働組合の旗開きは軒並み中止みたいですね。それが二年、三年と続くと「そういうもの」「常態」「ニューノーマル」になる。
 私たちにとっては、労働者の収入が減ったとか、飲食店がつぶれたりで働いていた人はどうなるのだろうかといった、人びとの生活や営業の変化に最も注目します。それだけではなく、人びとの「認識」にどんな変化を与えているのかも、考えておかなければいけないのではないかと思っています。ここで別に結論は出なくてもいいと思うのですが。
 ある報道機関のコラムによると、米国では、コロナが落ち着いても失業者が労働市場に戻ってこないというのです。米国はコロナで雇用が五百万人くらい減ったわけですが、経済が動き始めても労働参加率は低迷したままで、再就職への意欲が弱いように見えるらしいのです。なぜでしょうね。
 それだけでなく、この世界が「どうなってしまうのか」「このままでは社会が成り立たないのではないか」といった不安感が強まっているように思えます。「持続可能な社会」(SDGs)が言われ、岸田政権でさえ「新しい資本主義」と言っている。支配層でさえ先が見えないが、岸田首相の言い分は大衆を欺くものですね。
 こうした状況も、コロナ禍で加速されています。人びとの意識にも影響を与えずにはおかないですね。

長岡 世相ということで気がつくのは、よく行くファミレスがあるんですが、ここはコロナでちょっと客も少なかった時期があったけど、最近は結構増えてきている。そこで働いている人たちが皆高齢者なんですよ。どこでもそうですよね。全国でね。七十歳を確実に超えている女性の人たちが何人もいるんです。安倍政権時代に、「一億総活躍」だとかいって女性や高齢者を働かせるようにした。そうでなければ生きていけないと。

平石 年末年始の世相といえば、先ほど日中と沖縄の五十周年の話が出ましたが、昨年秋にジョニー・デップが写真家ユージン・スミスの役を演じた「MINAMATA」という映画が話題になりました。
 その水俣のチッソ本社前の座り込みが前年の暮れに始まって、七三年まで続くのですが、ちょうど五十年前のことです。東京駅の近くのチッソ本社が入っているビルの前で寒空の下、座り込みが始まったのです。私もその一人でしたが、多くの若者が闘いに参加していました。その時の気持ちは今でも忘れません。

過ぎた1年、世界をどう見るか
平石 それで昨年一年はそれこそ激動の一年でした。これは十七中総でも、世界情勢や国際関係、「社会革命」の時代といわれる世界資本主義の状況などについて議論されました。それらを踏まえて、今年一年振り返って世界情勢をどう見るか。これは大嶋さんからですね。

大嶋 人びとにとって「印象深い」ものは、だいたいにおいて政治的事件ですよね。そういう意味では、米国がアフガニスタンから無様な撤退を強いられたのは大きかったですね。米中対立や中国共産党の六中全会、何も決まらなかったCOP26もありました。欧州の人たちから見ると、最近のウクライナ情勢の緊張も結構大きな出来事でしょう

田中 トランプからバイデンに代わって、米国の中国に対する対抗策が、トランプの時は貿易戦争の色彩が強かったですが、バイデン政権はいわゆる「同盟国」重視。この前の「民主主義サミット」もそうなんですが、米国による対中包囲網の踏み絵を各国に迫る状況が、世界に非常に緊張を強いている。そういったことが全てのことに通底していると思います。さきほどのウクライナのこともそうですが、これをどう見るのか、そこが分かれ目というか、昨年一年いろいろなことがあったんだけど、すべてそこが結び付ているということは押さえておく必要があるんじゃないかなと思います。
 一方で、本屋書店に行くとやれ「資本主義の危機」「グレート・リセット」みたいな本が山ほど並んでる。斎藤幸平氏の本はベストセラーですよ。挙げればきりがない。岸田のいう「新しい資本主義」なんていうのもそのあらわれでしょ。みんな活路を求めていることは間違いありません。そういう意味で言うとなんか皆希望をもっているという感じではないね。
 不安もあるし、よく分からないというのが大きいのかな。

長岡 やはり最大の問題は、アフガニスタンからの撤退で、敗走劇ですよね。〇一年の9・11事件以降、「報復」だといって始まったアフガンやイラクへの攻撃が、結局、中東を散々なことにして、人びとがたくさん殺された。それが安定した政権などは結局できないまま、米国は追い出された。タリバン政権を悪く言う人は結構いますが、やはり帝国主義の介入に反発して、それを追い出したということで非常に画期的なことだった。米国の力による支配が完全に限界が来たということでいうと、帝国主義の歴史が最後のあがきのところまできたと。同時にアジアに重心が移っているというような意味でも、非常に時期を画することだったのではないかと思いますね。

平石 バイデンは中東から手を引いて中国に対抗しようというところなんでしょうけど、中東から手を引いたら、そこに中国とロシアが出ていくという皮肉なことになっている。そういう意味では米国の力の衰退がいよいよはっきりして、米国は巻き返そうとしているが、なかなか巻き返せない。そういう中で例えば欧州連合(EU)だとか、東南アジア諸国連合(ASEAN)やトルコやイランだとか、独自の勢力拡大というような動きも顕著になったなど思います。
 例えばEUが独自の即応部隊を作るとかいうことね、米国に対する不信ですよね。

大嶋 米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が、テーパリング(緩和政策の縮小)の前倒しをすると言った。これをどんなふうに見るか。「米国経済が良くなっているから前倒しできる」という見解もありますが、どちらかというとインフレが非常に深刻化しているということではないですかね。
 五百万人が職を失い、生活保護(食料切符)を受け取る人が四千万人以上いるところに物価高が襲っている。しかも、日本以上の「車社会」で原油高の影響は大きい。米国北部は大寒波に襲われて凍死者が出ている。国民生活の実態は「テーパリングどころではない」わけですね。
 米国は原油価格高騰への対策として「備蓄放出」を決め、岸田も追随しましたが、原油相場を下げることにはならなかった。米国が産油国に「増産」を求めても、石油輸出国機構(OPEC)やロシアは応じなかった。この方面でも、米国の影響力が衰えていることがあらわになったし、それがFRBの金融政策にも影響を与えている。
 だから、バイデン政権は中間選挙で勝利するのは厳しいと思います。下手をすると、次の大統領選挙までの約二年、レームダック化する可能性さえあると思います。

平石 米国にしろ中国にしろ結局は内政がもつかどうかということでね、特に米国の場合は、内政はとても厳しいですね。だからなおさらバイデンは焦っていて、余裕がないね。民主主義サミットなんか、みんなぼろくそに言っていますね。世界の半分にしか呼びかけられず、みんなしぶしぶ付き合わされた。パキスタンは行かなかった。そんな感じで、力の衰えというか存在感のなさが進んだ。

長岡 世界的な債務も膨大に膨らんでますね。国際金融協会の報告で、昨年は二百八十一兆ドルで、リーマン・ショック時の倍なんですね。このときバーナンキFRB議長らが大騒ぎして緊急対応しなきゃいけないと大盤振る舞いした。今回、コロナになったらすぐに出して、この状況だと、金融破たんがいつ来るかというのは分からないけど、とにかく続かないことははっきりしていると思います。これからのトレンドを見る上で押さえておかなければいけないし、野党なんかほとんど言わないじゃないですか。世界大で見る必要があると思いますよね。

平石 先進国はみな財政が悪くなってるんですよね。新興国はお金がないから出せないけど、先進国はまだ借金ができたわけですよ。それが長岡さんが言ったように倍くらいになっている。だからこれがはじけた時の影響力は世界が吹っ飛ぶくらいになる可能性はありますよね。

大嶋 経済の体力が弱い国、経常収支の赤字国、政治的に不安定な国が危機に陥る可能性が高いですね。

長岡 少なくともその着眼点は必要でしょうね。
 昨年を振り返ってのところでもう少し。「グレート・リセット」という言葉がありますが、これはダボス会議のテーマで言われた。企業で言えば「ステークホルダー資本主義」だとか。グレート・リセットというのは社会構造それ自身がこのままではもたなくなるという意味なんですかね。いずれにしても資本家も危機感を感じてるんでしょうが、この一年間そういうことも、コロナ禍の中ですごく加速したことがあったのではないかな。
 斎藤幸平氏の本が五十万部も売れるとかね。COP26で、脱炭素、カーボンニュートラルということで、ヨーロッパなどがかなり国益をかけて攻め込んでも来ているわけで、企業間競争もすごく激しくなっている。それと雇用の問題みたいなことも様変わりして、これからどうなるかというところに本来は来ているわけですよ。これからの十年間くらいに急激に変化するような雰囲気を感じ始めているというふうに思うんですね。
 だから、われわれはこれからの五年、十年先を見抜く力というのが必要ですね。

「社会革命の時代」ということ
平石 そういう意味で、これは十七中総でも大きな議論の一つになりましたが「社会革命の時代に入った」という時代認識が決定的ですよね。
 社会革命ということの中身はいろいろあるんだけど、例えばCOP26で決まった目標をを全部やっても「一・五度」は達成できないと国連の政府間パネル(IPCC)はすでに言っているわけですよ。だから話し合っても解決しようがないというかね。そんなところまで地球環境も含めて来ているわけです。

田中 結局「変革」の時代を誰が指導権を握るかということが肝心だと思いますね。敵・支配層も「変革しよう」ということで、しかしその変革は犠牲抜きには成立しないわけですよね。特に「左」と呼ばれる政党や労働組合にまだその認識や危機感が足りないと思わざるを得ません。もちろん、私たちにも大きな責任があります。そういう時代にどう備えるのかというところは、まだ日本はそういう認識が、漠然とはあるんでしょうが、具体的な方策としては出てない。労働組合も、政党も出てないような気がするんですよね。企業の側もまだおたおたしているような感じですよね。

長岡 振り返ると「社会革命の時代」と、大隈議長は亡くなる二年前から言い始めたわけなんです。その時は、リーマン・ショック後の一連の危機の起伏というような流れで破局は避けられないという言い方でしたね。昨年の党の会議では、そういう一般的なことではなくて、「資本主義の生産様式が問われる社会革命の時代」だと明確に規定したんですね。だから長いスパンでの捉え方、時代認識をしたと私は捉えていて、とても重大な問題を提起しています。今考えてみると気候変動問題なども、今やそういう問題から考えても完全に限界にきているということですね。
 やはり共産主義者であるわれわれだけがその先を描けるんじゃないかと、希望や展望を描けるんじゃないかと思うので、われわれの理論活動を切磋琢磨しなければならないという面で、やるべきことが出てきたなあと思いましたね。
 われわれだけでしょう、こんなことを言っているのは。ある同志も言ってたが、労働党だけがそういう提起をしていると。

平石 そういう意味では、大事な時代認識ですね。これとデジタル革命との問題はどうですか。

大嶋 社会がどう変革されていくかというのは、なかなか予想し難いですよね。
 ジェレミー・リフキンによる「限界費用ゼロ社会」は二〇一五年の本ですから、当時の限界で、AI(人工知能)はあまり出て来ません。今、問題になっているのは、AIロボットです。それでもリフキンは「最後の労働者」という見出しを立てて、労働者が劇的に減少すると言っています。
 労働者がまったくいなくなるわけではないでしょうが、劇的変化が進行しつつあり、社会的危機が迫っていることは間違いないです。
 影響を受けるのは、製造業だけではありません。日本でも、3Dプリンタを使った「工期二十四時間、価格三百万円」の住宅が販売されています。建設労働者も要らなくなる。
 いずれにしろ、資本主義の下ではその発展には限界があるわけです。労働者が技術、生産手段を握って人民、大多数の人びとのために役立てれば別ですが。資本主義社会は、どんな便利になろうが、その成果・富は少数の手に集中する仕組みですから。

平石 「読売新聞」が毎年やっている「Gゼロサミット」でイアン・ブレマーが、技術革新の問題で、結局GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に代表される巨大IT(情報技術)企業がわれわれの生活とか政治を含む将来に対する影響力をどんどん拡大していくと述べている。しかもこれが破壊的な技術とその技術を生み出す企業は気候変動より早いスピードでわれわれの生活を変化させていくという言い方をしていた。技術革新が進んでいくということは、社会が変わるということだから、われわれの生活のあり方そのものが大きく変わっていく、そういう時代じゃないかと思うんですね。それとデジタル革命が資本主義的な生産様式と馴染まなくて、いわば死滅を早めるということなのかなと思っています。
 中国が準備しているデジタル人民元ね。北京五輪を契機にという話だけど。そこはどうでしょうかね。

田中 もう中国は実証実験をやっているわけですよね。一昨年十月に深センでは実証実験を行っていますね。朝起きたらスマホに何万元かが入金されている状況ですよね。
 それがどういうふうに政治に響くかというところに注目したいと思います。ちょっと話が飛びますが、米国はアフガニスタンであのように敗走して、武力で世界を直接的に支配、干渉することが難しくなってる。そういう中で、やっぱり有効なのは経済制裁ですよね。今もやってますよね。イランや朝鮮民主主義人民共和国やキューバにベネズエラとかに対して。それは全部SWIFT(国際銀行間金融通信協会)によってですか、すべて国際取引は全部そこで把握されて、米国の意向で遮断されるわけでしょ。
 そういう制裁が無力化されるというか、相対化されるという可能性があるわけです。そういう意味では米国の世界支配の道具が大きく毀損(きそん)するような、米国の支配を無力化する手段を中国が手にする可能性があるということは、単に人民元の技術的なことだけではなくて、大きな意味があるのではないかなと思います。積極的な意味でね。

大嶋 その通りじゃないですか。デジタル人民元を普及させるため、中国は慎重かつ着実に進んでいるように見えます。これに、米国がどう反応するか注目すべきです。ドルが基軸通貨の地位を維持できるかどうかは米国にとって死活的ですから、米中間のせめぎ合いはますます厳しくなるでしょうね。
 そうしたスケールの大きさに比べると、マイナンバーカードを保持したら「二万円あげます」とか言っているわが国政治はひどいものです。財界が「早く改革をやれ」と焦るのは、かれらの立場からすると当然でしょうね。日本が先進国であり続けることができるかどうか、だんだん厳しくなっていますよね。財界にとっても、わが国は危機的状況だと思いますよ。

青年の動きに注目
平石 次は青年の状況などについてですが、これも十七中総での議論の一つになりましたね。
 注目しなければならないのは「Z世代」と言われる世代です。これがいま世界中で二十五億人いると。一九九〇年代後半から二〇〇〇年代生まれ、この人たちが社会の中枢を担っていく時代になる。
 そういう中で、最近の気候変動問題で、フライデー・フォー・フューチャー(FFF)という動きが一挙に世界にまたたく間に広がるわけです。ツイッターとかインスタグラムとかのSNSを使ってね。若者たちが、世界にまたたく間にネットワークを広げるというような時代になってると思うんですよ。
 もちろん今アルバイトで大変だとか、大学の授業はオンラインでカネばっかり取られてとか、さまざまあるんだけど、一方で若い人たちの意識だとか行動だとか、われわれの若い頃と比べて随分と変わっていると思うんですね。

田中 変わってますね。ある団体の人と話しましたが、彼らは比較的若い人を組織しているんです。その変化は当然感じてもいます。
 ここ数年、これは日本に限った話ですが、一五年の安保法制反対運動の時以来ですかね、あの時ぐらいからいわゆる青年学生を中心とする運動が目立つようになってきたと思います。よく知られているのが、シールズですね。
 こうした青年や学生の動きは先ほどから言われている環境問題に対するものだけではないですね。
 例えばスリランカ人女性ウィシュマさん死亡事件の真相究明に青年たちが立ち上がりました。それ以前から、入管に収監されている外国人労働者への面会活動を行っているような団体もあります。
 あるいはジェンダー平等を求める運動に青年や学生が参加するようになったり、その要求や参加の仕方は多種多様であるとかですね。
 共通するのは当たり前のようですが、「不正義に対する憤り」で、「大人たちは不正義だ」ということがあるみたいですね。環境問題でいえば、大人は今のままでいいんですよ、どうせ死ぬから。「わが亡き後に洪水よ来たれ」ですから。ところが俺たちが社会の中心になるころには地球がめちゃくちゃだったらどうするんだ、ここまで放置してきた「大人の責任」はどうなのかという思いがあるのではないでしょうか。
 またコロナ禍によって学生生活が大きな影響を受けています。大学生協連が昨年発表した資料ですが、「大学生活が充実している」と答えた比率で、一年生は五六・五%と一昨年より三二・九%減少しています。入学直後よりコロナ禍での学生生活を強いられた一年生に大きな影響が出ていることが分かります。「友だちができない(いない)」ことが気にかかっている一年生は三人に一人だそうです。大学を中退する人も多くなっています。昨年入学した学生がどういう学生生活を送ってるのかというと、大学にもなかなか行けず講義は基本的にオンライン。新入生の多くは友達が一人もいないコロナ禍でアルバイトもなかなか難しいという中で、閉塞感と憤り、そういうものが学生には充満しているんじゃないかなと思いますね。

大嶋 都心のマンモス大学だとキャンパスが複数あったりして、学部間の学生の交流はただでさえ少ない。そこにコロナですから、なおさらでしょうね。

田中 いろいろ見ていて思うのは、これはわれわれを含む政党の問題というか、運動の側の問題かもしれないけど。
 それぞれの運動はそれぞれユニークで特徴があるんだけど、いまひとつ力強く前進するには、やはり政治を変えるといったところの訴えが必要ですね。単純ではないんですが、そこはやっぱりあるわけですよね。そこをどういうふうにわれわれがどのような時代認識を共に訴えることができるかが肝心です。先ほど話があった斎藤幸平氏の本が売れているというのもそういうことでしょう。
 冷戦が崩壊して、社会主義の権威が失墜して、あらゆる社会運動が停滞していく中で、やはり少し世の中の動きとともに広がりが出てきているのかなと思います。
 その運動はそれぞれ色があるし、評価できるもの、できないものもあるけども、新しい社会運動、新しい青年・学生の運動の胎動みたいなことは感じるような状況であるし、今年、私たちもこうした青年たちの要求や運動を支持しながら、自分たちの見解をかれらに広めたいですね。

長岡 田中さんが言うように昔も今も変わらず、正義感で運動している人たちがいますよね。それは非常に貴重なことだけど、私が思うのは、世論調査などを見ても若い人の方が自民党に票を入れたり、維新なんかも結構評判がいいわけでしょ。自民などは、携帯電話料金の引き下げなど、政策面でも青年層に響くことを意識している。対して、立憲支持層は結構高齢者が多い。われわれ世代のような見方ね、要するに右か左かとかポピュリズムとか、革新かどうかとか、そういうそういう概念では若い人たちは捉えられないとね。
 だから今いろいろ運動をしている人たちと、いわゆる若い人たちの意識には違いもあるわけです。運動している人とそうでない人というかね。そうでない人たちの中に自民党などはより浸透しているのね。政党を比べれば、そういう面があるのではないか。やはり昔よく言っていた「実態をつかめ」とか「生態をつかめ」とか大事だと思います。
 心をつかむというか、若い人の心をつかめるところまでわれわれの党の活動を変えていかなきゃいけないなと思いますね。労働党なりに、われわれの世界観があるわけで、流れの中で見たりとか、時代認識というか、大きな観点で接近するというか、そういう中でやはり階級性というかね。そういう弱い人の立場とか、抑圧されている人たちの立場に立てるかどうかという、そういう生き方を選択してもらうような働きかけができるかということが大事なんじゃないですかね。

平石 右とか左とか言われても分からないでしょう。

田中 自民党が「革新」だと思っている人さえいます。自民党は「日本を変える」って言い、維新も「改革」と叫んでいます。私たちはこうした連中に対して、鋭く批判するとともに、根本的な変革の道を提示する必要があると思いますね。

長岡 やっぱりわれわれは「革命だ」と言わなきゃならんですね。

平石 現状に閉塞感があるからね。

大嶋 「守れ」だけの連呼は、この閉塞感を「維持しろ」と聞こえかねないわけですよ。

田中 だからそこで維新が受けるわけです。

大嶋 そういうふうに映ってるわけですよね。

田中 環境問題とか、いろんな運動、やはり直接的な行動、デモであったり集会だったり、そういうものを通じて政治に声を届けようという意味でいうと、少なくともそういう具体的な運動の芽はあるように感じています。単に政治家にお願いするのではなくてね。自分たちがまず動いて、物事をそれで政治家に声を届けるというか。少なくとも自分たちが行動することによって変えようという、そういう意識はね。単に一票で白紙委任するのではなくて、そういうような雰囲気は私は感じとれるような気がするんですよ。
 それはわずかな動き傾向かもしれないけど、その傾向をわれわれをは評価する必要がある。
 政治に対する関与というのは、議員のインターンってあるでしょ。結構そういう政治のアクセスの仕方なんだよね。あるいは自分が政治家になる。これは悪い面もあって、いい面もあるんだけど。後退しているようだけど、そうでない側面もあるのではないかなというふうに見たほうがわわれわれ的にはいいのではないかと思います。
 そこはスウェーデンの環境活動家・グレタさんの影響は大きいんじゃないかな。欧州などではデモなど直接行動が行われている。それういうものが目に飛び込んでくるわけじゃないですよ。それは大きいんじゃないかな。

平石 そういう情報はいっぱい飛び交っているわけですよね。

田中 そうした情報に二十四時間アクセスできるのだから、それは大きいんじゃないかな。

長岡 署名みたいなのもすごく増えたんでしょ。コロナ禍で。

田中 オンライン署名ってやりやすいじゃないですか。

平石 われわれの活動スタイルも相当に研究しなければならないね。

岸田政権とどう闘うか
平石 国内政治の変ぼうというか。とくに昨年は菅政権から岸田政権になって、四年ぶりの総選挙があって与野党の状況というのは、自公が過半数は維持したけど日本維新の会とかが大きく伸びた。立憲と共産党はうまくいかなかったという状況なんですけど、今年七月の参議院選挙まではいまのような状況が続いていくだろうと思うんです。どうやってこの岸田政権と闘っていくかですね。

大嶋 焦眉の課題は、対アジア、特に対中外交でしょう。これを岸田政権がどう差配していくかですが、基本的方向は「敵基地攻撃論」を中心とする軍備増強です。それと「経済安保」のような動きですが、これらを本当にやっていけば、対中関係は容易でないです。北京五輪の「外交ボイコット」問題もある。
 ただ、これらが与野党間で争点化することは、現状の政党の状況からは考えづらい。どちらかというと自民党の中、あるいは財界の「隠れた争点」という感じでしょう。これを言えるのは、労働党だけです。
 日中国交回復五十年を機会とする対中外交の改善は、大きな課題です。
 もう一つは、コロナ禍でますます厳しくなっている国民生活をどう打開するかという課題です。特に対中国関係をめぐっては、与野党が基本的に同じスタンスに立っているなか、与党や財界内の不満をとらえ、広い戦線をつくることが重要だと思います。

平石 「経済安保」も企業にとっては制約になるから、いろいろ意見が出ている。

大嶋 「経済安保」を実行すればコストが増えるわけだから。政策的にもきちんと対処できるのは労働党しかないわけです。どんなふうに戦線をつくれるかは、工夫のしどころだと思います。

平石 北京五輪ボイコット問題でも、自民党の内部にいろいろ意見があるが、政党間では、むしろ競いあいみたいな状況ですね。

大嶋 共産党の志位委員長は突出して、「外交ボイコット」の旗を振っています。昔、国旗・国歌の法制化問題で、事実上法制化を地ならしする役割を演じたことを想起させます。「堕落もきわまれり」という印象です。

田中 とんでもないとしか言いようがないというか、これまでの共産党の姿勢から見ればある意味当然というか。政党として「一番乗り」で犯罪的です。なおかつ自民党から維新の会といろんな政党がある中でも共産党というのは特別じゃないですか、われわれとの関係で言えば。「共産党」を名乗る政党がこのような排外主義を振りまく、中国に対する敵対、これを率先してやるということの犯罪性、これについて心ある共産党員には今一度考えてほしいです。
 しかし、菅前首相が昨年四月に訪米して、台湾有事に踏み込んだ、退任間際にも米国に卒業旅行に行った。岸田政権はその危険な方向を基本的に受け継いでいますよね。
 しかも、米バイデン政権は国は「民主主義サミット」で対中包囲網を掲げ掛けて、バイデン政権はよりその対抗を強めている中で、共産党がそれに呼応する役割を果たしているということですから、いっそう犯罪的であると思います。
 しかも他の野党もそこで闘えないということで、要するに対抗軸がない野党ですよね。

長岡 共産党なんか、何て言うんですか。もう情けない。

田中 だって高市と変わらないじゃないですか。あの共産党の声明は岸田政権をなじってるんですよ。中国に対していろいろ言うだけじゃないんですよ。なじって「弱腰である」と。

長岡 岸田政権とどう闘うかということですが、十七中総でも議論しましたが、結局、安倍長期政権をどう見るかということですね。岸田政権の前、安倍政権も菅政権もコロナ禍への対応をめぐって国民からの反発、不満が相当噴出したわけですよね。
 「読売新聞」の世論調査で、国民の不満層が「やや不満」「不満」で八三%あると、それで一方で強い野党を望むという声も六〇何%とかあると。それで、維新が人気度から言うと野党の第一党、でも自民党も結構強いというね、そういう雰囲気だというわけですよ。それで今の状況は、その自民党政治ね、安倍、菅と続いて岸田だけども、そもそも自民党の政権、政治はもう機能不全になっている。自民党の長期単独政権が崩壊して以降は、公明党の力を借りなければ政権も維持できない状況です。
 それにちょうどその頃に財界がさまざま手を打ち始め、国内市場を捨てて海外に展開するというような流れをつくり、改革政治を進めていった経過があります。今の岸田政権も結局その上に乗っている政権ですよね。
 だから、特に安倍時代に海外直接投資が大きく拡大し、アジア地域に広がっていった。しかし日本と中国の関係だけで見れば、GDPでは三倍もの差もつくほどになっていて、そして最近の経済情勢でも輸出、アジアへの輸出、中国への輸出でなければ立ちいかないというという状況ですので、やっぱり「中国なし」には(成り立たない)という実態になっているわけですよね。権益がそうやって拡大したものの、相当なジレンマも抱えているということだと思うんですよ。
 野党がどうして闘えないかというと、要するに「世界の中の日本」という観点、そこに敵の弱さがあるわけです。もう米国にも頼れない、米国も「同盟分担」を押しつけ、さらにアジアと日本と中国を争わせる均衡政策のような形でやってきている、中国はもう日本と大きな差がついている、その中国。それで日本はどんどん技術力でもなんでも後退しているという状況になっている、その支配層なんですよね。
 だからいろんなことに対応できないし、さらに財政危機も抱えているわけですね。
 今の岸田政権がやっているようなことはそのまま続けられない、
 やはり私たちは労働者階級に依拠して、力によって倒そうとしているわけです。まず、労働者にそういう話をして、「やっつけられるんだ」という考え方をまず鮮明にする必要があるということをまず思いますね。

平石 そういう話を労働運動の中にどれくらい持ち込めるかですね。

田中 さっき長岡さんが言った支配層の「弱点」ですよね。そこはわれわれが説得力を持って言えるかどうか、そういう声を労働組合は求めてるんじゃないかな。
 闘いの展望があるというところで、「世界の中の日本」という長岡さんの指摘は、われわれはこれを労働運動だけじゃなくて、多くの人びとに持ち込む。あるいは心ある野党の人たちにも呼び掛けることが大事じゃないかなと思います。
 昨年十月の自主・平和・民主のための国民連合が呼び掛けた対中国外交の転換を求める集会は、われわれが今年そういう仕事をやるうえで大きなきっかけになりましたね。誰かが言ったけど、あそこに出てきたいろんな人たちも孤立感を持っていたわけですよ。ああいう場を誰も設定しないから。ああいう場を設定され、みんな今の日中関係や日本の行く末について心配する声をあげて、それに共感する人たちがいるんだなということで、大いに励ましたと思うんですね。あれは重要な仕事だったし、この成果をどうやって広げていくかといったことが大事です。
 そういう意味で戦線が広げられるし、国の生き方や平和の課題で労働組合が旗を振るということ、そういう役割をやっぱり労働運動は特別な存在なのでね。そういうことを呼び掛けられる条件があるし、それを労働党はいろんな人たちと協力してやっていかなきゃいかんと思いますね。

平石 日米の共同訓練などいっぱいやられているなかで、あまり動きがないように見れるけど、ちょっと調べたら、最近は各地で労働組合や平和団体が集まって集会をやったりしてるんだね。だんだんそういうのが出てくると思うんです。敵基地攻撃ということは攻撃されるということだからね。文字通り戦争に突き進むということですから。そういう意味で、労働組合の中に平和運動の課題を持ち込むことは非常に大事なことだと思いますよ。

田中 ある労働組合の人と会った時に、普段あまりそういうことを言わない人だが、敵基地攻撃論なんていうのは理屈に合わん、専守防衛とどういう整合性があるのと、割と右派的な人でもそういうことを言い始めてますよ。それは変化だなと思ってね。憂慮する声、労働運動の中にあると思いますね。

平石 どっちにしても本当に米中の狭間で日本がどういう道を歩んでいくかということは、岸田政権にとっては本当に大変なことだと思いますよ。外交はそうだけど、防衛は年末「国家安保戦略」を改定して「中期防」と「防衛大綱」、そっちのほうに実際仕事は進んでいるわけだから、岸田首相がどういう整合性をもちながらやれるのか、相当難しいんじゃないかと思うけどな。敵が困るのは悪いことじゃないが。

長岡 大阪でも平和団体の人に、日中国交正常化五十周年に向けて、台湾独立を促すような動きに反対することが最大の課題だと言ったら、その通りだなんて言って、懇談会に来てくれることになっている。そういう雰囲気がある。重要な課題ですね。

平石 主要な政党では、中国敵視というか「中国はけしからん」ということになってるんだけど、実際の現場のところはなんとかしなきゃなというところが出てくるんじゃないかな。
 財界の中にも、今の政府の対中政策に対する危惧がある。中国は最大の貿易相手国だし、日本企業も三万社ぐらいが、中国に進出したり貿易したりして稼いでいるわけだから。

田中 中国と国交正常化してお互い良かったでしょう。シンプルに考えて。

平石 中国経済が発展したおかげで日本経済も助かったんだから。
 財界人もそんなことでケチをつけても仕方がないと言ってるわけよね。

田中 良かったじゃないですかということと、やっぱり日本は特別な役割があると思うんですよ。要するにASEANプラス3や日中韓、アジアのミドルパワーは特別で、むしろ危機をあおるんじゃなくて、日本はちゃんとした位置で韓国とも協調しながら、中国ともちゃんと協調して、アジアの中で特別な役割を果たしていくんだという役割が求められているし、もっとそういうメッセージを、今回の国交正常化五十周年でメッセージを発しなきゃならないということが、特別な日本というのは、そういう役割があるんじゃないかと思うんですけど。なおかつ、戦争責任の問題もありますからね。特別な役割が日本にはあるんだんと思いますけどね。今は逆ですよね。

平石 中国が悪いみたいな感じになってるんだよね。

大嶋 ある学生と話をしたら、日中関係では「日本が被害者だと思っていました」と言う。あ然としましたけど、現実です。

田中 あと、沖縄のことには触れておかないといけないと思います。
 復帰五十周年もそうですが、選挙では県知事選挙ですね、一月に名護の市長選挙、あと主要には沖縄の市長選挙、また南西諸島、宮古島にミサイルの弾薬が搬入されて、要するに米国が、中距離ミサイルの配備、日本にするといった時に、沖縄に真っ先に配備される可能性があるわけです。辺野古の新基地建設はいまだに進められているというなかで、やっぱりどういう状況の中でこの復帰五十周年を考えるのかというのは大事な課題です。
 やはり沖縄県民が掲げている米軍基地の整理・縮小、この要求を引き続き支持して闘うと、それを本土でも闘うということは来年、労働党はそういう取り組みを全国的に強めていきたい。

長岡 国民生活とかね、経営上の問題、営業上の問題というようなことで、今いろいろある原油高騰とかで、中小企業は厳しいですよね。この前、石油業界の人で自民党員なんだけど、その人と話したんですよ。なかなか面白い人で、どちらかというと自分は「ハト派だ」で「戦争反対だ」と。それで重要だと思うのは、それで彼らは何をやってるかというと政府と交渉して、ガソリンスタンドが利ザヤがないから厳しくなって、さらに今こうなったわけですよね。ということでもう廃業したくてもできない、地下にタンクが埋まってて、処理に一千万円くらいかかると。カーボンニュートラルで政府がやろうとするのであれば補助金出せと、撤退するにも「補助金を出せ」といって、何十億円かなんかの約束をとったらしいんですよ。そんなようなことをしてるわけね。
 中小企業とか中間層の問題は、やはりわれわれが重視して闘うことは、とても重要でここはどっちに持って行かれるかという、やっぱりかれらはそこに依拠している面があるから、維新なんか見てても。
 そういうようなことでも今の苦しんでいる、苦境にある中小企業だとか、そういうところにも関心を向けるべきだなあと思いました。
 他方、労働者の上層というか中層というのか、ある労働組合の幹部に聞くと、組合員の半分ぐらいは維新に入れてんじゃないかと、そういう雰囲気です。労働組合に行くと、「もう三分裂ですね」というから。自民、立憲と「もう一つはどこ?」と聞くと、「維新だ」と。まあそんな感じで。

田中 昨年は農民も、米価急落などで大変でしたからね。

大嶋 十七中総でも強調されましたが、以上のような課題を闘うにしても、党の強化拡大こそが肝心なことです。その前進のために指導部が先頭に立つのは当然ですが、全党の同志の知恵と力、経験などを頼って、闘いたいです。
 同志のなかにはいろいろな特技を持っている人たちもいますので、それを生かして多様な活動を進めていけると思います。

平石 そうですね、全党の力に依拠して闘うことですね。ありがとうございました。


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