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2020年10月5日号 1面

共産党/
「有事の米軍来援」認める

中国敵視で米日を助ける堕落

 共産党の志位委員長は九月二十三日、テレビ番組で、「日本防衛」を口実とした米軍の出動を認める発言を行った。

「安保条約5条で対応」
 これは、出演者に、共産党がめざす「野党連合政権」において「尖閣諸島に中国軍が軍事侵攻した場合、米国に安保条約に基づいて出動を求めるのか」と問われたことによる。
 志位委員長は「日本が有事という事態になった場合は、安保条約第五条で対応する」と、明言した。
 安保条約第五条は、日米安全保障条約の「中核的規定」(外務省)で、「米国の対日防衛義務」を定めたものである。
 これに沿って「対応する」ことは、「有事」の場合、共産党は米軍の来援を求め、自衛隊と米軍が共同して、中国と戦争を行うことを宣言したことにほかならない。
 また、米国によるアフガニスタン戦争に対し、「テロ特措法」で自衛隊を派遣したのと同じような事態に直面した場合について問われ、志位委員長は「あらかじめよく相談していきたい」と、明言を避けた。
 安保条約全体についても、「安保条約の廃棄を、政権に求めたり、持ち込んだりしない」と明言した。「野党連合政権」においては、「安保破棄」はもちろん、「役割縮小」さえ主張しないということである。
 共産党は、形ばかりとはいえ維持してきた「独立」の気概さえかなぐり捨て、日米同盟、米国の「核の傘」の下にわが国をとどめることを認めるに至ったのである。
 これは、わが国労働者と自主・平和を願う人びとへの裏切りであり、闘いの妨害であると同時に、帝国主義の支配と闘う全世界人民・被抑圧民族、中小国への裏切りでもある。

中国包囲網への加担強める
 こんにち、衰退する米国は世界支配を維持するため、中国への全面的な攻勢を強めている。
 米国は、通商・投資、南シナ海などの安全保障、台湾問題、新疆ウイグル自治区や香港などの「人権」問題など、ざまざまな口実を設けて、数々の制裁措置を発動している。米国は「共産党政権の打倒」を公然と掲げ、国際的包囲網をつくろうとしている。
 コロナ禍によって、米国の対中攻勢はいちだんと激烈なものとなった。米国は「中国ウイルス」などと、中国への非難を強めている。これは、自国における感染拡大の責任を転嫁するものでもある。
 安倍前政権はこの米戦略に付き従い、政治軍事大国化を推し進めてきた。日米に加え、オーストラリアやインドなどを中国包囲網に取り込もうと、「自由で開かれたインド太平洋」構想を進めた。
 菅政権も、同じ道を進もうとしている。
 米中間を軸に、軍事的緊張が高まっている。
 「米中対立」といわれるものは、米国が自国の衰退を巻き返すために引き起こしたものである。だが、わが国支配層やマスコミ、さらに共産党も「中国の方がアグレッシブ(攻撃的)に覇権を振るっている」(志位委員長)などと、アベコベに描いている。
 この認識の下、共産党は「赤旗」などで、中国への非難をエスカレートさせている。  二〇一六年、アジア政党会議の経過を理由に「覇権主義」と批判し始めて以来、最近では、香港や新疆ウイグル自治区などの「人権」問題での中国非難を、連日「赤旗」で繰り返している。その非難は、米国における人権問題への批判以上に、念入りで執拗(しつよう)である。
 香港問題では、香港がアヘン戦争で英国に奪われた植民地であったという歴史的事実に触れず、中国を一方的に非難している。
 これは、米国による中国包囲網の形成に手を貸し、同じ陣営に加わることを意味するものである。
 志位発言は、共産党がこれらに輪をかけ、安保条約を事実上認めるほどに転落したことを示している。

「連合政権」のため譲歩
 共産党の堕落は、今に始まったものではない。
 共産党は一九九七年の第二十一回党大会で、「保守との連立による政権入り」を決定した。
 これに基づき、「安保棚上げ論」や国旗国歌法への事実上の協力、「有事の際の自衛隊活用」発言など、急速に「現実路線」を深め、堕落した。
 今回の表明は、この延長線上にあるものだが、それだけではない。
 共産党は、選挙による「野党連合政権」を夢想し、立憲民主党に「政治決断」を求めている。だが現在までのところ、選挙協力はともかく、共に連合政権をつくる「合意」には至っていない。
 共産党は政権入りを野党、さらに米国やわが国支配層に認めてもらうため、対米・対中問題での「踏み込み」を強化しているのである。
 「これだけ譲歩したのだから、政権入りを認めてください」ということである。
 共産党は今年一月の第二十八回大会で、中国を念頭に、綱領に「大国主義・覇権主義」などと明記した。三月には「野党連合政権」では日米安保条約破棄などを「棚上げする」ことを、立憲民主党に表明した。
 さらに、菅政権発足時の首班指名で、枝野・立憲民主党代表代表に投票した。他党候補への投票は二十二年ぶりである。これを根拠にして「政権交代が現実的な目標として見えてきた」(志位委員長)などと宣伝している。
 「赤旗」での中国への非難も、この一環である。
 だが、共産党の「野党共闘」は、小沢一郎氏を中心に一九八〇年代末から策動されてきた「保守二大政党制」の枠内のものである。
 保守二大政党制は、内外政策、とくに日米同盟で共通の二大政党が政権をキャッチボールするもので、財界による政治支配を安定化させるためのものである。
 発言の翌日、別の番組に出演した志位委員長と小沢氏は、異口同音に「野党連合政権」を唱えた。両氏は医療政策や非正規雇用問題などについて菅政権を批判したが、示し合わせたかのように、外交・安全保障問題については一言も言及しなかった。
 「野党連合政権」が外交問題で菅政権への対抗軸を持っていないことを自己暴露しただけではない。小沢氏が、共産党を追い込まないよう「配慮」したのだろう。
 このような「野党連合政権」に期待することはできない。
 志位委員長は「共産党自身が伸びていかないといけない」などと言う。そう言わないと、党員と支持者に「示しが付かない」のであろう。だが、共産党自身の「野党連合政権」での浮上には限界がある。立憲民主党などに政策的譲歩を重ねることは、わが国労働者階級、民族への裏切りである。共産党にとっても、下部を中心に深いジレンマに襲われることになる。
 闘う人びとは共産党への幻想を捨て、選挙による「野党連合」ではなく、広範な諸階層が連携した大衆行動による政治変革の道をめざさなければならない。
 労働組合は、中心勢力としての役割を果たすことが求められている。 (O)


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