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2020年7月15日号 2面・解説

コロナ感染が再拡大

検査増と医療体制整備を急げ

 新型コロナウイルスの感染が、全国的に再び増加している。安倍政権は楽観論を振りまいているが、すでに「第二波」といってもおかしくない事態である。ウイルスの活動が活発化するとされる秋・冬に向け、安倍政権の対策は遅々としている。これでは、国民の命と健康を守ることは不可能である。医療体制の抜本的強化を求める、国民運動が求められている。
 東京都では、十二日までの一週間で新規感染者が一千人を超えた。埼玉県、神奈川県、千葉県を含む首都圏、さらに大阪府でも感染者が増加している。再選直後の小池都知事は「さらに警戒」と繰り返し、大阪府は独自基準に基づく「黄信号」の発信に追い込まれている。
 菅官房長官らは「検査の攻めの姿勢の結果」「医療提供体制には余裕がある」などと言い、国民のなかに高まっている危機感を和らげようと必死である。再度の「緊急事態宣言」発令に追い込まれ、経済に甚大な悪影響を与えかねないことを恐れているのである。

一向に増えない検査数
 新型コロナウイルスの特徴は、症状がない感染者がウイルスを媒介する点である。
 ゆえに検査数を増やし、感染者数とその広がりを可能な限り正確に把握してこそ、根拠のある政策を打ち出すことが可能になる。
 だが、わが国のPCR検査数は、多い日でも八千件程度である。これは、五月の平均三千件以下よりは増えたが、安倍首相が四月に約束した「一日当たり二万件」には遠く及ばない。日によるバラツキも大きく、三千件以下しか検査されていない日もある。厚労省は、五月中旬に「一日当たりの検査能力が約二万二千件に達した」と発表したが、現実の検査数は、最大時でもその三分の一程度しか行われていないのである。
 国際的な比較においても、日本の人口当たりのPCR検査数は、イタリアの二四分の一、韓国の八分の一程度のままなので、およそ先進国の水準ではない。
 現実には、未だに、発熱などの明確な症状が出ない限り検査が行われないことがほとんどである。多くの感染者とその家族、同僚が、自覚さえないまま、命の危機にさらされ続けているのである。
 検査体制は三月時点からほとんど前進しておらず、「攻め」などと粋がる安倍政権の態度はデタラメきわまりない。

検査を支える体制も不十分
 検査数を増やすには、検査を行う機関を増やし、技師を確保しなければならない。
 この点でも、安倍政権の対策は不十分である。従来に比して簡易な検査を認可したことで、検査を受け入れる機関は増えた。だが、本来求められる水準には遠く及ばない。フランスで採用されている自動検査機の購入を補助したり、中国やドイツで行われているプール方式(複数の検体をまとめて調べる)を認可・推奨するなど、可能な対応策をすべて尽くしているとは到底言いがたいのである。
 検査数の増加と併せて、感染者を(人権に十分配慮した上で)隔離する施設を確保する必要がある。一般に、感染症対策を行った病床と、無症状者向けの施設(ホテルなど)である。
 最大の感染者がいる東京都のコロナ患者向け病床は三千三百床ほどであるという。現在の入院患者は約六百五十人だが、現在のペースで感染者が増えていけば、そう楽観できないことは明らかである。
 しかも、現在の(判明している)感染者数は、都内だけでも地域により大きく偏在している。もっとも多い新宿区は約一千百五十人に対し、八王子市は七十人である。病院や施設は、都心部だけにあればよいわけではない。
 全国にもれなく、施設を確保することが急がれる。

医療機関・従事者支援せよ
 さらに重大なことは、感染症対策を先頭で担う、医療機関や従事者への支援が圧倒的に不足していることである。
 安倍政権は、第一次、第二次補正予算で医療機関・従事者への支援策を打ち出したが、きわめて不十分である。たとえば、「コロナ外来を行っている医療機関に二十四時間当たり十九万七千円の補助金」「医療従事者一人当たり一日三千円の補助」などである。
 だが、コロナ患者の診療を行っている医療機関は、その大小を問わず、感染症対策のための負担に苦しんでおり、経営難は増している。すでに、全国のコロナ受け入れ病院の七八・二%が赤字に転落しており、東京都では八九・二%が赤字である。
 医療労働者の状況も危機的である。経営難を理由に、夏のボーナスを昨年より引き下げた医療機関は、全体の三割以上に達する。東京女子医大では、ボーナスが「ゼロ」となった。これにより、全職員の約二割に当たる、看護師約四百人が退職を希望しているという。
 そもそも、わが国では医師数が絶対的に不足している。日本の人口一千人あたりの医師数は二・四人で、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均より一人以上少ない。
 政府が続けてきた、医師数抑制政策を転換させなければならないのである。
 医療が財政再建の標的にされた結果、集中治療用病床や感染症用病床の不足も圧倒的に不足している。保健所も統廃合されてきた結果、数も人員も足りない。  こうした状況を放置しては、コロナだけでなく、わが国医療全体の危機に直結しかねない。救える命が失われる事態は、避けなければならない。
 安倍政権は、医療機関・従事者への支援策を抜本的に強化すべきである。

自治体への支援を強化せよ
 もう一つは、自治体への交付金を充実させ、対策を助けることである。
 安倍政権は、補正予算で各自治体に地方創生臨時交付金の交付を決めた。だが、実際の交付は九月にズレ込む見通しである。
 これまた遅い。すでに東京を中心に再感染が拡大するなか、これでは実態にふさわしいだけの額が交付されるかどうか、きわめて不安である。
 二十二日に始まる「GoToキャンペーン」は時期尚早で、その予算は医療・検査体制の充実や地方への補助に回すべきである。観光業界などへは、別途、経営支援を急ぐべきである。
 「休業要請に応じて十日以上休業した店舗に五十万円の協力金」(東京都豊島区)、「中小企業や個人事業主に一律三十万円を支給」(千葉県成田市)など、自治体独自の支援策も各地で行われている。
 感染者数、産業構造や住民の構成などは自治体によって大きく異なる。自治体が、地域の特殊性に合致した支援策を行うことは、きわめて重要である。
 本来、感染症の予防に関する経費は、国が全部または一部を負担しなければならないと定められている(感染症予防事業費等国庫負担)。だが、国の支出割合の規定はあいまいで、自治体が支援をしたくても財源が足りない事態である。「地方財政法の原則がないがしろにされている」(片山元総務相)のである。
 住民が安心できる感染症対策と生活保障、中小零細企業が存続できる最低限の支援策は、全額、国の責任で実施すべきである。その上で、自治体の創意工夫が必要なのである。
 自治体も、公立病院の民営化や独立行政法人化などを直ちにやめ、公費で施設・人員を拡充すべきである。都道府県と政令市が設置する地方衛生研究所・養成所の職員数も同様である。コロナ禍のなか、都立病院の独法化を決めた小池都政の責任はきわめて重大で、撤回すべきである。

緊急事態宣言に反対する
 枝野・立憲民主党代表代表など野党の一部は、緊急事態宣言を東京を中心に再発令するよう求めている。
 安倍政権は、休業要請や自粛要請などを国民各層に強いる一方、それに伴う補償は微々たるもので、しかも遅い。政府は国民に「新しい生活様式」を強いているが、こちらはまったく補償がない。国民生活は、もうガマンの限界なのだ。
 再発令は「コロナによる死」は減らすかもしれないが、「経済悪化による死」を劇的に増やすことにつながろう。野党は、この事態をどう考えているのか。
 人権を制約し、国民に犠牲を強いる緊急事態宣言の再発令に反対しなければならない。
 検査と医療体制への抜本的テコ入れを急ぐことこそ、国民の命と健康を守る最善策である。
 何より、医療体制整備をないがしろにし、無策をきわめている安倍政権を打ち倒し、国民の命と健康を守る政権を樹立しなければならないのである。
 国民的運動を盛り上げなければならない。労働組合は、その先頭で役割を果たすべきである。(O)


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