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2021年2月5日号 1面

特措法、感染症法
改悪を糾弾する
危機に備えた
弾圧強化策こそ本質

国民に犠牲と負担、
与党は遊興三昧
与党を助ける立民の責任は重大

 インフルエンザ特別措置法や感染症法などの改定案が二月三日、参議院本会議で可決・成立した。自民党、公明党の与党に加え、立憲民主党、日本維新の会が賛成した。
 これに先立ち、東京など十都府県を対象に「緊急事態宣言」を一カ月延長することが決まった。
 わが党は、本改悪法案の成立と宣言延長を糾弾する。
 特措法・感染症法などの改悪案はいかなるものか。
 感染症法改悪案において、入院や感染経路の調査を拒否した人には、行政罰としての過料が課される。当初案にあった刑事罰(懲役)は撤回されたが、「罰則による強制」という性格は不変である。「百万円の罰金が五十万円の過料に引き下げられた」ことなど、気休めにもならない。
 しかも、入院できずに自宅で亡くなる患者が多数いる事態を放置したまま、「自宅療養」に法的根拠を与えて行政の怠慢を免罪している。さらに、病床増の「協力勧告」に応じない病院名を公表する規定がある。これまた、病院経営の苦境と医療関係者の困難を放置したままである。
 特措法に新設される「まん延防止等重点措置」も問題である。政府・都道府県知事が期間と地域、特定の事業者を定めて命令できるようにするもので、これまた「過料付き」である。現在、政府が飲食店を「狙い撃ち」にしていることに典型だが、行政の恣意(しい)的運用や拡大解釈によって、「営業の自由」をはじめとする国民の権利を制限する憲法違反のシロモノある。事業者への「財政支援」は明記されたものの範囲や程度はあいまいなままで、国民生活への支援が義務化されたというには程遠い。
 いま政府に求められているのは、感染拡大防止のために医療・検査体制を充実させることである。コロナ禍でますます苦境にある国民、中小零細業者などに手厚い給付を行い、助けることである。厚労省の厚生科学審議会・感染症部会でも、罰則導入には反対多数であった。
 政府・与党は、こうした対策さえきわめてなおざりなまま、国民に責任を転嫁して罰則を課す法改悪を強行したのである。
 しかも、少なからぬ与党議員が「会食」を繰り返している実態が暴露された。国民には「自粛」などさまざまな負担を強い、ろくな補償も行わないまま、自らは遊興三昧である。これこそ、国民の命と健康を顧みない、菅政権・与党の正体である。
 断じて許しがたい事態で、国民の批判が集まり政権支持率が低下しているのは当然である。
 政府・支配層がこの悪法の成立を急ぐのはなぜか。
 リーマン・ショック後の危機は、コロナ禍によっていちだんと深刻化している。各国内で階級矛盾が深まり、労働者・人民は支配層・現政権への不満を高めている。その勢いは既存政党・政治構造の枠内にとどまらず、いわゆる「ポピュリズム政党」への支持、さらには大衆行動の激化となってあらわれている。
 帝国主義者、各国支配層は人民の抵抗を抑えつけ、政治支配を維持する衝動を強めている。各国はますます「軍事監獄」化する。
 わが国菅政権も同様である。インフルエンザ特措法や感染症法などの改悪による罰則導入は、デジタルトランスフォーメーション(DX)を掲げたマイナンバーカードの普及などと並び、わが国支配層の危機対応策の一環である。
 行政罰ではあっても、支配層の狙いは「蟻の一穴を空ける」ことであり、「小さく産んで大きく育てる」ことである。遠からず、罰則強化と刑事罰導入が課題となることは必定である。
 野党第一党の立憲民主党がこうした法案の本質を見抜けていないことは、指摘するまでもない。立民は刑事罰の削除と過料金額の引き下げで与党と妥協し、法成立に「協力」した。この法案修正は、与党にとっては「想定内」のものであったという報道もある。立民が「与党を譲歩させた」と肯定的に評価できるようなものではない。立民が、国民に罰則を課し弾圧強化に道を開く法案に成立した責任は重大である。
 内外政策の肝心な点で菅・自民党と政治的対抗軸を立てられない、この党の本質が暴露されたものである。立憲民主党は、労働者・労働組合が支持できる政党ではない。
 共産党は本案に反対したが、当然である。
 だが、共産党は与党と取り引きし、行政罰を残した立憲民主党に対して、一言の批判もない。
 共産党に聞きたいが、次期総選挙では「国民を『犯罪者』扱いする」(共産党の塩川議員)悪法に賛成した立民に投票を呼びかけるのか。仮に「野党連立政権」ができたら(その可能性はきわめて低いが)この改悪特措法などはどうするのか。
 改悪特措法・感染症法などの撤廃と、国民大多数のための医療・感染症対策を求めて闘いを強めなければならない。その最大の保証は、菅政権を国民運動で打倒して国民大多数のための政権にとって替えることである。(K)


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