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2021年9月25日号 2面・解説

日中国交正常化49周年

共生・互恵の日中関係の発展を

 わが国と中国が国交を正常化して、九月二十九日で四十九年、来年は五十周年の節目を迎える。
 さらに、九十年前の一九三一年、関東軍が柳条湖事件を引き起し、満州事変(中国側は九・一八事変と呼称)が勃発し、十五年に渡る中国侵略戦争が始まったのが九月十八日である。
 第二次大戦後、二十数年間わが国と中国の間に国交がない異常な状態が続いた。ニクソン訪中など米国の対中政策が変化し、わが国も諸国に遅れて国交正常化に踏み切った。
 七二年のわが国と中国の国交正常化に際し、田中首相(当時)と中国の周恩来総理(当時)との間で日中共同声明が署名・発出された。共同声明では、「日中間の過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」として、「両国間の平和友好関係を強固にし、発展させる」ことが合意された。また、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」として「一つの中国」の原則も確認された。
 以来、日中間では、この共同声明を含む四つの基本文書を基本にして外交関係が進められ、政治、経済、文化など各方面で日中間の交流は拡大されてきた。
 この四十九年間、さまざまな曲折はあったが、日中間の経済関係だけをみても、中国経済の急成長で日中間の経済的力関係は大きく変化した。それだけでなく、サプライチェーン(供給網)も含めた相互の結びつきは複雑かつ強固になっている。一方で歴史問題や領土・領海問題など、こんにち両国間で解決すべき課題も多い。
 一方、台頭する中国を抑え込み、覇権を譲るまいと米国は中国への対抗・敵視政策を強めている。これに追随し、アジアでの政治・軍事大国化を進めるチャンスとばかり、わが国政府も、対中国政策を転換している。

台湾問題口実に
 今年四月、菅首相は日米首脳会談で、これまでの日中関係で謳われてきた「一つの中国」を投げ捨て、米国と共に中国敵視の道にさらに踏み込んだ。
 岸防衛相は日華議員懇談会の幹事長であり、今年の防衛白書に「台湾」問題を初めて盛り込んだ。
 こうした政府の方針に呼応するように、八月には、自民党の佐藤外交部会長、大塚国防部会長と台湾「民進党」の立法委員の外交・防衛政策の責任者と「与党版」の外務・防衛担当閣僚協議(2プラス2)を行なった。東・南シナ海での中国に対する抑止策を協議、さらに「台湾防衛協力」についてまで協議されたと言われている。
 言うまでもなく、台湾は中国の一部であり、「四つの基本文書」でわが国もそれを認めている。したがって、こうした行為は、明らかに中国に対する内政干渉であり、これに中国側が強く抗議しているのは当然である。
 尖閣・台湾問題を口実に、米国と共に中国への挑発をくり返し、南西諸島などでの軍備を増強し、中国との戦争を想定した軍事訓練も頻繁になってきている。
 政府・自民党は、他国の内政に干渉し、緊張をあおっているが、野党も同様に中国脅威論を競って、国民世論を「中国嫌い」に向かわせている。
 中国との間で緊張を高め、武力衝突の危険さえ公然と語られるような政府の姿勢で、本当にわが国の「国益」が守られるのか。

日中ともにアジアの一員
 声高に中国との対決が叫ばれ、世論誘導が強まる中、日中間の協力や相互理解をめざすべきだという意見もある。
 例えば、経済同友会の日中交流プロジェクトチームは、今年六月に出した活動報告書「日中経済交流の役割」の中で、「日中関係の目指す姿」として、以下のように述べている。
 「文化、経済交流を通じて、日中両国が協力できる点と、そうでない点を明確にし、”意見の不一致を認める”精神で、互いの立場や意見の相違があることを認めあったうえで、相互理解を深め、日中の目指す『戦略的互恵関係』を築いていくべきである。政治・社会体制の相違こそ前提とするものの、日本と中国はアジアの一員として、欧米とは異なる文化や生活様式を多数共有しており、精神性の部分で欧米以上に相互理解がしやすいという利点がある。この点を生かし、日本が中国社会の成熟化を後押しすることなどで、欧米諸国と中国との関係性強化に貢献することも可能である。官民を問わず、このような外交力を持つことこそが日本のソフトパワーを高め、日本がいて欲しい国、いなくては困る国として今後も世界の中で存在感を示す道である」
 経済界の意見として、(日米同盟を基軸としつつも)日中両国がアジアの一員として関係を強化すること、そのためのわが国の外交のあり方についてまでごく真っ当な意見である。
 こうした意見は、財界の中だけでなく、国民各層の中に広くある。一方的な中国脅威論が広がっているというわけではない。四十九年に渡る日中間の関係者の努力が積み重なっていることを忘れてはならない。

基本文書の精神に立ち戻れ
 二十九日には奇しくも自民党新総裁が選出され、菅政権に代わる新政権が発足する予定である。新政権がどういう中国外交を採るのか注視しなければならない。
 コロナ危機が世界経済の危機の進行を加速させ、各国間の利害対立、競争もいちだんと激化している。米欧も「インド太平洋」地域への関与を加速している。アジアの軍事的緊張を高めてはならない。アジアの平和・共生・互恵の国家関係がますます求められている。アジアの一員として、日中関係は極めて重要な二国間関係である。
 一部の政治家や学者・文化人がふりまく偏狭なナショナリズムにもとづいた中国脅威論や伝聞情報に惑わされることなく、日中共同声明など四つの基本文書を基礎にした日中関係に立ち戻り、発展させるべきである。そのための国民的な運動が改めて求められている。(H)

●日中共同声明(抜粋)1972年9月29日
一 日本国と中華人民共和国との間のこれまでの不正常な状態は、この共同声明が発出される日に終了する。
二 日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する。
三 中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する。
●日中平和友好条約(抜粋)1978年8月12日
第一条
1 両締約国は、主権及び領土保全の相互尊重、相互不可侵、内政に対する相互不干渉、平等及び互恵並びに平和共存の諸原則の基礎の上に、両国間の恒久的な平和友好関係を発展させるものとする。
2 両締約国は、前記の諸原則及び国際連合憲章の原則に基づき、相互の関係において、すべての紛争を平和的手段により解決し及び武力又は武力による威嚇に訴えないことを確認する。

●平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言(抜粋)1998年11月26日
 双方は、過去を直視し歴史を正しく認識することが、日中関係を発展させる重要な基礎であると考える。日本側は、1972年の日中共同声明及び1995年8月15日の内閣総理大臣談話を遵守し、過去の一時期の中国への侵略によって中国国民に多大な災難と損害を与えた責任を痛感し、これに対し深い反省を表明した。中国側は、日本側が歴史の教訓に学び、平和発展の道を堅持することを希望する。双方は、この基礎の上に長きにわたる友好関係を発展させる。双方は、両国間の人的往来を強化することが、相互理解の増進及び相互信頼の強化に極めて重要であるとの認識で一致した。
(中略)日本側は、日本が日中共同声明の中で表明した台湾問題に関する立場を引き続き遵守し、改めて中国は一つであるとの認識を表明する。日本は、引き続き台湾と民間及び地域的な往来を維持する。

●「戦略的互恵関係」の包括的推進に関する日中共同声明(抜粋)2008年5月7日
二 双方は、1972年9月29日に発表された日中共同声明、1978年8月12日に署名された日中平和友好条約及び1998年11月26日に発表された日中共同宣言が、日中関係を安定的に発展させ、未来を切り開く政治的基礎であることを改めて表明し、三つの文書の諸原則を引き続き遵守することを確認した。また、双方は、2006年10月8日及び2007年4月11日の日中共同プレス発表にある共通認識を引き続き堅持し、全面的に実施することを確認した。(中略)
五 台湾問題に関し、日本側は、中日共同声明において表明した立場を引き続き堅持する旨改めて表明した。


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