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2020年4月5日号 1面

国民への現金給付を直ちに行え
「自粛」要請には休業補償せよ
首切り・賃下げを絶対に許すな
大企業増税・五輪中止で財源を
自治体は独自の住民支援を行え


命と健康脅かす安倍政権を倒せ
政府の緊急事態宣言に反対する

 安倍首相は三月二十八日、会見を開き、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた経済対策について「リーマン・ショック時の経済対策を上回る」ものにすると表明した。自民党も三十日、経済対策の提言案を取りまとめた。
 その内容は、対策を三つに分け、当面の「感染拡大抑制期」への対策として、減収となった個人・世帯、中小企業、個人事業主に自己申告方式で現金を給付するなどだが、給付金額は明記されていない。「反転攻勢期」には観光業や飲食業などを支援する「クーポン券」発行など。「中長期」の対策としては、在宅勤務(テレワーク)の導入促進などで構成されている。
 詳細は近々まとめられる予定というが、財政措置二十兆円、事業規模六十兆円となる見込みである。
 安倍首相は会見で、国民への一律の現金給付を否定した。消費税減税案は見送られた。また、「自粛」要請などで経営に大打撃を受けている飲食業者などへの補償を否定した。
 労働者をはじめ国民諸階層の生活と営業は、アベノミクスの下で苦境にあった。コロナ恐慌はそれに追い打ちをかけている。  国民生活はいちだんの危機に瀕し、中小零細事業者、さらに芸術・文化も「破滅」の縁にある。
 免税店大手ラオックスが「希望退職」を募集、全日空は客室乗務員六千四百人に一時帰休させる方針である。老舗旅館やクルーズ運営会社、食堂経営会社などが次々に倒産、労働者は失業に追いやられている。
 三月末までに解雇・雇い止めされた労働者は全国で一千二十一人に達する(厚労省)。だが、これは「氷山の一角」にすぎない。
 中小零細企業からの政府系金融機関や信用保証協会への資金繰り相談は、三月末までで二十七万件にも達している。だが、融資や保証が承認されたのは、わずか七万五千件にすぎない。
 安倍政権は、緊急に行うべき新型コロナウイルスの感染拡大防止策についても、PCR検査に高いハードルを設け、事実上、「軽症者」を医療から排除している。クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」への検疫は完全に失敗した。科学的根拠のない「一斉休校」は、教育現場と自治体を大混乱に陥れた。
 こうした、諸外国に比しても「遅すぎ、少なすぎる」対策によって、国民の苦難は増すばかりである。感染者は死に追いやられ、企業は倒産、労働者が職を失うなか、それを止める前に「一世帯にマスク二枚配布」など、国民を愚弄(ぐろう)するものである。
 一方で、「新型インフルエンザ等対策特別措置法」の改悪だけは、表明からわずか十日ほどで法案を成立させた。まさに「国民の命は後回し」である。
 政府は直ちに、国民への直接現金給付を行うべきである。本紙の「一人月十万円以上を無期限で給付」という主張(前号参照)は、諸外国の例を見れば、決して「度外れた」要求ではない。
 営業や興行の「自粛」要請には、補償や助成が伴わなければならない。自民党案ではキャッシュレス決済ポイント還元の拡充・延長や「クーポン券」などが掲げられているが、こんな回りくどいことでは埒(らち)があかない。観光業や飲食業など事業者への対策は「反転攻勢期」などと先送りせず、休業補償と資金繰り支援、債務減免などを行うべきである。
 これらの財源は、大企業、投資家への増税、内部留保への課税、東京五輪の財源を回すことで賄える。そもそも、大企業の蓄えた富は、勤労国民が稼ぎ出したものである。この緊急時に吐き出させるのは、当然の権利である。
 また、「中長期」対策としてのテレワーク導入や遠隔医療の促進などは、経団連をはじめとする財界の規制改革要求そのものである。国民の苦難をまず助けるべきであるにもかかわらず、財界の要求を忍び込ませる姿勢は許し難い。
 安倍政権の姿勢が、国民の命を健康を守るものでないことは、誰の目にも明らかである。このような政権を打ち倒してこそ、国民の命を守ることができる。
 地方自治体の態度も問われている。
 小池・東京都知事は「自粛」要請の際、何らの補償もないまま、飲食業など特定の業種を名指しして「感染源」扱いした。感染症対策の拠点である都立病院を独法化させる予算も可決させた。このような無責任な首長は、取り替えなければならない。
 自治体は国の対応を待たず、早急に可能な支援策を行うべきである。
 労働組合は、国民生活を守る闘いの先頭に立とう。心ある政治家、学者・文化人、青年学生は共同で闘おう。(O)


主要国のコロナ対策(一部)

ドイツ 従業員5人以下の事業者に3カ月で最大108万円を給付。予算は500億ユーロ(約6兆円)
フランス 最大約18万円を支給
米国 成人1人あたり約13万円を支給。予算規模は2兆2000億ドル(約242兆円)。
カナダ 1人あたり月約15万円を給付、学生ローンの返済を3カ月猶予。
韓国 7割の世帯に約9万円(4人家族の場合)を支給。
英国 フリーランス労働者に所得の8割(約33万円を上限)を3カ月間補償。
オーストラリア 企業に従業員1人あたり約10万円を支給。期限は6カ月で予算は約8兆6000億円。
ニュージーランド 企業に従業員1人あたり約3万8000円を4カ月間支給。
日本 各世帯にマスク2枚配布。


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