ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2020年4月5日号 2面・解説

新型コロナ拡大の影響・政治

世界の激変は加速、大動乱へ

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)はますます拡大している。経済への影響は前号で触れたが、この間、事態はますます深刻化している。これを背景に、政治の分野でも、大きな変化が進行しつつある。


 経済面の危機の深刻化は、企業倒産や業績悪化などを通じて、労働者・人民に失業や収入減少、労働条件悪化などをもたらす。労働者・人民の生活と営業はますます悪化し、困窮化が進む。一般的には、階級矛盾がいちだんと深まることは不可避である。

「コロナ前」から危機
 コロナ恐慌が始まる以前から、世界の労働者階級・人民の生活は著しく悪化していた。
 二〇〇八年のリーマン・ショックに始まる金融危機によって、日米欧は軒並みマイナス成長に転落した。失業率は米欧の多くの国で一〇%を突破し、給与引き下げ、労働条件悪化も大きく進んだ。
 各国支配層は、危機対応策として、政策金利をゼロさらにマイナスに引き下げ、資産買取による量的緩和政策に踏み込んだ。また、多額の財政出動を行って景気対策を行った。二十カ国・地域(G20)サミットなどで「国際協調」も図った。
 こうした対応が、破局に陥ることを押しとどめた。
 財政出動で大企業は救済され、金融緩和政策による資産価格の高騰で大企業、投資家は巨利を得た。だが、大多数の国民には恩恵はなかった。また、ソブリン(国家債務)危機後の財政再建策は、南欧などの労働者に増税などの犠牲を押し付けた。
 各国政府による金融政策・財政政策は、大多数の国民から、一握りの大企業・投資家への所得移転政策であった。結果、世界のわずか八人の大金持ちが保有する資産が、全世界人口の下位半数と等しいほどの「格差」が生み出された。
 さらに急速な技術革新、国際競争の激化に対応すべく、多国籍企業は「黒字下のリストラ」を進めた。
 数々の「痛み」を受けた人民は、各国政府への不満と怒りを著しく高めた。
 不満は、中東など一部の国では内戦や暴動となって政権を打ち倒した。議会制の下でも政権交代が相次ぎ、いわゆる「ポピュリズム勢力」が欧州を中心に勢力を伸ばした。米国でも「米国第一」を掲げたトランプ政権が誕生、世界支配を維持すべく強引な巻き返し策動に打って出ている。
 昨年秋以降、フランスや中南米諸国などで激しい反政府デモが巻き起こった。一部の国では、人民が直接民主主義による政治への発言を強めているのである。

コロナ恐慌で矛盾激化
 ここに、コロナ恐慌が襲いかかっている。
 新型コロナウイルスのパンデミックによって経済が急激に「停止」し、労働者は生活の糧を奪われ、あるいは失業し、労働環境の著しい悪化に直面している。中小商工業者は事業を行えず、運転資金にさえ事欠く実情である。
 労働者・人民、低所得者ほど、感染リスクが高いのが実態である。医療・介護を筆頭に、清掃・郵政・小売など多くの労働者が、日々、感染に怯(おび)えながら働くことを強いられている。イグレシアス仏副首相でさえ、「(ウイルスは)国境を区別はしないが、悲しいことに社会階級の違いは区別する」と述べる通りである。
 他方、「都市封鎖」に追い込まれた諸外国では、金持ちたちは大挙して田舎の別荘に逃げ出した。日本でも例外ではない。
 各国中央銀行はまたも金融緩和政策に踏み込み、大規模な財政出動も始まったが、国民生活の悪化を埋めるには到底足りない。
 全世界の労働者・人民の生活は、仮に感染を免れたとしても、コロナ恐慌によっていちだんと追い込まれている。全世界で、労働者への解雇、賃下げなどの攻撃が吹き荒れている。
 米国では、三月二十一日までの一週間で、新規失業保険申請件数(季節調整済み)が三百二十八万三千件に達した。前週の一一・六倍に急増し、リーマン・ショック直後(〇九年三月)の六十六万件も大きく超えた。さらに翌週には六百六十四万八千件と、さらに二倍になった。
 膨大な労働者が街頭に放り出され、生活の糧を奪われているのである。
 日本でも、企業倒産や「希望退職」という名の首切が相次いでいる。
 厚労省のまとめでは、三月末までに解雇・雇い止めを受けた労働者は全国で一千二十一人に達する。だが、これは「氷山の一角」にすぎない。
 コロナ恐慌はまだ始まったばかりで、人民の苦難も、率直に言って「これからが本番」である。
 当面は非常事態宣言などで抑え込まれているとしても、全世界の人民は、早晩、さまざまな形で、自国政府に要求を突きつけることになる。政府が応じなければ、直接民主主義となることもまた、避けがたい。
 パンデミックのさなか、スペインのメルセデス・ベンツの労働者は安全確保のための操業停止を求めてストライキに突入した。英国の郵便労働者も山猫ストに入り、ドイツでは保育労働者がストで闘っている。米国では「家賃不払い運動」が全土に広がりつつある。
 歴史的変動期、労働者・人民が闘わざるを得ない情勢が始まっている。

各国政府は手を縛られる
 各国内での階級矛盾の激化は、政府の内外政策を大きく制約する。
 各国政府に余裕があれば、財政政策などで国民の不満を抑え込むことは、ある程度可能だろう。
 だが、前号で述べたように、金融政策も財政策もすでに余裕はない。各国支配層には階級を緩和させる手段が、ますます限られるようになっている。
 それゆえ、世界の支配層は自らの政治支配を維持するためにキバを研ぎ、弾圧手段を整備している。
 フランス・マクロン政権によるデモ規制法のほか、インドネシアや中南米諸国ではデモへの弾圧が強化されている。非常事態宣言を発令した国では、封鎖のために軍隊と武装警察を出動させ、人民への監視体制を極度に強化している。
 安倍政権が成立させた新型コロナ特措法も、この一環である。特措法は国民の権利を大きく制約し、何らの補償もない悪法で、事実上、憲法改悪の先取りである。特措法は、全日建連帯労組関西生コン支部に対する、事実上の「共謀罪」適用ともいえる弾圧と、軌を一にするものである。
 政府が情報技術(IT)企業に、個人の位置情報や検索傾向などの提出を求めたことも重大である。
 わが国支配層は、コロナ危機を「好機」とばかり、特措法のさらなる改悪、さらに、憲法改悪を含む非常事態法制制定策動を強めるだろう。国民への監視も強化される。
 労働者階級・人民は、各国支配層による「軍事監獄」化策動を警戒し、闘わなければならない。

国際関係はさらに厳しく
 各国内での階級矛盾の激化によって、諸国間の関係も、いちだんと厳しさを増すことになる。各国政府が、対外関係で「弱腰」ととられるような態度をとれば、国民の不満が高まり打ち倒されてしまいかねないからである。
 すでにリーマン・ショック後のG20などの国際協調の仕組みは、共同声明が発表できないなどの形で崩れつつあった。とくに、「米国第一主義」を掲げたトランプ米政権は、第二次世界大戦後、自らがつくりあげた国際秩序を次々とぶち壊した。主要な「攻撃対象」は台頭する中国だが、欧州諸国や日本などの同盟国も例外ではない。
 パンデミック下でも、各国の対立は強まっている。
 トランプ政権は、パンデミックの責任をことあるごとに中国に押し付けている。先の主要七カ国(G7)外相会議でも、「武漢ウイルス」との明記を求める米国によって、共同声明さえ合意できない。
 さらに米国は、通信大手ファーウェイ(華為技術)への制裁を強化、台湾の外交的孤立を防ぐことを目的とした「台湾外交支援法」を成立させ、台湾海峡にもミサイル駆逐艦を派遣して中国をけん制した。
 ワクチン開発をめぐっては、トランプ政権が、ドイツの医薬品企業二社への資金提供と見返りに「独占権」を求めた。ドイツは「(ドイツ企業は)売り物ではない」(アルトマイヤー経済エネルギー相)と激しく反発している。
 コロナ恐慌下、各国は表面的には「協調」する態度でだが、実態はこのようなものである。
 国家間関係はさらに厳しさを増し、戦争の可能性を含んで推移する。
 世界の労働者階級、とくに先進国労働者は、米国を筆頭とする帝国主義、自国支配層と闘い、政治権力をめざさなければならない。わが国では、安倍政権を打ち倒す闘いを強めなければならない。(K)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2020