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2020年12月15日号 1面

感染拡大は政治の責任
国民の命脅かす犯罪行為

政権打倒こそ第一の対策
「GoTo」即時中止せよ

 世界の新型コロナウイルス感染者数は十二月十二日、累計で七千万人を突破した。わずか二週間で一千万人も増加したことになる。累計死者数も百六十万人に迫った。まさに、世界的大流行(パンデミック)である。
 わが国においても、一日あたりの新規陽性者が初めて三千人を突破、累計陽性者は十七万五千人を超え、死者も二千五百人に達している。これは、コロナ感染による免疫暴走(サイトカインストーム)が引き起こす血栓症などによる死者を含んでいない。実態は、さらに深刻なのである。
 人口あたりの死亡者数では、わが国はすでに、アジア最悪の水準に達している。
 春季の感染拡大時を超える深刻な事態である。入院患者も急増、各地の病床はひっ迫している。医療労働者の負担は、すでに限界に達している。
 東京都医師会などが指摘しているように、感染再拡大のきっかけをつくったのは、政府が十月から始めた「GoToキャンペーン」である。欧米諸国でロックダウン(都市封鎖)や「外出規制」の動きが強まるのと正反対に、わが国では大手旅行会社を助けるための血税投入政策が、感染拡大を引き起こす大きな理由となったのである。
 政府の専門家分科会でさえ、「感染高止まり地域」などでのキャンペーンの「一時停止」を求めたほどである。全国約二千五百病院が加盟する日本病院会も、キャンペーンの「即刻中止」を求める声明を発表している。
 だが、菅政権は「どこ吹く風」で、都道府県知事に責任を転嫁するというきわめて無責任な姿勢である。菅首相は十一日、キャンペーンの中止は「まだ考えていない」と明言している。
 それどころか、政府は十一日には、「GoToキャンペーン」に、二〇二〇年度第二次補正予算の予備費三千八百五十六億円を支出すると閣議決定した。予備費はいまだ七兆円近くが残されている。本来、検査拡大などに向けられるべき予算だが、政府にはその気配さえない。
 また、政府は八日、追加経済対策を閣議決定した。事業規模七三・六兆円、うち財政支出は四十兆円で、来年度予算案分の約十兆円を含む。
 だが、感染拡大防止対策費はわずか六兆円で、PCR検査の拡大や医療機関の減収補てんなどの切実な対策は盛り込まれていない。持続化給付金と家賃支援給付金は、わずか半月の「申請期限延長」で、ほとんど意味がない。企業支援の枠内ではあるが、雇用維持に一定の「効果」のある雇用調整助成金は、二月末まで延長されるが、三月以降は段階的に縮減される。
 中小企業への実質無利子・無担保の融資については、来年三月末までの延長が発表されているが、以降は条件の「厳格化」が報じられている。明日をも知れぬ綱渡りの経営を強いられている中小零細企業の資金源を細くし、「淘汰」に追い込むものである。
 逆に、マイナンバーカードの普及や「ポスト5G」通信規格の開発支援などのデジタル化や小規模事業者再編などの経済構造転換に五一・七兆円、インフラなど公共事業五・九兆円などで、「GoToトラベル」を来年六月末まで延長する。
 まさに、感染拡大防止に逆行し、コロナ禍にまぎれて大企業を支援する「対策」である。
 また政府は、北海道、大阪に自衛隊の看護師(看護官)らを「災害派遣」することを決めた。
 だが、自衛隊医官・看護官は、重症現場で求められている人工呼吸器やエクモ(ECMO)の操作に習熟しているわけではない。派遣には「象徴」以上の意味は乏しく、これだけで医療現場のひっ迫を解決できるものではない。
 原因をつくり出した責任が政府にある以上、キャンペーン中止などの責任もまた、政府がとるのが当然である。感染拡大の現状からすれば「中止」は遅すぎるが、それでも、直ちに行わなければならない。
 併せて、国民への再度の現金給付、PCR検査の大幅拡充、医療機関の減収補填、中小零細企業の事業継続支援などを、早急に実施しなければならない。
 こうした対策を行わない菅・自公政権は、国民の命と健康を守るという政治の責任を公然と放棄している。これを犯罪といわずに何というのか。安倍前政権、菅政権が行っていることは、紛争や戦争ではないが、自国民の「虐殺」と呼ぶことさえできる。
 反住民的な都道府県政にも責任がある。
 保健所や自治体病院を統合・廃止し続け、「うがい薬」のデマを振りまき、無益な「住民投票」に興じて感染拡大を招き、隣県の和歌山県知事にたしなめられた橋下・松井・吉村の維新府・市政。「五つの小」などと党利党略のパフォーマンスに明け暮れる小池都政。鈴木・北海道政も、厚労省の「地域医療構想」に追随し、大規模な病床削減を進めてきた。全国一の病床ひっ迫となっている名古屋市も、河村市長の下、十六の保健所を一つに統合するなど、住民サービス切り捨てを強行してきた。
 こうした改革政治を進めてきた自治体ほど、感染者が多いのは、偶然だろうか。コロナ禍は、これまでの国・自治体によるデタラメな医療・衛生政策のツケをあらわにさせたのである。
 もはや一刻の猶予もない。菅政権、さらに反動的な自治体政治を倒すことこそ、国民の命と健康を守るために不可欠な「第一歩」である。     (O)


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