ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2020年9月15日号 1面

「一人勝ち」の米巨大IT企業
世界経済・社会の隅々まで支配

資本主義の限界示す
GAFAの独占

 GAFAと称される米巨大IT(情報技術)企業の影響力は、経済のみならず、個人の生活や政治など、世界の隅々に浸透している。
 GAFAとは、グーグル(アルファベット)、アマゾン、フェイスブック、アップルの総称である。その力の源泉は、圧倒的な「富の独占」である。
 グーグルは、インターネット検索と広告、スマートフォン(スマホ)約二十五億台に搭載されたOS(基本ソフト)開発の最大手である。衛星写真や地図サービスでは、すべての国の情報を網羅しつつある。
 アップルは四社中唯一、スマホ、パソコンなど、ハードウェアの開発を行っている。スマホの累計販売台数は約十四億台で、アプリ販売、楽曲ダウンロードなどのサービス分野の収益も拡大しつつある。
 フェイスブックは、SNS(交流サイト)の最大手で、全世界で二十四億人を超えるユーザーを有している。収益基盤は、ユーザーの書き込みに照応した広告である。
 アマゾンは、インターネット通販で世界最大、米国でのシェアは約五割の企業である。配送センターはロボットで徹底的に合理化されている。
 グーグル、アマゾン、アップルは、それぞれ独自のAI(人工知能)を開発、激しく争っている。
 GAFAの時価総額の合計は約四百三十兆円に達し、四社だけで、日本の全上場企業の時価総額の七割に達する。これは、日本の国内総生産(GDP)の半分を優に超える規模に達している。昨年十〜十二月期のGAFAの最終利益は、約四兆七千億円もある。これは、日本の自動車七社の総計約八千九百億円(昨年七〜九月期)の五倍以上にもなる。
 GAFAの急成長に対して、日本のIT企業の凋落(ちょうらく)は、目をおおうばかりである。
 しかもGAFAは、登記上の本社を全世界のタックスヘイヴン(租税回避地)に置くことで、納税義務から逃れている。
 現在、世界のわずか八人の大金持ちの合計資産は下位三十六億人のそれと等しいとされる。GAFAからはアマゾン創業者のベゾス氏(第五位)、フェイスブックのザッカーバーグ氏(第六位)の二人がランクインしている。
 GAFAの支配力の及ぶ範囲は、直接の事業分野だけではない。GAFAは、その技術力を生かした「プラットフォーマー」として、自動車や住宅事業など、多様な分野に進出し、影響を与えている。
 たとえば、アマゾンのウェブサービスは、多くのIT企業のビジネス基盤となっている。実際、二〇一九年八月、このサービスに障害が起きたことで、日本のバーコード決済サービスやポイントサービス、スマホゲームなど、多くのサービスが一時停止に追い込まれた。アマゾンなしには成り立たない企業、サービスが多いのである。
 GAFAは事実上、世論誘導を行う独自の手段も有している。
 グーグルに批判的なウェブサイトは、同社の検索にヒットしないことがある。いわゆる「グーグル八分」である。同社の検索が圧倒的なシェアを占めるこんにち、このようなサイトは社会的に「存在しない」扱いになるのである。また、グーグル、アマゾン、アップルは映像配信サービスを手がけており、アップルはオリジナル映画も制作している。当然、各社の事業に批判的な内容のコンテンツは配信されない。
 GAFAは、世論誘導のプラットフォーマーとなる可能性もある。
 GAFAが収集する膨大なデータ(ビッグデータ)は、全世界の人びとの個人情報を集積し、「カネの元」としている。データは「二十一世紀の石油」とも言われ、今後、企業の競争力の源泉になるとされる。GAFAは、ここでも世界を支配している。
 これは、個人情報が世界的規模で漏えいする危険性と背中合わせである。フェイスブックは米国で八千七百万人もの個人データを流出させた。
 しかも、GAFAの本拠地である米国は「愛国者法」によって、インターネット上の監視と情報収集が合法化されている。GAFAが持つ膨大なデータは、米帝国主義がいつ、どこでも悪用できるのである。
 中国を「監視社会」と非難する米国だが、自らが行っていることは、それ以上である。
 GAFAは、巨大な資金を元手に、政治的影響力も行使している。米国においては、民主党、共和党の両方に多額の政治献金を行っている。日本においても、四社の日本法人すべてが経団連に加盟している。
 こんにちGAFAは、さまざまな国の規制当局と衝突している。とくに、税制や独占禁止法をめぐる攻防が、欧州連合(EU)などで激化している。
 だが、先に挙げた政治的影響力と技術革新の早さゆえ、規制は常に緩く、後追い的にならざるを得ない。
 一方、データや知的財産権をめぐる、米欧間の競争と対立が、GAFAへの態度に反映してもいる。
 こんにちの経済・社会においてデジタル革命がもたらし、今後も加速するのは、雇用の喪失と価値が低いコンテンツの過剰、独占的なIT企業と大規模な租税回避、そして何より、わずかな大金持ちと大多数の貧困層の「格差」拡大、階級矛盾の激化である。
 結局のところ、インターネットなど技術革新の成果を、わずかな数の資本家が握るのか、大多数の労働者が握るのかということこそ、根本問題として突きつけられているのである。資本主義の私的所有は、技術革新とGAFAに代表される新たな企業の台頭によって、限界に達しているのである。
 全世界の労働者、とくに先進国の労働者階級が政治権力を握ってこそ、先端技術を大多数の国民の生活向上と国民経済発展ために有効活用できるのである。(O)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2020