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2020年7月25日号 1面

G20、コロナ禍になすすべなし
国際協調崩れ、各国は
「自国第一」に

労働者階級が前進する好機
 二十カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が、七月十八日に開かれた。
 採択された共同声明では、世界経済について「より大きな下方リスク」を指摘し、「利用可能な政策手段を引き続き用いる。財政・金融政策は必要な限り実施され続ける」とした。
 世界経済の大きなリスク要因となっている発展途上国の債務問題については、G20で合意済みの返済猶予(二〇二〇年末まで)の「延長の可能性を検討する」とした。
 デジタル課税では合意できず、「次回会合で報告書を提出する」とした。
 また、ロンドン銀行間取引金利(LIBOR)に代わる基準金利についても決まらなかった。
 コロナ禍によって、世界資本主義の危機が浮き彫りとなり、さらに深刻化するなか、世界の支配層は協調どころか、分断を深めてあがいている。
 〇八年のリーマン・ショックを機に、G20は国際協調のための主要機関となった。米国をはじめとする帝国主義が衰退し、中国など新興諸国が台頭するなか、帝国主義諸国によるG7による危機対応は不可能だったからである。
 各国の膨大な財政出動・金融緩和と、G20による国際協調によって、世界経済が破局に至ることを辛うじて押しとどめることができた。
 だが、危機が深まるなか、G20による協調は、時を置かずに困難となった。各国は国内対策に手いっぱいだからである。リーマン後に各国が合意した「経常収支など複数の項目」を「相互に監視する」という構想はすぐに吹き飛び、国際通貨基金(IMF)の改革は未だに合意に至らない。諸国は通貨戦争で、互いに危機を押し付け合うありさまであった。一部の国は内戦、暴動が頻発、騒乱状態となった。
 危機が深まるなか、「格差」はますます耐え難く、労働者階級・人民は「闘わねば生きられない」事態に立ち至ったからである。
 人工知能(AI)などの急速な技術革新も、企業間、国家間の争奪をますます激化させる状態となった。資源をめぐる争奪も、厳しさを増している。
 世界資本主義は末期症状を呈し、資本主義の生産様式の変革期に入ったのである。
 一七年、「米国第一」を掲げたトランプ政権が登場し、世界支配のための強引な巻き返しを始めたことは、諸国間の矛盾をいちだんと激化させ、崩れつつあった国際協調をさらに弱体化させることとなった。
 トランプ政権は、購買力平価ベースの国内総生産(GDP)で世界一となった中国を抑え込むため、通商問題を皮切りに、安全保障を含む全面的な攻勢に打って出た。米中間は、広義の戦争状態に突入した。
 さらにトランプ政権は、第二次世界大戦後、自らがつくりあげた国際諸機関から脱退、あるいは悪罵を投げつけるなど、「秩序」をぶち壊し始めた。
 コロナ禍以前に、国家間の対立は激化し、国際協調はすでに「風前の灯火」となっていた。
 コロナ禍とそれに対する各国の対応によって、国際協調の実効性はほとんど失われた。
 諸国はますます広がる感染症の対策に追われ、金融緩和の再開と膨大な財政出動を余儀なくされているが、子細に見ると対策はバラバラである。米国は膨大な財政出動を続け、欧州連合(EU)は復興基金を準備している。中国は感染拡大をひとまず抑えたかに見えるが、現在は洪水対策に追われている。
 国際通貨基金(IMF)は成長予測の下方修正を続けており、G20が想定する「V字回復」は希望的観測でしかない。
 ロックダウン(都市封鎖)によって経済は「急停止」し、膨大な労働者が失業させられ、人民の生活はますます耐え難い状態に追い込まれている。
 トランプ政権は、従来にも増して中国への攻撃を強めている。香港や新疆ウイグル自治区など「人権」を口実に制裁規定を含む国内法整備、華為技術(ファーウェイ)など中国企業からの調達を禁じる新規制、削減する駐独米軍の一部のアジア配備検討などである。コロナ禍のさなか、世界保健機関(WHO)を「中国寄り」などと非難、脱退を通告した。
 こうした中国包囲網は、同盟国である欧州諸国の多くにさえ受け入れられていない。欧州との間では、通商、デジタル課税などの矛盾を抱えたままである。
 米国は、ロシア、イラン、ベネズエラ、朝鮮民主主義人民共和国などへの包囲と制裁も強めているが、これらの諸国は屈しない態度を堅持している。
 他方、コロナ禍下で苦難の状況にある新興諸国は、官民の債務をさらに増大させており、債権国である帝国主義、投資家への不満を高めている。
 世界の主要矛盾である、米国を中心とする帝国主義諸国と、それ以外の中小諸国との間の矛盾は、ますます激しい。
 こんにち、世界の支配層は分裂し、帝国主義諸国間も矛盾を深めている。まさに、歴史的激動期、「戦争を含む乱世」である。
 リーマン・ショック後の世界資本主義を「救った」、国際協調という要因は崩れたのである。
 全世界の労働者階級・人民、被抑圧民族、中小国にとって、米帝国主義の世界支配を打ち破って前進する好機である。黒人虐殺を契機に米国で高揚している運動は、その先駆けとなり得る闘いである。
 最先頭で闘う歴史的任務を負っているのは、全世界の労働者階級である。とくに、先進国労働者が各国で政権をめざして闘い、世界政治に登場してこそ、危機の打開が可能となる。
 労働者階級が各国でマルクス・レーニン主義の革命政党を建設し、鍛えなければならない。わが党はその一翼を担い、戦略的に奮闘する。(O)


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