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2021年7月5日号 1面

米国の都合次第の「台湾問題」

一貫して「反共の防波堤」
として台湾を利用
米国こそ「台湾海峡の
平和と安定」の妨害者

 米国が国際政治の舞台で中国・台湾(以下、台湾)の「問題」に固執し続けている。先の主要七カ国(G7)首脳会議でも共同声明に「台湾海峡の平和と安定」を書き込もうと血眼になり、改めてその異様な姿勢を内外に示した。
 自国民が貧困や銃犯罪でバタバタと亡くなっていることへの無情さ、またアフガニスタンや中東人民の頭上には砲弾の雨を降らせている残酷ぶりと比べると、米国の「台湾びいき」は理解しがたく思える。だが、第二次世界大戦後の米国と台湾の関係史をたどると「米国にとっての台湾」の本質が見える。

米国持ち込んだ分断
 台湾はかつて中国(清国)の一部だったが、一八九四年の日清戦争で清朝が敗北すると、翌年の下関条約に基づき大日本帝国に割譲され、台湾海峡に「国境線」が引かれた。以後、台湾は半世紀あまりも日本の植民地とされ、大陸中国との分断状態に置かれた。
 一九四五年に日本がアジア太平洋戦争で敗北、台湾は解放された。しかし日本軍に替わって大陸の国民党軍が台湾に入ると、行政の要職を外省人が独占、四七年に圧政に憤った本省人の民衆が蜂起する二・二八事件も起きた。
 四九年には中国人民解放軍が国共内戦にほぼ勝利し、国民党は台湾に逃げ込んだ。解放軍は追撃して台湾を含む中国全土の解放と統一をめざしたが、台湾を「反共の防波堤」としたい米国が核兵器使用も含めた脅しで横やりを入れた。米国の腹黒い思惑により、台湾は再び分断されることとなった。
 以降、米国は台湾に居座った国民党「政権」を軍事・経済両面で支援し続けた。国民党政権は八七年まで戒厳令を敷き、一党独裁は九六年まで続いた。この間、台湾人民の思想・言論は徹底的に弾圧され、白色テロによる虐殺も起きた。しかし米国はこの非人道・非民主の「政権」を自国の都合で養い続けた。このように、米国は親米軍事独裁政権を仕立て上げて支配する手法を朝鮮半島やベトナム、中南米や中東など全世界で行ったが、もちろんその国の人民の生命や意思などお構いなしである。
 米国はベトナム戦争の只中にある七一年、ソ連対抗の必要から中国に接近し、七九年に中国と外交関係を結んだ。これで米国にとって重要性が低下した台湾の国民党「政府」は、国際政治の舞台から締め出されるなどハシゴを外された。しかし同時に、米国は台湾との事実上の軍事同盟となる国内法「台湾関係法」を制定、「防波堤」としての土台は温存した。国民党「政府」への冷淡さや、中国への内政干渉を堂々と国内法として制定する厚かましさには、米国のご都合主義がよく表れている。
 九一年にソ連が崩壊、結果として中国が世界最大の社会主義国となると、米国にとって「防波堤」としての台湾の役割にも変化が生じる。九六年に台湾で「総統」を選出する直接選挙が導入されてからは陰に陽に「独立派」を支持、中台関係に常に摩擦が生じるよう仕向けた。背景には、冷戦後のアジア支配を狙った「東アジア戦略」(九五年)があった。
 以後の中国の経済成長と大国化に怖気づき、米国はますます「台湾問題」を強調するようになる。二〇一六年のトランプ政権発足後にはその傾向が格段に強まり、バイデン政権となっても姿勢に変化はない。
 このように、米国にとって台湾は戦後一貫して「中国対抗のための道具」にすぎない。米国が台湾海峡を「問題」にするのは、台湾の現状とは無関係に、米国が対中国の観点から「問題」にしたい時にしているのが実際だ。「自由」や「人権」が口実でしかないことは、米国が過去に東アジアのみならず世界中で何をやってきたのかを見れば明白だ。
 米国こそが自らのエゴのために「台湾海峡の平和と安定」を阻害し、意図的に中台に確執をつくり出している。これが「台湾問題」の本質である。

台湾は「捨て石」に?
 トランプ以降の米国は中国包囲を政治・経済・軍事の各方面で強めている。米国の戦略に沿った日本の沖縄・南西諸島への自衛隊ミサイル部隊配備などの軍事機能強化もその一環だが、同様に米国は台湾の軍備増強もあおり、中国への軍事的圧力を強めている。
 米国は昨年、台湾にF 戦闘機の最新型六十六機の売却を決めた。戦闘機売却は一九九二年以来。新型は従来型に比べて航続距離が長く、これで中国各地の基地攻撃が可能になった。
 また台湾の国防部(国防省)は今年三月、四年に一度となる国防計画の見直しを行い、射程を従来より大幅に伸ばした中長距離ミサイルシステムの配備などを挙げた。米国は南西諸島から台湾に連なるミサイル包囲網を築く思惑のようだ。
 さらに台湾国防部のシンクタンクである国防安全研究院は今年五月、「台湾有事」に備え米軍駐留を支持する論文を発表した。米海兵隊が台湾の六基地に駐留、台湾軍と共同して中国軍と戦うことを提案している。これは台湾側の「提案」だが、米国も検討していることは間違いない。
 米政権と台湾の蔡英文当局は、双方の利益から、歩調を合わせて「中国の脅威」をあおりつつ台湾の軍備増強を格段に進めている。しかし米軍にとっては、軍事要塞化が強行されている沖縄と同じく、台湾も中国対抗の「道具」に過ぎない。いざ戦火を交える事態となれば、米軍は現地住民の生命・安全など考慮せず、状況次第では「捨て石」とされるだろう。「軍は住民を守らない」という沖縄戦の教訓を、東アジアの平和を願う者は肝に銘じなければならない。
 この軍事的な緊張の高まりとは裏腹に、中国と台湾は経済面では相互依存を深め、人的交流も増す一途である。蔡当局が「脱中」し米国との経済関係強化を模索する中でも、台湾からの中国向けの輸出は昨年過去最高を記録、輸出全体の四四%を占め、今年に入っても増加している。中台「両岸」は既に「切っても切れない」関係にあり、広い意味で一体化が進んでいる。大きな問題があるとすれば、それは米国が持ち込む分断以外の何物でもない。

日本は中国との約束守れ
 そもそも中国からすれば、香港やマカオと同じく、台湾は帝国主義に奪われた領土であり、「統一」を掲げることに何の不条理もない。加えて、台湾海峡の分断が続けば米国など他国の介入を招く足場となるため、中国からすればこれを放置できないのは当然だ。「台湾は中国の一部で、何十年かかろうとも将来は統一に向かわねばならない」(シンガポールのリー・クアンユー元首相)のであり、これが東アジアの平和と共生への道であること、日本の国民も深く理解する必要がある。
 また、日本はかつて台湾を植民地支配し、五十年近く台湾に中国からの分断状態を強いた。そのような日本が中台関係をどうこう言う資格などないことも忘れてはならない。
 さらに、日本政府は一九七二年の日中共同声明において、わが国が「(台湾が中国の不可分の一部であるとする)中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」すると約束している。これはかつて日本が侵略した中国との国交正常化の前提となる約束で、堅持されなければならない。
 真の「台湾海峡の平和と安定」の実現のためには、東アジアに分断と緊張を持ち込む米軍をアジアからたたき出さなければならない。わが国においては、米国と足並みをそろえる菅政権と闘い、アジアの平和を求める広範な国民運動が求められている。  (Q)


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