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2021年4月25日号 1面

日米首脳会談
台湾問題で踏み込んだ菅政権

「反中国同盟」は戦争への道
労組は「アジアの平和」
めざし闘おう

 菅首相とバイデン大統領による日米首脳会談が四月十七日、ワシントンで行われた。
 菅首相は米国に全面的に追随し、わが国を対中国の「不沈空母」とすることに合意した。菅首相が臭わせたように、何らかの「密約」もありそうである。
 中国が反発しているのは当然である。
 アジアの軍事的緊張は一気に高まり、経済的にも「分断」が強まることになる。

台湾問題で中国を挑発
 「共同声明」では、五十二年ぶりに「台湾海峡の平和と安定の重要性を強調」した。
 これは「一つの中国」の国際準則と日中共同声明に反し、中国の内政問題にほかならない台湾問題に踏み込んだことを意味する。中国に対する露骨な挑発にほかならない。
 米国は従来から「台湾関係法」で、「台湾の安全」に「適切な行動を取らなければならない」という態度である。バイデン政権はこの範囲を超えて、台湾との接触機会を増やそうとしている。すでに自らの就任式に台湾の在米「代表」を招いたほか、アーミテージ元国務副長官を台湾に派遣した。
 本来、これらは日本には関係のないことである。日中共同声明において、わが国が「(台湾が中国の不可分の一部であるとする)中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重」すると約束したことを忘れてはならない。  菅首相は、共同声明に「平和的解決を促す」と明記したことで中国に「配慮」したつもりかもしれない。だが「平和的」であれ「非平和的」であれ、それは中国の主権の範囲内のことである。他国、まして台湾を植民地としていた日本が干渉してはならない。
 日米は「台湾有事」に備えた「日米共同作戦計画」策定を始める。すでに、わが国政府は安全保障関連法で集団的自衛権の行使を可能にしている。安倍前政権が飛躍的に増大させた防衛予算が、さらに拡大することは必至である。国民の生活と福祉は、ますますないがしろにされる。
 アジアの軍事的緊張は飛躍的に高まり、平和の危機である。沖縄はその最前線にさせられる。

全面的な「対中国同盟」
 台湾問題だけではない。菅政権は、香港や新疆ウイグル自治区の「人権」問題でも米国に同調した。
 バイデン大統領は、日本をひきつけるため沖縄県尖閣諸島に日米安保条約を適用することを改めて表明した。住民が反対する沖縄県名護市辺野古や鹿児島県西之表市馬毛島での基地建設も「再確認」した。朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)による「拉致問題の即刻解決へのコミットメント」と「口約束」した。東京五輪についても同様である。
 米国は衰退を早め、すでに単独では中国に対抗できない。この程度の「リップサービス」で日本を対中国戦略に引き込めるなら、「安いもの」である。わが国は、まんまと術中にはまったのである。
 経済においても、日本は半導体などのサプライチェーン(供給網)問題でも対米連携を約束させられた。経済においても「対中国同盟」に巻き込まれたのである。気候変動問題についても、「脱炭素」で主導権を握ろうとする米国に協力することを約束した。
 軍事、政治、経済を含む全面的な「対中国同盟」への参画である。わが国財界人でさえ、深刻に考慮せざるを得ない選択である。

菅政権の選択は時代錯誤
 こんにち、世界は歴史的転換期にある。コロナ禍は、経済の低成長と官民の債務拡大、著しい「格差」、急速な技術革新などといった資本主義の危機を一気に加速させている。各国内では階級矛盾が激化、米中を中心に諸国間の力関係も激変しつつある。
 なかでも、成長するアジア地域は争奪の「焦点」である。米中対立だけではない。インドも戦略外交を強め、欧州諸国は艦船を派遣して関与を強めようとしている。ロシアも同様である。東南アジア諸国連合(ASEAN)や韓国は、自主的進路を歩もうとしている。
 こうしたなか、わが国を米アジア戦略に委ね、まるごと対中国の「前線基地」化しようとする菅政権の道は、従来とは画期をなす亡国の道である。
 安倍前政権による「米中のバランサー」という欺まんさえ不可能となる。財界や保守政治家でさえ危機感を高めざるを得ない。中西経団連会長の談話には「中国」という言葉さえなく、財界内の複雑な心情をにじませている。
 アジアの平和が脅かされている。独立・自主、アジアと共生する進路を実現しなければならない。
 だが、立憲民主党は「中国、北朝鮮への対応についても協議できたことは重要」と、事実上、菅政権に追随している。
 共産党・志位委員長談話に至っては日米同盟強化を「批判」しつつも、共同声明の中国への批判が「不十分」といわんばかりである。客観的には、米国主導の対中国同盟に手を貸す反動的な態度である。
 菅政権を打倒し、独立・自主、アジアと共生する政権を樹立しなければならない。アジアの平和をめざし、労働組合は闘いの先頭に立とう。    (O)


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