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2021年10月15日号 1面

解散・総選挙に際して訴える

日本労働党中央委員会政治局

 岸田首相は、衆議院の解散・総選挙に踏み切った。総選挙は十月十九日公示、三十一日投開票の日程で行われる。
 今回の選挙は、安倍・菅自公政権の内政、外交に対し評価を下す選挙といわれる。だが、コロナ禍が暴き出し加速させたように、わが国の内外環境は危機的で、本来、真の争点はそれにとどまらない。戦後の自民党政権、そのさまざまな亜流政権は完全に命脈が尽きている。世界も日本も変革の時代である。この時代の、新しい日本の姿が問われている。
 今回の総選挙で、わが党は、独自候補を擁立しない。また、中央としてはどの党の候補者も支持しない。この時期も戦略的方向に沿って、欺まん的な自公政権を独自に暴露するとともに、政治を変える新しい勢力を形成するために一貫して闘う。
 同時にわが党は、貧困の打開と対中国戦争準備に反対し、自民党政治と闘う候補者、その支持者たちの奮闘に敬意を表する。こうした闘いの前進、統一戦線の形成に役立つならば、各地方組織がそれぞれの判断で野党の候補者を支持することはあるし、そのような連携が進むことを心から望んでいる。
 以上が、わが党の総選挙に臨む基本的態度である。

問われる国の進路
 わが国を取り巻く内外環境は容易ならざる状況である。  コロナ禍の拡大は危機の進行をいっそう速め、著しく激化させている。資本主義・帝国主義の頂点に立ってきた米国の力は衰え、米中の競争激化など世界秩序は大きく変わっている。アフガニスタンでのタリバンの勝利は米国の世界支配の限界と終えんを告げた。
 こんにち世界の資本主義経済は、リーマン・ショック以降の金融緩和政策の継続で「破たんの先送り」「先食い経済」で辛うじて延命を図っているにすぎない。コロナ禍で加速された金融緩和は各国内での貧富の格差を絶望的なまでに広げ、政治、社会を著しく不安定化させている。
 またコロナ禍はデジタル技術革新の急速な進展を促し、労働者階級の生存条件を大きく変えている。頻発する災害などの気候変動・温暖化問題は、資本主義の限界を示し、人類の生存を直接脅かすまでに深刻化している。この社会はもはやこのままでは立ち行かないところに至っている。
 どんな「資本主義」もこの危機から逃れることはできない。世界は、十八世紀の産業革命以来の資本主義的生産諸関係、生産様式そのものの変革が迫られる「社会革命」の時代に入っている。資本家・支配層までが「グレートリセット」と言わざるを得ないほど資本主義は行き詰っている。
 一方、米国をはじめ世界各地で人民・労働者の不満が爆発、ストライキや暴動が頻発している。気候変動対策を求める若者たちの行動など、新たな時代を求める人びとの行動も世界で急速に高まっている。コロナ禍をいち早く乗り切った中国はいちだんと国力を強め、「貧困問題」の解決を急ぐなど、危機の資本主義を横目に「社会主義への挑戦」を進めている。
 他方、こうした中国を抑え込もうと米帝国主義は最後のあがきを強めている。わが国を焚(た)きつけ、アジア人同士を戦わせようと画策を強めている。東アジアは一気にきな臭くなっている。
 こうした世界でのわが国である。東アジア、中国の隣に位置し、しかも、戦後七十六年、こんにちも衰退著しい米帝国主義の事実上の従属国である。反動的野心に満ちた支配層の一部、岸田政権を支える安倍、麻生、高市らはこの局面を「チャンス」とばかりに、中国に対抗する軍事大国化へ拍車をかけている。時代錯誤も甚だしく、再び国を誤るものである。
 国内矛盾はこの間もいちだんと激化し、それどころではない。もはや「大国」面すらできない現状である。明治以来、とりわけ第二次世界大戦後は米国の対ソ世界戦略に組み込まれ、重化学工業化と輸出主導といういびつな発展を遂げてきたわが国の経済・産業政策、国土政策、医療・福祉など国民生活にかかわるすべての政策が土台から揺さぶられている。コロナ禍は改めて、わが国の劣後した姿を明らかにした。わが国もこれまで通りの生き方の大転換が迫られている。
 長期にどういう国の生き方をとるのか、真剣に問われなければならない。

日米基軸外交の転換を
 世界史的転換を遂げる世界のなかで、今回の衆議院選選挙の真の争点は何か。
 第一に日米同盟基軸の外交をやめ、日本の真の独立、主権を確立し、東アジアの平和、共生に大きく舵をきることである。
 特に菅前政権が踏み込んだ中国敵視の対中国外交を転換させることは、喫緊の課題である。
 菅前政権の下で、四月の日米共同声明では「台湾海峡の平和と安定」を明記して中国の内政問題に公然と干渉、「一つの中国」を否定して中国を挑発した。米国の対中包囲戦略の最前線に立って「抑止力強化」を約束、九月には最大規模の陸上自衛隊演習、米英仏などとの共同訓練、南西諸島防衛など、急速に軍備増強が進められている。
 岸田首相は中距離ミサイル配備、「敵基地攻撃」論も肯定した。所信表明演説でも国家安全保障戦略、防衛大綱、中期防衛力整備計画の改定を強調し、いっそうの軍備増強を図ろうとしている。さらに「経済安全保障担当相」を新設、より全面的に中国に対峙(たいじ)しようとしている。軍拡競争と軍事大国化は戦争への道、亡国の道である。
 しかし、わが国にとって成長する中国は最大の貿易相手国である。中国に敵対して経済は成り立たず、わが国支配層内にも両国の緊張関係がいたずらに高まることへの不安・危惧が生まれている。この問題をめぐって、自公政権と平和を希求する国民との間でも、支配層内部にさえ矛盾激化は避けられない。
 沖縄をはじめ全国の米軍基地の撤去と五十周年の節目を迎える中国との平和、友好・協力関係の強化は喫緊の課題である。日米安保条約の破棄、国の完全な独立と自主、アジアの共生の実現だけが、真のわが国の展望、生きる道である。
 こうした動きに対して、野党第一党である立憲民主党は「安全保障政策は対立軸にすべきではない」として、「健全な日米同盟を基軸とした現実的な外交・安全保障政策」と、歴代自民党政権と寸分違わぬ政策で対決姿勢を示さない。共産党は「綱領改定」までして中国を「覇権主義」と明記し、支配層があおる排外的な世論に迎合して香港や「人権」問題などで自公両党以上に中国非難を叫んでいる。対中政策の転換を訴える野党はいない。

国民の貧困問題解決を
 第二は、コロナ禍でより浮き彫りになった国内問題、すなわち国民の貧困、「一方に富が集中し、他方に貧困が拡大」し続ける状況を根本的に解決することである。
 安倍・菅政権の九年間で、グローバル大企業の利益は二倍、株価は三倍、資産家が得る配当も三倍となる一方で、低賃金、非正規の労働者が大幅に増加した。家計、生計費のために、社会保障の不備から将来不安に備えるために多くの女性、高齢者が低賃金で働かざるを得ない。そうした労働者が四百万人も増えた。アベノミクスの実態は、所得の移転、収奪なのである。
 グローバル企業が海外で、しかも円安での為替差益で膨大な利益をあげても、国内の設備投資はほとんど増えなかった。多くの労働者、国民は生活必需品などの物価は上がり実質賃金が低下、さらに消費税の五%増税、介護保険料、医療費負担も増加、将来設計も描けなくなっている。
 商店、工場などの自営業者の経営が悪化し、どの先進国よりも急激な減少に歯止めがかかっていない。農民も国境措置がほぼなくなり、販売農家はすでに百万人ほどとなった。
 消費はさらに冷えこみ、インバウンドと称して外国人旅行客の消費をあてにしていたが、断たれた。
 多くの地方はすでに一時期進出していた企業が軒並み撤退して、一次産業も二次産業も衰退し、人口流出に歯止めがかからず、介護・福祉関係の事業所、その労働者だけが増えた。東京一極集中、大都市部への人口集中はさらに進んだ。
 コロナ禍は、こうした状況を浮き彫りにし、「先進国」と言いながら、保健・医療体制の不備を露呈、命を守る政治の意志さえないことが暴き出された。
 岸田政権は、格差、貧困を解決すると言うが、実現できるだろうか? 本当に苦境に立つ国民に給付金を配り続けられるだろうか? すぐに「国家財政の危機」を理由にやめ、むしろ負担を強いてくる。これまでの自公政権も、また民主党政権でさえ、そうだった。
 脱炭素化、デジタル化は、地球環境、温暖化対策を進め、国民の命と生活を守るために必須なことだとしても、どんな政策も財界にとってはビジネスチャンスとなる。そのため、核燃料サイクルにしがみつき、原発再稼働まで進めようとしている。
 歴代政権の対米従属の政治も結局わが国支配層、財界が取引をし、売国的な状況を受け入れ、内部に矛盾があったにしても、大多数の国民にその犠牲が転嫁されてきた。
 誰のための政治かが問われているのである。

政治反動、改憲を許さない
 第三の争点は、安倍・菅政権の下で強まった政治反動、国民への管理抑圧・支配体制強化の策動を許さない問題である。
 特定機密保護法、日本学術会議の任命拒否、関西生コン支部弾圧など労働運動への攻撃が強まった。デジタル法、重要土地規制法などの悪法も制定された。岸田首相は憲法改悪を反動派に約束した。
 軍事大国化は同時に国内での政治反動、差別と分断、民主主義と人権を抑圧する支配体制強化をもたらす。中国敵視をやめ、アジアの平和共生で、国内の民主主義を守り発展させる政治が求められる。

自公候補者に厳しい審判を
 以上のような政策転換は、労働者階級を基礎とした広範な国民運動に支えられた強力な政権なしには実現できない。なぜ、一九九三年の細川政権以後も、自民党中心の政権を許してしまったのか、また、旧民主党政権の「失敗」も含めた根本的総括が必要である。
 野党は堂々と対抗軸を示して自公政権と争うべきではないのか。対米自立と国の安全保障政策できちんとしないと自民党政治には対抗できない。また、労働運動を中心に広範な力の結集と支持なしには闘えない。
 コロナ禍で職を失い、劣悪な労働に苦しむ非正規労働者、倒産や廃業の淵に立たされている中小・自営業者、農漁民の切実な状況に応える根本的な政策転換が今こそ求められている。
 深刻で切実な状況にある多くの国民が政治の転換を望むのは当然である。
 だが、「野党共闘」は目前の必要性からいくらか進んでも「野党連合政権」が成立する可能性は見えない。何度も繰り返されてきたが、今回の総選挙でも自公政治の転換を望む多くの国民の願いに沿うような政治の転換は期待できない。
 しかし、岸田自民党、そして長らく自民党政治を支えている公明党、「野党」と称しながら自民党以上に「改革政治」を叫ぶ日本維新の会などの勢力に厳しい審判を下すことは、以降の国民運動の発展にとって一定の意義がある。
 当面の悪政を変えるには、議会偏重ではなく、労働運動を中心とする国民運動の発展、議会的な闘争と国民運動の結合が必要である。
 政府や自公与党は選挙結果を「政権信任」と、マスコミも動員して強弁するだろう。それは闘いの意思を挫こうとする敵の攻撃である。だが、「信任」された政権の化けの皮はすぐに剥がれる。
 先進的労働者は選挙に期待を抱いてはならない。支配層の欺まん的な政策を事実に基づいて批判し、目前の課題は当然闘いながら、長期には政治の根本的な変革のための戦略を持ち、政治的・組織的準備を急ぐべきである。
 情勢の進展はわが国の生き方を鋭く問う事態が進行している。国の生き方を左右する対米関係、対中関係で支配層・財界内にも分岐がある。労働者階級は独立・自主の旗を握り、国民各層と経済界など支配層の一部も含む幅広い国民的な共同を発展させることが肝心である。
 わが党は、歴史のすう勢を見据えて、わが党の自身の隊伍を整え、力を蓄え、広範な国民運動と統一戦線の形成に全力を挙げる。


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