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2021年5月25日号 1面

中国敵視の軍備増強・演習強化
アジアの緊張高める戦争準備

亡国の菅政権打ち倒そう

 四月の日米首脳会談以降、わが国を対中国の「不沈空母」とする策動がますます強化されている。

日米仏軍が初の共同訓練
 五月十一日から十七日まで陸上自衛隊相浦駐屯地と霧島演習場などで自衛隊、米海兵隊、仏陸軍、豪海軍などによる共同訓練「アーク21」が行なわれた。霧島演習場では、国内では初めて仏陸軍も加わった三カ国による共同訓練となった。陸上自衛隊の大型ヘリコプターから部隊を投入する「へリボン」作戦や、市街地戦闘訓練も行われた。海上でも対潜訓練、着上陸訓練などが行なわれた。
 自公政権は、日米安保条約による軍事協力の枠を越えた多国間の軍事協力を拡大させている。今訓練は、仏海軍の佐世保寄港を機会に行われた。防衛省は仏艦隊の次回の寄港時以降も共同訓練を定例化する方針で、東シナ海と南シナ海で中国を牽制する方針だ。
 かつてアジア諸国を植民地としてきた欧州の主要国も、それぞれの思惑で「インド太平洋」戦略を定め、成長するアジアへの関与を強めようとしている。今年後半には、英空母打撃群と独海軍も派遣される予定で、欧州の主要国との軍事協力もさらに拡大する。アジアでの軍事的緊張はさらに高まる。

安倍が進めた集団的自衛権
 安倍前政権は二〇一五年に安全保障関連法を成立させ、わが国の防衛安全保障政策を大転換させた。集団的自衛権の行使が可能になり、米国以外の軍隊との共同訓練も頻繁化している。一八年には「インド太平洋」戦略を提唱、米国と共に台頭する中国と対抗する外交を活発化させた。軍事面でもインド洋でのインド海軍との共同訓練をはじめ、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなど「インド太平洋」諸国との共同訓練も回数が増えている。自衛隊とインド軍が食料や燃料を融通し合う「日印物品役務相互提供協定(ACSA)」も五月に承認された。

菅政権さらに軍事費増大
 軍事費も、第二次安倍政権発足以来急増してきた。安倍前首相は一七年三月に「防衛費をGDP(国内総生産)一%以内の枠に抑える考え方はない」と発言、軍備増強にひた走ってきた。菅政権もその流れをさらに加速させている。岸防衛相は「台湾の状況はしっかりわれわれの問題としてみていく」と表明、南西諸島などへの水陸機動団もふくめた部隊配置を強化すると述べた。防衛費を「GDP比一%以内に抑える目安にこだわらない」方針も再度示した。安倍・菅政権は際限のない軍備増強の道を突き進んでいる。

南西諸島防衛は米国の盾
 政府はこの間、中国の脅威を口実に、中国が軍事戦略上「第一列島線」と呼ぶ南西諸島の防衛強化として部隊の増強などを進めた。
 与那国島への陸上自衛隊の沿岸監視隊の配備、水陸機動団新設、奄美大島への地対艦ミサイル、地対空ミサイル部隊配備、宮古島への地対艦・地対空ミサイル部隊の配備などが進められた。また、石垣島への地対艦・地対空ミサイル両部隊の配備や、米空母艦載機の夜間離着陸訓練(FCLP)移転先として馬毛島(鹿児島県西之表市)での自衛隊基地建設計画が進められている。
 昨年十〜十一月の日米共同統合演習「キーン・ソード」では、トカラ列島の臥蛇島で水陸機動団と米海兵隊が上陸作戦の訓練を行った。同時に自衛隊が種子島、奄美大島、徳之島、沖縄本島、久米島、宮古島などで一斉に訓練を実施、戦時さながらである。  さらに政府は、中国本土も狙える長距離ミサイルの開発を決めた。米海兵隊も対中戦略として、長射程の対艦・対空ミサイル部隊を南西諸島やフィリピンなどの島々に展開させる「前方展開前線基地作戦」(EABO)を構想しており、米中の軍事衝突が起これば南西諸島は最前線の戦場となり、日本は米国の盾にされることになる。

日中の勢力均衡をあやつる
 米国は「中国の台湾への武力行使」を言い立て、優越的立場を最大限利用して日本を手駒として、中国と争わせようとしている。だが実際の米国の対中政策は巧妙で、「一つの中国」は捨てない一方で、国内法である「台湾関係法」で台湾を利用して中国をけん制している。
 米国家安全保障会議(NDC)でアジア政策を統括するキャンベル・インド太平洋調整官は、台湾問題について「歴代米政権による『戦略的曖昧さ』を維持すべき」との見解を示し、「現状維持が利益にかなうとの認識が米中双方にある」と述べている。
 米国の真の狙いは、日中を争わせてアジアの市場と政治的主導権を握ることである。

亡国の道に反対する運動を
 安倍・菅政権と続く日本の一部保守勢力は、米国の口車に乗った恰好で急速に軍備増強を進めている。日米安保条約など戦後の日米関係のもとで主権も著しく侵されてはいるが、わが国多国籍企業、独占資本も、アジアで中国と対抗し、独自の権益を確保したい要求もある。だが、軍事、政治、経済を含む全面的な「対中国同盟」への参画には、財界のなかにも深刻に考慮せざるを得ない状況を生み出している。
 バイデン大統領はわずかな同盟国を道連れにして中国と対抗しようとしているが、世界の大勢は多極化であり、まさに時代錯誤である。菅政権が踏み込んだ道は、アジアで孤児となる戦争への道であり、気がつけば後戻りできないところに立たされることになる。
 だが、住民犠牲の軍備増強、基地強化に反対する闘いも各地で強まっている。今年一月の西之表市長選挙では馬毛島の基地建設に反対する市長が激戦を制した。沖縄県民は粘り強く闘い抜いている。佐賀ではオスプレイ配備の見通しさえ立っていない。
 コロナ感染拡大に多くの国民が政府の対策に不満を募らせている。東京五輪へ突っ走る菅政権は不支持率が高まっている。米国に追随しての戦争準備どころではないのである。国民運動を強める条件は広くある。労働運動が先頭にたって亡国の道に反対する国民運動を強め、亡国政治を打ち破るチャンスである。(H)

南西諸島の基地強化に反対
鹿児島県護憲平和フォーラム 磨島 昭広事務局長

 霧島演習場での自衛隊訓練に反対ではないで地元自治体でさえ、外国の軍隊を入れることには反対だ。
 国民がコロナに苦しんでいるのに日本の予算をつぎ込んで外国の軍隊と訓練するのはいかがなものか。コロナを抑え込むことが先ではないか。
 新田原基地(宮崎)にF35が配備されれば岩国(山口)、築城(福岡)、鹿屋(鹿児島)がつながっていく。そして馬毛島にFCLP訓練を名目に自衛隊基地がつくられようとしている。昨年の日米共同訓練で臥蛇島で無人島上陸訓練がやられるなど種子島・奄美一帯でも訓練が激しくなってくる。南西諸島の基地強化は、日本を防衛するのではなく米国の盾になることだ。
 政府は中国や朝鮮の脅威をあおって軍備増強に走っているが、軍事ではなく外交で解決すべきだ。


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