ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2020年6月5日号 1面

全米で暴動拡大
「息ができない」

支配層の犠牲押し付けに大反撃
「コロナ後」階級闘争の先駆け

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)は、世界経済、社会、政治を大きく変え、世界資本主義の危機を浮き彫りにさせている。
 その影響は、一握りの大資本家・投資家から、大多数の労働者に至る各階級に対して「平等」ではない。
 膨大な労働者が職を奪われ、中小零細企業は倒産と廃業に追い込まれている。大多数の労働者・人民は、命と健康の危機にさらされ続けている。一方、資本家・投資家は、危機の中でますます肥え太っている。
 全世界の人民は、大資本家・投資家と代理人である政府・政党に対して、怒りと不満を高めている。
 コロナ禍によって、世界資本主義はいちだんと末期症状を呈している。現在はまさに、かつて封建社会が資本主義社会に移行した時期と同様の、「次の時代」への「生産様式の移行期」なのである。
 全世界の労働者階級にとって、自らが政治を握るべき時代が近づいている。現在は、その「夜明け前」である。
 五月末に始まった米国労働者・人民の決起は、全世界で断固たる闘いが前進するであろう「コロナ後」の先駆けともいうべき闘いである。世界資本主義の「総本山」で、断固たる闘いが始まったのである。
 われわれは、この闘いを断固支持する。

内戦状態に近い米国
 米国は、さながら「内戦状態」にある。
 五月二十五日、ミネソタ州ミネアポリスで黒人青年が警官に虐殺されたことを契機とする暴動・抗議デモは、全米百四十以上の都市に広がっている。
 米国での黒人を主体とする暴動は初めてではない。一九六七年のデトロイト暴動、九二年のロサンゼルス暴動など、何回も起こっている。
 現在進行中の事態の真の背景は、米国の史上空前ともいえる「格差」である。
 コロナ危機以前においても、米国黒人世帯の資産は白人世帯平均の一〇分の一しかない。一握りの白人大資産家との「格差」は、さらに著しい。世界の大富豪の上位八人のうち、六人が米国の白人である。
 こうした「格差」は、新型コロナウイルスのパンデミックとトランプ政権の対応策によって、より深刻化している。
 米国のコロナ感染者は百八十五万人、死者も十一万人に達し、全世界のそれぞれ約三割を占めている。
 ここでも、人種間、所得間の「格差」は著しい。
 新型コロナによる黒人の死亡率も、白人の二・四倍と、格段に高くなっている。ワシントンでは、黒人は人口の四五%だが、死者数では何と八〇%である。ニューヨーク州でも、人口の九%の黒人が死者数では一八%を占め、ヒスパニックと合わせると、人口の二〇%が死者数では三二%に達する。
 大きな原因は、黒人やヒスパニックなどのマイノリティの多くが、食品サービス、小売り、医療、零細企業など、低賃金で「接触」が不可避な労働環境にあるからである。しかもかれらは、コロナ禍で真っ先に職を奪われた。黒人の失業率は一六・七%(四月)で、白人より三ポイント近くも高い。
 こうした「格差」が、マイノリティ、貧困層の怒りと不満を著しく高め、行動に促しているのである。  警官に絞め殺された黒人青年の「息ができない」という叫びは、全米のマイノリティ、貧困層の命と生活への叫びでもある。
 全世界の労働者がこの声と闘いに共感を寄せているのは当然のことである。連帯デモは、英国、ドイツ、オランダ、ニュージーランド、オーストラリアなどに広がっている。

弾圧強める支配層
 この事態に対し、米支配層は武力による弾圧に踏み込んでいる。
 警察はゴム弾や催涙ガスで抗議する人びとを強制排除し、ミネソタ州をはじめ、十六の州・特別区で計一万人以上の州兵が動員された。第二次世界大戦以来初めての事態である。トランプ大統領は武力弾圧を公言、「軍がいつでも応援できる」と、陸軍の動員と人民の殺りくさえ示唆(しさ)している。
 トランプ大統領は、「左」派団体「アンティファ」を「テロ組織」に指定する方針を示した。何の「根拠」も示さぬ指定は、すべての反政府勢力へのどう喝にほかならない。
 二〇〇一年の同時多発テロ事件後、米政府は「対テロ戦争の前線」として、地方警察の武装力をいちだんと強化した。〇八年のリーマン・ショック後には、陸軍実働部隊を南北戦争以来百五十年ぶりに米本土に駐留させた。
 米国では、年間一千人もが警官に殺されているのである。
 国民監視も格段に強化されている。同時テロ後に成立した「愛国者法」は恒久化され、監視があらゆる範囲に広がった。
 ミシガン州では四月末、銃で武装したトランプ支持団体が、ロックダウン(都市封鎖)に抗議して州議会議事堂に突入した。この連中は放免されたが、警官の横暴に抗議する素手の人民には軍隊を差し向ける。これこそ、米国流「民主主義」の正体である。
 かつてレーニンは、国家は「階級対立の非和解性の産物であり、階級支配の機関」であり、「国家権力の本質は警察や軍隊などの暴力装置」と述べた。米国においてもこれが真理であることが証明されている。
 事態を打開できるのは、全世界の労働者、とりわけ先進国の労働者階級である。労働者階級が各国でマルクス・レーニン主義党を鍛え、労働運動を革命的に発展させ、実力で政治権力を握ってこそ、「次の時代」を切り開くことができるのである。
 全世界の労働者階級、被抑圧民族が大きな激励を受けるなか、闘いの意義を低めているのが、日本共産党である。機関紙「赤旗」は、闘いを「人種差別抗議」としか報じていない。かれらが熱心に報じるのは、米多国籍企業が「(差別反対の)声明をSNS上に次々と発表しています」といったことである。共産党はむしろ、香港問題にかこつけて中国を非難することに血道を上げている。
 人民の荒々しい抵抗よりもお上品な「声明」を重視し、米国とわが国に支配層におもねって中国非難の大合唱に加わる、共産党の合法主義、議会主義は、ますますきわまっている。このような堕落した政党に、わが国労働者階級の未来を託すことはできない。
 わが党は、全世界労働者階級の前進の一翼を担い、安倍政権を代理人とする多国籍大企業の支配を打ち破り、アジアと共生する国民大多数のための政権を樹立すべく、戦略的な展望の下で奮闘する。共に闘おう。(O)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2020