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2021年4月15日号 1面

コロナ拡大は政府の責任
人権侵害の「まん延防止措置」
検査拡大、医療充実が急務

菅政権打倒こそ最大の対策

 菅政権は四月十二日から、東京、京都、沖縄の三都府県に新型コロナウイルス感染症に関する「まん延防止等重点措置」(重点措置)を適用することを決めた。同措置の適用は、宮城、大阪、兵庫を加え六都府県に拡大されることとなった。
 菅政権が緊急事態宣言を全面解除してから三週間足らずで、感染力の強い変異株がまん延するなど、コロナ禍はさらに深刻な事態に陥っている。
 吉村・大阪府政は「医療非常事態」宣言に追い込まれた。府は「不急の手術を延期」することを要請した。
 コロナに限らず、国民の命と健康は危機的状況にある。
 「重点措置」は、新型インフルエンザ等対策特別措置法(特措法)改定によって新設された規定である。国の発動によって、自治体は「疫病のまん延防止」を口実に「営業の自由」など私権を大きく制約し、違反すると二十万円以下の過料を課されるなど私権が制限される。しかも、飲食店などへの財政支援はあいまいなままで、国会への報告義務さえもない。
 多くの憲法学者が指摘する通り、憲法違反の規定である。
 コロナ禍の深刻化は、すべて菅政権の責任である。  昨春の安倍前政権による「緊急事態宣言」発動時以来、多くの識者が求めてきたのは、PCR検査の抜本的な拡充と医療体制の充実である。
 この課題がこんにちも変わっていないところに、安倍前政権と菅政権も悪政が集中的に表現されている。
 新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込むには、「検査と隔離」以外に方法はない。だが、わが国におけるPCR検査数の少なさは世界的にも異常なほどである。
 一人の感染者を割り出すためのPCR検査数は、日本はわずか一九・六件にすぎない。これに対して、英国は二九・六件、韓国は七三・二件、ベトナムは九七〇・八件、中国はは一八〇八・七件である(医療ガバナンス研究所)。総じて、感染拡大を抑えている国々は人口あたりの検査数が多く、感染が拡大している国々は(結果的に)検査数を増やしている。日本はどちらでもなく、今後の感染拡大が危惧されるのである。
 感染源探知のためのモニタリング調査も、政府の「一日一万件」という目標に比して、実態は八百件にも満たない体たらくである。菅政権は「(感染者が)こうも一気に増えるとは」との寝ぼけた対応で、断じて許しがたい。
 これでは、次々に登場するであろう変異株のまん延に追いつき、対処することは不可能である。
 検査を拡大すれば、当然にも陽性者の一時的増加を招く。「自宅隔離」は家族の負担を著しく増大させてしまうため、政府はホテルや体育館などを大規模に借り上げ、人権に配慮した上で静養を促すべきである。
 ワクチン接種も遅れに遅れ、接種数は世界で「下から数えたほうが速い」という先進国にあるまじき実態である。閣内も接種をまぐり右往左往し続けている。
 何より、政府は再度の現金給付と営業補償金の支給、解雇と待遇悪化を全面禁止することなどで、国民の生活と営業を助けなければならない。医療関係者への特別手当と人員確保、病院経営安定化のための支援も急がなければならない。歴代政権・自治体当局が進めてきた保健所や自治体病院の統廃合をやめ、拡充させるべきである。
 政府・与党の一部にある「GoTo再開」論は論外である。東京五輪も当然、中止すべきである。ただでさえ不足している医療資源を、五輪のために動員することは本末転倒である。
 菅政権はこうした政策を急ぐどころか、この四月以降に雇用調整助成金のコロナ特例を縮小させ、医療現場への「感染拡大防止等支援事業」も大幅縮小させるなど、対策を後退させてきたのである。
 併せて、政府・与党は医療制度を改悪する法案を今国会に提出、コロナ対策と矛盾する策動を進めている。
 一つは、医療機関の再編・統合を加速させる「病床削減推進法案」で、すでに参議院に送付されている。病院統廃合や病床削減を行った医療機関に財政支援を行う内容で、コロナ禍で顕在化した医療体制、とくに地方での「病床不足」の危機をさらに深刻化させるとんでもない法案である。
 もう一つは「医療制度改革関連法案」である。七十五歳以上の後期高齢者の医療費窓口負担を現行の一割から二割に引き上げるもので、対象は単身世帯で年収二百万円以上、夫婦世帯で同三百二十万円以上である。対象は約三百七十万人に達し、七十五歳以上の約三割に相当する。
 コロナ感染で重篤化しやすい高齢者は院内感染を恐れ、ただでさえ診療を「自粛」している。窓口負担増はこの傾向をさらに強め、他の疾病の治療を遅らせる。政府は「経過措置」導入で国民の抵抗を和らげようとしているが、負担が増えることに変わりはない。しかも、政府・財界はさらなる負担増を企んでおり、国民犠牲には際限がない。
 感染拡大を防ぐ最良の方策は、悪政を繰り返す菅政権を倒し、国民大多数のための政権に代えることである。      (K)


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