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2021年7月15日号 1面

日本共産党が幻想
振りまく「野党連合政府」

敵・支配層を「左」から
支える危険な役割

 菅自公政権に対する広範な国民の怒りが高まっている。内閣支持率は下がり続け、不支持率は高水準に達している。
 また昨年九月の政権発足以来行われた国政補選や各種地方選でもほぼ全敗、また先日行われた東京都議会議員選挙でも目標には届かぬ結果となった。党内からも「菅政権下で選挙全部負け」(野田幹事長代行)との声が上がるほどである。
 今年秋までには衆議院選挙が行われる。

「野党連合」政権の幻想あおる
 この状況下で日本共産党はいっそう「野党共闘」に没入し、「総選挙を政権奪取の歴史的選挙に」(小池書記局長)と叫び、菅政権への国民の怒りを選挙に解消しようとしている。
 この党は二〇一五年、当時の安倍政権による安保法制への国民への不安と怒りの高まりに対し、当時の民進党などとの「国民連合政府」なるものを打ち上げ、国民の怒りを吸収しようとしてきた。
 さらに「政権合意がないもとでも、この問題を横において選挙協力を進めてきた」(第二十八回党大会決議)と事実上、「国民連合政府」構想を引っ込め、一六年の参院選、一七年の衆院選、一九年の参院選などを中心に「安保法制の廃止」などの「一点共闘」を進めた。
 そして、各種選挙のなかで共産党はこんにちの立憲民主党などとの候補者すみわけ、候補者の一本化など「涙ぐましい努力」を続けてきた。
 そうした甲斐あって、「長年にわたって続いた『日本共産党排除の壁』が崩れた」(志位委員長)と大いに喜んだ。「努力」が実を結び、ようやく「一人前の議会政党」として認められたのだ。
 一六年には「野党連合政府」を打ち出し、二〇年には立憲民主党、国民民主党、社民党などとの党首会談を行うなど、「野党連合政府」への入閣への意図を全面開花させた。
 こうした共産党の動きをマスコミも「好意的」に取り上げ、それにつられてか、「選挙協力とは枝野(立憲代表)を総理にすること」(志位委員長)と立憲民主党に最大限のラブコールを送っている。
 だが、連立相手に想定している立憲民主党は「外交問題で対立軸はない」(枝野代表)といい、自らを「保守本流」と定義づけている。
 またこんにちの政党状況は固定的なものではない。一七年の総選挙では小池・東京都知事による「希望の党」騒動で、民進党は分解、安倍自民党を大きくアシストした。都議選での結果を受け、またもや「小池新党」云々が取りざたされており、共産党が望むような政党状況が一変する可能性もある。

長期低落に歯止めかからず
 かつて、共産党は民主党などに対して「オール与党」などと批判を繰り返し、社民党にも「改憲を公約する民主党と協力、『護憲』の立場は『不確か』」などと言い立て、自分たちを「確かな野党」と売り込んできた。
 しかし、共産党は一七年の参院選で議席を増やしたものの、一七年の衆院選では「頼り」にしていた民進党が分解するなか大きく議席を減らし、一九年の参院選でも一議席減らすなど退潮傾向に歯止めがかかっていない。七月四日に投開票された東京都議選で共産党は現有十八議席から一議席増やし、「歴史的快挙」(志位委員長)などと大はしゃぎだが、前回都議選でも十九議席を獲得しており、よくて「現状維持」だ。しかも、今回は選挙区では立憲民主党とすみわけを行うなどの「相互支援」の結果であり、自力の結果でない。絶対得票率も五・四六%と前回より一・五二%減らしている。十一日に投開票された那覇市議選では現職二人が落選、七議席から五議席と後退させた。
 このような結果は当然と言えば当然だろう。
 有権者にとって自民党に代わる他の選択肢がない構図になった場面においてこそ、共産党はある程度議席を伸ばすことができるのである。つまり、立憲など他の野党と争った場合には直ちにカベにぶち当たるのだ。こんにち共産党はその連立相手である立憲民主党への批判ができず、自公政権への国民の怒りが立憲など他の野党に吸収されるのを見ているほかにない。立憲など他の野党との選挙協力、すみわけが可能になった場合に限って前進できるのであって、共産等の党勢拡大は重大なジレンマに陥っているのだ。
 「比例代表選挙で八百五十万票、一五%以上」に向けて、「一千万対話」「積極的な支持者を増やす日常的な活動」などと下部党員の尻を叩いているが、その実現は絶望的だ。

「日米安保破棄」を公約から除外/中国敵視を「左」からあおる
 共産党はその「野党連合政府」に向けての「政策的到達点」として一九年に共産党含む野党などが結んだ「十三項目の政策合意」(安保法制、共謀罪など立憲主義に反する諸法案の廃止等々)を挙げている。
 その上で、曲がりなりにも綱領で明記してきた「日米安保条約廃棄」についてこの間の選挙協力でも提起せず、共産党自身の選挙戦のなかでも全面的に展開してこなかった。そして、総選挙が近くなり、改めて「連立政権のなかで、安保条約廃棄は一致点として求めない」(田村政策委員長)と「安心できる政党」へのアピールをいっそう印象づけようと躍起になっている。
 またこの間、目立つのは際立った中国への攻撃だ。
 米国のトランプ前政権、バイデン政権は台頭を続ける中国への対抗を軍事や経済などあらゆる分野で強めている。そして、菅政権は今年四月の日米首脳会談で米の対中対抗へ最大限の協力を宣誓、「共同声明」では「台湾海峡」について明記され、「一つの中国」という国際常識と一九七二年の日中共同宣言に真っ向から反する姿勢を鮮明にさせた。
 この危険な選択はアジアの緊張を一気に高めるとともに、わが国をいっそう亡国と時代錯誤の道へ引きずりこむものだ。そして、日米両政府は台湾問題だけでなく、香港やウイグル問題など中国の内政問題をあげつらい、「人権」の美名の下、干渉を強めている。
 こうしたなか共産党は「中国の政権党は『共産党』の名に値しない」(志位委員長、「文芸春秋五月号」)などとマスコミを通じて中国への攻撃をエスカレートさせている。そして自民党や維新、立憲民主党議員らが参加する超党派国会議員でつくる「人権外交を超党派で考える議員連盟」に参加、党国際委員会副委員長の笠井衆院議員は副会長に収まり、自民党などとともに中国敵視を合唱しているのだ。そればかりか菅政権の対応などを「極めてだらしない態度」などとその「弱腰ぶり」をなじるありさまだ。
 こうした共産党の姿勢に対して、「党派を超えて共有できる」(佐藤・自民参院議員)などと自民党内のいわゆる保守派からも賞賛の声があがるほどである
 このような際立つ共産党の中国敵視の姿勢は選挙だけを意識した党利党略と打算に基づくものだが、より本質的には情勢認識の誤りである。
 かれらは昨年一月に開いた第二十八回党大会とそこで決定した決議において「世界で進む平和の地域協力の流れ」などと一面的に描き、こんにちバイデン政権が進めているような東アジアにおける策動に一切触れず、当然これとの闘いについてもまったく呼びかけていないのだ。
 すでに共産党は一九九七年の第二十一回党大会において、当時の米「東アジア戦略」に何一つ触れないなど、根本的な米戦略への暴露を避けた。そしてこの間、米国について「帝国主義」という規定を捨て去り、その時々の軍事的行動のみをとらえて「帝国主義的」「覇権主義的」と「批判」することにとどまるなど、米国との闘いを回避してきた。
 そればかりか、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)の核放棄と政権転覆を狙った当時のオバマ大統領による「核のない世界」演説を手放しで評価するなど米帝国主義とともに朝鮮圧迫の大合唱に加わった。
 こんにち、日中間の問題では些細な問題に過ぎない尖閣問題をもて遊び、中国を敵視し、南西諸島の「防衛力」配備強化でわが国の「国益」は守られない。尖閣問題など日中間の課題はあくまで話し合いで解決を図るような環境づくりが大事である。
 共産党の際立った中国敵視の言動はこうした環境づくりを破壊するものであり、かれらに真に現実的な外交政策を打ち立てることはできない。
 本格化している米帝国主義の中国包囲網とそれに追随し、アジアにおける独自の権益追求狙うわが国支配層との闘いが求められているが、共産党の果たしている役割は支配層の中国敵視策に「左」の側から呼応するものであり、犯罪的だ。

危機の時代、労働運動中心とする国民運動こそ
 こんにち世界は二〇〇八年のリーマン・ショックに端を発した歴史的危機がコロナ禍で加速化、官民債務の増加、各国内における格差のいっそうの拡大、米国の対中封じ込めをはじめとする国家間対立の激化等々、戦争を含む乱世の様相がますます深まっている。世界的な需要不足はいっこうに解消されず、資本主義は末期的症状を呈している。労働者階級と資本階級との矛盾が激化し、衝突が近づいている。まさに「社会革命」の時代だ。
 しかし、共産党は「資本主義を乗りこえる展望を語り広げよう」(二十八回党大会決議)と言うだけで、結局は「『市民と野党の共闘勝利』と『日本共産党躍進』の二大目標の達成」と選挙にすべてを解消しようというのだ。
 歴代政権の対米追随政治は限界をあらわにし、わが国はさまざなな分野において他国と比較して落伍した。そして、米国の対中包囲網へ積極的に呼応しようという菅政権はわが国にとって、もはや制約要因、障害である  この菅政権を打ち倒し、独立・自主の政権の樹立しなければならない。
 この方向は、選挙だけでは実現できない。労働者を中心とする広範な戦線、強力な国民運動こそが、前進を確かなものにできる。
 共産党の振りまく議会主義は、ますます展望がないものとなっている。「涙ぐましい」共産党の「政策転換」にも関わらず、敵・支配層はいっそう共産党に譲歩を求めている(次は党名変更か?)。共産党内からの不満の声も届いている。わが国の前途を憂い、闘いを望む共産党員にも訴えたい。
 労働者・労働組合は、共産党に期待せず、自らの力に依拠して闘わなければならない。激動の情勢は、そうした闘いを喫緊の課題としている。(T・T)


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