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2021年7月15日号 2面

2021都議選の結果について

自民手痛い敗北、批判高まる

 東京都議選が七月四日、投開票された。
 大きな岐路にある情勢下、今回の都議選の結果が示したものは何か。
 今回の特徴を挙げるなら、(1)前回に続く自民党の敗北、(2)都議選史上二番目の投票率の低さ、(3)日本の首都・東京を取り巻く世界の激変に対する政党の認識の欠如、の三点であろう。

自民党、史上2番目に少ない獲得議席
 自民党は公明党と合わせて議席の過半数獲得をめざすと公言していたが、結果は自民党三十三、公明党二十三にとどまり、自民党は目標と程遠く、前回に続き都議選史上二番目に少ない獲得議席数となった。
 過去の都議選で、自民党の議席占有率が四割前後になったのは四回ある。うち一九九七年以外の三回はその年に国政選挙があり、いずれも自民が五割以上の議席を獲得した。ところが今回の議席占有率は二六%弱に落ち込んだ。今年に入ってからの国政補欠選挙や各知事選挙で自民党はすべて敗北か不戦敗で、今秋の総選挙での自民党の勝利の見通しはいっそう険しくなった、結果次第で政界再編へつながる可能性もある。小池都知事を巡る駆け引きがすでに始まっている。

主要政党の得票率と獲得議席数、絶対得票率
 今回、自民党の得票率は二五・六九%、三十一議席(一人除名で議席数は三十)を得た都民ファーストの会は二五・一一%だ。絶対得票率で見ると、それぞれ都民の一〇%程度の支持しか得ておらず、公明党・共産党・立憲民主党は五%台の支持にすぎない。
 このように、都民全体のわずかな支持の上に乗っかっているにすぎない自民党だが、かといって共産党や立憲民主党も自民党批判層を全く引きつけることができていないのである。その理由は、次に挙げる有権者の意識状況がもたらした低迷する投票率を見れば明らかである。

都民は各党を見限り、過去2番目に低い投票率
 投票率も九七年の四〇・八〇%に次ぐ四二・三九%と、過去二番目の低さとなった。コロナ禍の下での選挙とはいえ、総選挙を控えた各党は総力をあげたはずである。にもかかわらず、この結果である。
 NHKが六月中旬に行ったアンケート調査に、都民・有権者の意識の一端をうかがい知ることができる。  「投票で重視する政策・課題」への回答は、(1)景気・雇用対策、(2)新型コロナへの対応、(3)医療・福祉政策、(4)財政の健全化、(5)教育・子ども政策の順にとなっており、オリ・パラへの対応は六位であった。
 また、「国政が生活に役立っているか」については「役立っている」の三七%に対し、「役立っていない」との回答が六二%に上る。都政についてもほぼ同様で、「役立っている」が四二%、「役立っていない」が五八%と、政治に期待できない都民の実際がでている。
 国・都のコロナ対応については、国、都の対応についていずれも「評価しない」が多数であった。
 コロナ対策で都民が最優先に求めているのが「医療体制や保健所体制の拡充」であるが、事実は次の通りである。都内の保健所数は一九七五年に七十一あったのが、一九九七年に五十二に減らされ、さらに二〇〇四年には三十一となり、今もそのままの数で、多摩・島しょ八、特別区二十三の計三十一である。一方、都は二〇年三月末に「新たな病院運営改革ビジョン」を発表し、八つの都立病院の独立行政法人化を進めようとしている。
 こうしたアンケート結果に見られるように、六〇%近い都民が「生活に役立たない」と国政・都政に期待していないことが、投票率の低下をもたらしたと言える。
 「都議会は役割を果たしているか」についても同様に都民は落胆しており、政策・条例の提案で役割を「果たしていない」が六四%、「知事・行政に対するチェック機能」では、役割を「果たしていない」が七〇%と都議会に対しても厳しい評価を下している。

主要5党は何を訴えたか
 各党が共通して掲げたのはコロナ対策であったが、保健所を増やせとか都立病院の独立行政法人化をやめろといった主張はほぼ皆無であった。都心部での米軍ヘリによる低空飛行問題も議論がなかった。東京五輪については自公が感染対策をとって開催、都ファが無観客開催、共産党が中止、立憲民主党が延期か中止であった。
 小池都知事は激変する世界情勢について施政方針演説で語ることはほとんどないが、各党の都議選政策も同様に世界を語らず、有権者の耳目をひきそうなテーマを羅列したにすぎなかった。

連合東京の都議選への対応
 連合東京の組織内推薦候補、組織内準推薦候補、推薦候補、支持候補、支援候補は計五十二人で、当選者は三十四人であった。
 連合東京は舛添知事の時代から政策協定を結んで支持してきたが、小池知事になってからも同様である。連合東京は都政(悪政)を支える支柱の一つとなっている。
 今回の都議選でも小池知事が特別顧問を務める都民ファーストの会に最大の支援をした。

小池都政を打ち破る闘いを
 以上、今回の都議選結果についてざっと見てきたが、こんにちの状況をひとことで言うなら、冒頭に述べた通り、リーマン・ショックを機に資本主義の危機はいっそう深まり、AI(人工知能)をはじめとするデジタル革命がこの危機を加速し、コロナ禍によって資本主義の限界が各方面で顕在化している。
 米国は自らの衰退を巻き返そうと、同盟国を動員して中国への攻撃を強めて緊張を高めている。それに伴って国際政治の動揺と流動化も進んでいる。そうしたなか、対中国の最前線に立ったわが国は、七年八カ月に及んだ安倍長期政権の下で国力が著しく落ち込んでおり、政府との国民諸階級との矛盾も必然的に激化せざるを得ない。
 長い目で見れば、われわれは文字通り「生産様式が問われる時代、社会革命の時代」に直面しており、労働者階級の出番である。労働者といってもこんにち一様ではなくなっているが、コロナ禍の下で貧困と格差の拡大にあえいでいる労働者が急速に増えている。シングルマザーの大多数が苦難を強いられている。学生たちも悲鳴を上げているし、倒産・廃業に直面している中小零細企業家、商人も激増している。闘いの火種は広がっている。
 小池都知事は、この期に及んでも「国際金融都市・東京」の実現を唱え続け、都民大多数の要望とは真逆の、時代錯誤の道を突っ走っている。広範な都民と連携して、こうした都政を打ち破る闘いを強めなければならない。   (N)


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