2020年8月5日号 3面・解説
陽性者数は、四月の緊急事態宣言中を大きく超える勢いで増え続けている。感染者は東京圏だけでなく、愛知、大阪・兵庫、福岡、沖縄など全国に広がっている。 一般的に感染症が流行しやすい秋・冬を待たず、すでに全国的な「第二波」ともいえる深刻な事態である。 沖縄県は県独自の緊急事態宣言を発出することに追い込まれ、岐阜県も「第二波非常事態」を宣言した。飲食店への営業時間短縮要請などを要請した自治体もある。 こうしたなか、安倍政権は無策、愚策を続けている。 その最たるものが、二十二日に始まったGoToトラベル事業である。「旅行業界の救済」などが名目だが、実態は、パックツアーをはじめとする大手旅行会社による旅行商品の販売促進策である。これは、感染を全国に拡大させる愚策にほかならない。 併せて、検査陽性者の一時滞在施設としてホテル・旅館などの確保を急いでいる自治体にとっては、確保を著しく困難にさせるものである。 ある研究によると、PCR検査数を大きく増やし、併せて陽性者を収容する医療機関や一時滞在施設を大幅に拡充させれば、「休業要請」など経済活動を休止させる措置は不要であるという。実際、米国ニューヨーク州やドイツなどでは、現在、これに近い措置が実施されている。中川・医師会会長も、「迅速にPCR検査を広く行う」ことを提唱している。 ところが、日本のPCR検査数は世界で百五十位以下と、未だに先進国にあるまじき水準のままである。三〜四月には、全国で、症状が出ても検査を受けられないという悲惨な事態が続出した。結果、少なくない感染者が、検査さえ受けられないまま死に追いやられた。コロナ感染が分からないまま、心臓疾患などを直接の原因に死亡した患者も多い。 この状況は、現在でも基本的に変わっていない。安倍首相は四月上旬、PCR検査数を二万件以上に引き上げると表明したが、こんにちなお、それは達成できていない。政府の無策ぶりは、目を覆うばかりである。 しかも、安倍首相は新規感染者数が最高に達しても、GoToトラベル事業に厳しい声が上がっても、さらに、介護施設や保育所などに新たに約八千万枚の布マスクを配布する「時期遅れ」の施策が撤回に追い込まれても、一切、説明責任を果たしていない。 いくつかの自治体、首長は、このような国の態度に不満を強め、独自の検査体制強化に踏み出している。「誰でも、いつでも、何度でも」検査が受けられる体制づくりを打ち出した世田谷区の姿勢は、この点で、一定評価できるものである。 安倍政権は検査拡充など、国民の命を守るための施策を行わないどころか、既存の法律の拡大解釈によって、国民生活をさらに追い込んでいる。 政府は、風俗営業法(風営法)に基づく警察官の立ち入り調査を悪用し、「感染症対策」を店舗に強要している。本来、感染症対策の充実は、政府や自治体が積極的な助成措置を行うべき問題である。警察権力を動員しての「対策」強要は、経営への圧迫にほかならず、非民主的な強権措置、治安弾圧の強化にほかならない。 このほか、政府は、建築衛生法を悪用しての飲食店、劇場などへの立ち入り検査、食品衛生法に基づく保健所職員による調査なども検討しているという。 さらに政府・与党、小池都知事や吉村・大阪府知事らは、休業要請に従わない店舗などの罰則規定を盛り込む新型インフルエンザ対策特別措置法の改悪案を喧伝している。無策・愚策を法改悪と拡大解釈で乗り切ろうとする姿勢は許し難い。 安倍政権を打ち倒してこそ、国民の命と健康を守ることができるという事実は、ますます鮮明である。(O)
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