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2021年10月25日号 1面

総選挙/自公に厳しい審判を
外交政策で争えぬ野党

東アジアの平和・
共生の道に舵を切れ

 総選挙が十月十九日に公示され、三十一日の投開票へ向けて選挙戦の真っ只中にある。
 菅前政権から岸田政権成立直後の解散・総選挙で、自公両党は今回の総選挙を経て、岸田政権を本格始動させる腹積もりである。各野党は目前のコロナ対策に加え約九年間続いた安倍・菅政権を引き継ぐ岸田政権からの「転換」を唱えている。
 わが党は、すでに「解散・総選挙に際して訴える」として中央委員会政治局の態度表明を行なっている(前号参照)。わが党は、今回の選挙が、安倍・菅自公政権の内政、外交に対する評価を下す選挙というだけでなく、戦後の自民党とさまざまな亜流政権が命脈尽きる中、内外の危機的情勢の下で、新しい日本の姿が問われる選挙であると考えている。 そういう意味でわが党は、真の争点は、第一に、日米同盟基軸の外交をやめ、日本の真の独立、主権を確立し、東アジアの平和、共生に大きく舵を切ること。特に、菅前政権が踏み込んだ中国敵視の対中国外交を転換させること。
 第二に、コロナ禍でより浮き彫りになった国内問題、すなわち国民の貧困「一方に富が集中し、他方に貧困が拡大」し続ける状況を根本的に解決すること。
 第三に、安倍・菅政権の下で強まった政治反動、国民への管理抑圧・支配体制強化の策動を許さない問題であると考えている。
 わが党は独自候補は擁立しないが、この時期も戦略的方向に沿って、欺まん的な自公政権を独自に暴露するともに、政治を変える新しい勢力を形成するために闘っている。
 同時に、貧困の打開と対中国戦争準備に反対し、自民党政治と闘う候補者、その支持者たちの奮闘に敬意を表し、こうした闘いの前進、統一戦線の形成に役立つならば、各地方組織がそれぞれの判断で野党の候補者を支持することもあるし、そのような連携が進むことを望むという態度を表明している。

資本主義は行詰まっている
 こんにちの時代は、リーマンショック以降の世界資本主義が明らかに行き詰まったこと、そしてさまざまな起伏を経て二〇一八〜一九年以降の景気後退がコロナ禍でさらに加速し、すでに「社会革命」といってよい時代に入っている。この危機から抜け出る道は、十八世紀以来の資本主義的な生産の在り方、資本家と労働者の関係の根本的な転換、国の政治を労働者が握って、大多数の労働者・人民のための政治を打ち立てる以外にない。

与野党のあいまいな政策
 だが、今回の選挙での各党の公約・政策を見ると、似たような政策を並べており、違いはほとんどない。
 コロナ禍で経営難に陥った事業者や生活困窮者への給付金など、似たような項目が並んでいる。地球温暖化対策での「グリーン」や「デジタル」をテコにした「成長戦略」も大同小異である。「分配」「成長」などという姿勢も岸田首相の「分配なくして次の成長なし」と、立憲民主党の「分配なくして成長なし」もほぼ同じである。対立軸として安倍政権が掲げた経済政策「アベノミクス」についての評価が違うくらいである。
 激動する世界の中で、わが国がどういう進路をとるのか、外交・安全保障政策では、ほとんど対立・争点になっていない。
 立憲民主党の「日米同盟を基軸とした現実的な外交・安全保障政策を推進する」政策では、自民党の「ウイグルや香港など人権などを巡る諸問題について主張すべきを主張し責任ある行動を強く求める」「相手領域内で弾道ミサイルなどを阻止する能力の保有を含めて抑止力を向上させる新たな取り組みを進める。新たな国家安全保障戦略・大綱・中期防衛力整備計画を速やかに策定する」などという政策とは闘えない。自民党の公約は米国の対中国政策と足並みを揃えて、中国の台頭を阻止しようという支配層の狙いを体現している。これと闘うには対中国外交の転換を明確に打ち出さない限り闘えない。
 資本主義の危機がいっそう深化する中で、岸田首相は「新しい資本主義」を唱えて、「成長と分配」がいかにも可能かのような欺まん的な政策をふりまいている。
 コロナ禍の中で世界経済はいちだんと後退し、回復の見通しはない。コロナ対策で膨大な財政出動がやられ、新興国も含めて各国の政府債務(借金)は膨らみ続けている。国際通貨基金(IMF)も債務の高止まりを警告している。さらに、続けられてきた金融緩和からどうやって抜け出すのか、どの国も出口にたどり着いていない。基軸通貨国である米国の動向(テーパリング)は世界各国の経済を揺さぶり、金融危機の勃発の可能性もある。
 世界の現状は「新しい資本主義」どころではない。野党もまたさらなる「分配」を主張しているが、いずれかの時点で「財政再建」に必ず直面する。
 財界の中からでさえ「将来世代の利益を踏まえた政策論争を」「長期的な国家のあり方と社会ビジョン」を求める声も上がっている。立場は違うが、そうした観点から見れば、今回の与野党の公約・政策はあまりにも目先の小手先の話ばかりに終始している。
 聞こえの良い「公約」ではなく、こんにち資本主義が行き詰まり、「持続不可能」となっている事実を、野党は明確に暴露すべきではないか。その上で、国民大多数のための経済政策を主張すべきであろう。

長期の国のあり方問おう
 選挙の結果に如何にかかわらず、コロナ禍によって苦しんでいる多くの非正規労働者、低賃金労働者、自営業者、中小商工業者、農業者らが存在し、危機的状況からの打開を求めている。どんな政権になろうとも、この問題に直面する。
 わが国の生き方も、待ったなしに問われてくる。米国は、対中国政策でわが国があいまいな態度をとることを許さないだろう。しかし、現実は、中国との経済関係は切っても切れないほど深く結びついている。支配層・財界の中にも菅前政権が踏み込んだ中国敵視政策の行方に不安を抱く傾向も生まれている。選挙後の政権がこの問題にどんな態度をとるのか。遅かれ早かれ、転換を迫られることとなろう。中国もまたわが国の行方を注視している。
 わが党は、真の争点の第一番目に、日米同盟基軸の外交をやめ、日本の真の独立、主権を確立し、東アジアの平和、共生に大きく舵を切ることをあげている。これなしに「長期的な国家のあり方」を考えることはできない。
 来年は日中国交正常化五十周年となる。歴代自民党政権も日中関係を維持してきたが、今は全く逆行する動きである。言論界も含めて中国に対する警戒、批判が跋扈(ばっこ)する風潮である。しかし、日中関係の現状を憂う人びとも数多くいることも事実である。
 選挙の茶番ではどうにもならない「現実に向き合うべきである。(Y)


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