2021年2月15日号 1面
大統領は「米国は戻ってきた」とぶち上げ、新型コロナウイルス感染症対策や環境問題などでの「国際協調」を打ち出した。「同盟国は最大の資産」とまで言い、トランプ前政権による「米国第一主義」からの転換を印象づけようとしている。 他方、中国とロシアに対しては、「米国に対抗しようとする中国の野心」「民主主義にダメージを与え混乱させようとするロシアの意思」など、帝国主義者としての憎悪をむき出しにして「立ち向かう」と宣言した。 とくに中国に対しては、「経済的な不正利用」「人権、知的財産権、グローバル・ガバナンスをめぐる中国の攻撃」などと一方的に決めつけ、「最も深刻な競争相手」と規定した。中国との「協力」にも言及したが、「米国の利益にかなう場合」に限った。 ロシアに対しても「米国が抵抗せずにいた時代は終わりを迎える」と宣告している。 バイデン大統領はこれらを実行するための手段として、全世界の米軍配置を見直す意思を示した。この一環として、駐独米軍の大幅削減計画を凍結するとした。 併せてミャンマー軍部の「権力放棄」を要求、イエメン内戦でのサウジアラビア主導の連合軍への軍事支援停止も表明した。 米軍配置の見直しは、インド太平洋地域での大軍拡につながるもので、軍事的緊張を高めることになる。ミャンマーへの圧力には、中国をけん制する地政学的狙いもある。「協力」するという地球環境問題も、中国に負担を負わせて消耗させることが狙いである。 またブリンケン米国務長官は楊・中国共産党政治局員(外交担当)との協議で、台湾問題を持ち出して「中国の責任を追及する」と息巻いた。 米国は近年、駆逐艦に台湾海峡をたびたび通過させるなど、中国の内政問題である台湾問題への干渉を強化している。バイデン大統領の就任式に、台湾当局者を招いたのもその一環である。 しかもバイデン政権は、中国・ロシアへの対抗に同盟国を巻き込み、動員しようとしている。「国際協調」といえば聞こえが良いが、中国などに対抗するための陣形づくりで、「米国第一」の亜流にすぎない。すでに、日本、オーストラリア、インド四カ国による首脳会合の開催を画策、中国包囲網を強化しようとしている。 ただ、サキ大統領報道官が対中政策において「戦略的忍耐」と「戦略的競争」という二つの表現を使ったように、細かな点では、米中関係には曲折も避けられないだろう。 かつてのオバマ政権は「アジア・リバランス(再均衡)」を掲げ、中東などからアジアへの戦略配置の転換をめざした。だが、中東で「イスラム国」などとの戦いに引きずり込まれ、不徹底に終わった。トランプ前政権は米国の衰退を巻き返すべく、同盟国にコスト負担を求めた。 バイデン政権も程度の差はあれ、同盟国にいちだんの負担を求めるだろう。米国の衰退はさらに著しいからである。米国のアジア戦略、とくにアジア戦略の成否は、日本の協力如何で決まるといっても過言ではない。 わが国は、日米同盟の下で米国の中国包囲網づくりに協力するのか、独立・自主でアジアと共生する道を歩むのか、ますます深刻に問われることになる。 菅首相は施政方針演説で「自由で開かれたインド太平洋」を掲げ、米国、オーストラリアなどとの連携、イージス・システム搭載艦の採用など、米戦略を支えながら政治軍事大国化の道を進もうとしている。沖縄県名護市辺野古への新基地建設強行も続けている。アジアだけでなく、欧州諸国を対中包囲網に引きずり込もうと画策している。 これらは、アジアの緊張を高める危険な策動である。 菅政権と闘い、国民大多数のための政権をめざさなければならない。 だが、ほとんどの議会内野党が「日米同盟強化」で政府・与党と同じである。「人権」を理由に中国非難の大合唱に加わる点では、共産党まで含めて同じ態度である。わが国平和運動の一部にも、バイデン政権に対する幻想が見受けられる。 世界は激変しつつあり、コロナ禍はそれを加速させている。世界資本主義は末期症状を呈し「社会革命」の時代である。デジタル技術の急速な進展は、資本主義の「枠」さえ突破しつつある。米国の衰退と新興諸国の台頭は急である。各国で階級矛盾が激化し、政治は著しく流動化している。 こうした激動期、第二次世界大戦後続く対米従属政治は、完全に時代遅れのものとなっている。「四カ国」に加わるオーストラリアやインドでさえ、国内に異論を抱え、中国への対抗「一辺倒」ではない。 わが国の進路の大転換を掲げ、闘いを準備しなければならない。労働組合はその闘いの先頭に立ち、組織者としての役割を果たさなければならない。 すでに始まっている二一春闘においても、賃上げ・生活改善と併せ、国の進路の課題を掲げて闘いを巻き起こすことが求められている。(O)
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