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2020年11月25日号 1面

コロナ禍再度深刻化
菅政権/自治体・国民に丸投げ

政権倒して抜本的感染症対策を

 新型コロナウイルス感染症が、「第三波」と呼ばれるほど猛威を奮っている。
 わが国の感染者数は累計十三万三千人を超え、死者も二千人を超えた(クルーズ船乗船員を含む)。重症者は三百二十人以上と、これも最高水準に近づいた(十一月二十四日現在)。
 「感染者数」は、正確には「検査陽性者数」である。判明した陽性者数は「氷山の一角」で、第三者に感染させる可能性のある未検査の無症状感染者は、判明陽性者数の数十倍に達する。死者も、コロナウイルスが引き起こす免疫暴走(サイトカインストーム)による心筋梗塞、血栓症などによる死者数を反映してはいない。コロナの後遺症(無自覚を含む)で、関節痛、神経疾患などに悩まされている人びとも多い。
 日本でコロナ感染が広がり始めたときから、「軽症者」は「自宅待機」を強いられている。それが、家庭内感染と死者を拡大させたのである。
 全国の医療機関、保健所などの負担は限界に達しつつあり、一部ではすでに超えている。
 感染者を再拡大させたのは、政府による「GoToキャンペーン」である。キャンペーンが始まった十月以降、陽性者が全国的に増加しているのがその証拠である。
 これに対して、東京都医師会(尾崎治夫会長)は二十日、「急がば回れ、特に感染が多い地域に限定してでも一時中止の決断を」「遠方への旅行の際はPCR検査や抗原検査をパッケージに」などと提言した。
 同医師会は、このまま抑制できない場合、四週間後の東京都の一日の陽性者は一千人を超えることが確実で(当時は約五百人)、「東京の医療はもたない」と危機感をあらわにした。厚労省アドバイザリーボードの脇田座長も、このままでは「一般の手術や救急医療の受け入れを制限しなければいけなくなる」と警鐘を鳴らしている。
 医療担当者の提言は重く、また道理がある。まさにわが国は、「医療崩壊」の瀬戸際にある。
 深刻な事態に際し、菅首相は「静かなマスク会食」などというのんきな態度で、西村経済財政・再生相は「神のみぞ知る」、加藤厚労相も「(GoToで)感染が広がったという報告は受けていない」と、無責任な発言に終始した。
 怒りなしに聞くことはできない。
 菅政権は二十一日になって「GoTo」の「運用見直し」の方針を表明したが、対象地域は都道府県知事の判断をもとに選定する見通しで、ここでも地方に責任を転嫁している。
 「GoTo」の本質は、大手旅行会社などへの支援策であり、中小零細業者や個人飲食店への恩恵はほとんどないか、ごくわずかである。感染を広げる「GoTo」ではなく、経営体力が弱い業者への手厚い補償措置こそ行うべきなのだ。
 感染が拡大すれば国民に「自粛」を呼びかけ、国民生活・国民経済に打撃を与え、大企業だけは助ける。政府は、春先のコロナ禍のときと同じ態度を繰り返している。科学的知見をないがしろにした、無責任きわまりないものである。
 その最たるものは、未だにPCRなどの検査数が圧倒的に少ないことである。
 多くの識者が指摘しているように、感染拡大を防ぐ最大の方策は、PCR検査を中心とする検査拡大と、陽性者の人権に配慮した上での入院(軽症者はホテルなどへの収容など)である。
 医療・介護関係者を中心に毎日百万人の検査を行っても、年間に必要となる経費は四兆円以下である。これは「GoTo」の二倍強の予算だが、防衛予算(約五兆三千億円)よりもかなり少ない。
 検査数を増やしてこそ感染拡大を抑え、経済や国民生活への打撃を最小限にすることができる。
 検査数が少ないことは、感染状況を把握していないと同義であり、政策の根拠がないことを意味する。安倍前政権、菅政権によるデータ無しの「国民任せ」は、断じて許しがたい。
 住民の命を守るべき存在である自治体の対応はどうか。
 東京都は感染状況を最高レベルに引き上げ、小池知事は「五つの小」などと呼びかけた。吉村・大阪府知事にいたっては、今更のように「マスクの着用の徹底」に言及するなど、総じて後手に回っている。
 しかも、コロナ患者が「重症」とされる基準は、国と自治体で大きく異なる。東京都では、人工呼吸器を装着するなどして初めて「認定」される。他方、国の基準では、集中治療室(ICU)などに入室すれば「重症」とされる。現在、東京の基準では重症者は四十人弱だが,国の基準では二百人近くに達する。
 小池知事のパフォーマンスが目立つ東京都だが、その実、住民の健康に無配慮極まりない態度である。
 一方、民間医療機関、一部自治体は政府の体たらくを懸命にカバーし、国民の命と健康を守る努力を重ねている。東京都世田谷区は独自にPCR検査を拡充している。単独で一日数千件の検査を行っている医療機関さえある。
 政府は、こうした努力を支援せず、自らの責任を果たしていない。菅政権は、感染症対策の妨害物であり、打倒する以外にない。そのための国民運動の形成が課題である。  (O)


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