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2020年4月15日号 1面

「コロナ禍」が
資本主義の危機を加速


労働者は歴史的情勢に備えよう

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)がますます広がっている。世界の感染者数は百八十万人を突破、死者も十一万人を超えた(四月十三日現在)。

資本主義の末期症状深まる
 「コロナ禍」は、世界資本主義の危機が深まるなかで発生した。
 二〇〇八年に発生したリーマン・ショック以降、世界経済の危機は起伏を伴いつつも深刻化し、「相対的安定期」はなくなった。経済の成長率はいちだんと鈍化し、官民の債務は史上空前の規模に拡大、新たな金融危機の襲来が不可避的となっていた。
 大多数の労働者階級・人民が貧困状態にたたき落とされる一方で、巨大なグローバル企業を中心に、一握りの経営者・投資家はますます富を独占している。世界の八人の大富豪の持つ資産が、同じく貧困層三十五億人と等しいほどに、世界の「格差」は極度に開いている。
 全世界の人民は不満を強め、各国内での階級矛盾は深まっている。
 欧州を中心に、大衆の不満に応えない政党への支持は失墜、代わりに、いわゆる「ポピュリズム勢力」が台頭した。米国でも「米国第一」を掲げたトランプ政権が登場、衰退の巻き返し策を強引に進めている。
 さらに人民は、フランスや中南米諸国などを中心に、果敢なデモやストライキに立ち上がっている。とくに中南米の一部の国は、緊縮財政策への反発を直接の契機として、騒乱状態となっている。
 こうした階級矛盾の激化を背景に、国際関係も厳しさを増している。
 衰退を早める米帝国主義は、台頭する中国に対して攻勢を強化している。攻勢は通商問題だけでなく、安全保障や「人権」問題なども含んだ全面的なもので、米国の戦略的狙いは中国の体制転覆である。
 米国は、ロシア、イラン、ベネズエラなどへの敵視と包囲も強化している。
 英国の欧州連合(EU)離脱、中東地域の緊張など、紛争と騒乱は後を絶たない。
 さらに、人工知能(AI)や5G(次世代通信規格)など、急速な技術革新が、多国籍企業と国家間の争奪戦をいちだんと激化させている。
 地球温暖化を中心とする環境問題、相次ぐ自然災害も、経済や政治を大きく制約する深刻な問題となった。
 二十カ国・地域(G20)による「国際協調」も、もはや崩れている。
 危機の深刻さを背景に、今年一月にスイスで開かれた世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)では、「持続可能で結束した世界」がテーマとならざるを得なかった。
 これは、こんにちの資本主義がすでに「持続可能」なものではなく、諸国家が「結束」してもいないことの自己暴露である。
 資本主義はまさに末期症状を呈し、世界は歴史的激動期にある。それは、私的所有に基づく資本主義という生産様式自身が限界に達し、「次の社会」への移行期という意味での変動期なのである。

コロナ禍は歴史を促進
 「コロナ禍」は、こうした世界資本主義の危機をいちだんと深め、「次の社会」への移行を促進させるに違いない。
 十三世紀のペストの流行は、封建領主を没落させ、中世社会の崩壊を早めた。幕末のコレラ流行も、倒幕気運の醸成に一役買った。今回も、似たようなことが起きる可能性はある。
 少なくとも、今回の危機が「リーマン・ショック以上」とする評価は、すでに定着しつつある。
 「コロナ後」の経済・社会・政治、そして人心は、それ以前と同じものではあり得ない。
 新型コロナウイルスだけでなく、ここ数年のパンデミックとその被害の深刻化は、資本主義のグローバル化の産物でもある。
 だがこんにち、米トランプ政権を筆頭に、世界で「自国第一主義」や移民排斥の気運が高まり、国家間対立が深まっている。食料輸出を規制する動きも広がっている。パンデミックは、「自国第一主義」と国家間矛盾をさらに激化させる方向に働くだろう。
 米帝国主義は「コロナ禍」のさなかでも、「武漢ウイルス」などとパンデミックの責任を中国に押し付けている。台湾外交支援法を成立させるなど台湾問題で揺さぶり、通信大手ファーウェイ(華為技術)への制裁を強化している。
 米中の覇権争奪はますます強まり、戦争の可能性をはらみつつ激化するに違いない。
 平和を求める全世界の労働者・人民は、帝国主義、その筆頭の米国と闘わなければならないのである。

労働者は歴史的役割果たせ
 「コロナ禍」はいまだ進行中の危機で、そのさまざまな被害をもっとも受けるのは、労働者階級を中心とする貧困層である。
 「(コロナウイルスで)金持ちも貧乏人も同じように苦しむというでまかせは、否定しなければなりません。この戦いの最前線にいる人たち、バスの運転手、看護師や介護施設・病院のスタッフ、商品を棚に並べる小売店の人たちは、この国の労働人口の中で不均衡に低賃金の人たちです」と報じた英国BBC放送は、この点で正しい。
 「皆でガマンして…」などという、「コロナ禍」を口実とする「挙国一致」の思想攻撃と闘わなければならないのである。
 国際労働機関(ILO)によると、「コロナ禍」によって、世界の労働者十二億五千万人(全労働人口の三八%)が解雇や給与削減に直面している。労働時間の短縮も、一億九千五百万人が職を失うのに等しいほどに深刻である。
 これらは「氷山の一角」にすぎず、しかも、現在の惨禍は「まだ序の口」である。
 悲観することはない。危機打開の展望がないのは、支配層、帝国主義者の側である。労働者階級にとっては、現状は厳しくても、新しい時代の「夜明け前」なのである。
 労働者・人民の断固たる行動だけが、新しい時代を切り開くことができる。
 「コロナ禍」のさなかでも、イタリアやスペイン、米国、フィリピンなどの労働者が、国や経営者に健康対策を求めて闘いに立ち上がっている。
 労働者階級自身が立ち上がり、マルクス・レーニン主義の革命政党を建設し、政治権力を握って、その力で「次の社会」、すなわち社会主義社会をめざさなければならない。
 わが国においては、米戦略と結び付いてアジアの政治軍事大国をめざす安倍政権を打ち倒さなければならないのである。(O)


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