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2020年4月5日号 3面・解説

イタリア、イランでのコロナ拡大

米国、金融資本の責任は重大

 新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の深刻度は、各国、各階級に平等ではない。
 ここでは、イタリアとイランを取り上げる。  イタリアは、コロナウイルスへの感染者が世界第二位の十万五千七百九十二人(四月一日現在、以下同)、死亡はもっとも多い一万二千四百二十八人である。イランは、感染者が第七位の四万四千六百六人、死亡二千八百九十八人だ。
 イタリアをめぐっては、マスコミは「高齢人口の多さ」ばかりを報道する。確かに、全人口に占める六十五歳以上の割合は二二・六%で、欧州連合(EU)加盟国中ではもっとも高い。また、北部の工場などには、中国人労働者が多い。
 これは決定的な理由ではない。何より、イタリアは慢性的な医師・看護師不足の状態にある。推計では、医師五万人、看護師五万人が不足していたという。
 最大の理由は、EUの財政基準を満たすために、緊縮財政政策を続けてきたことである。EU加盟国では、単年度の財政赤字を国内総生産(GDP)の三%以内、累積債務を同六〇%以内とすることが義務づけられている。リーマン・ショック以降も、一三年の「財政協定」などで基準の強化が図られた。基準を満たしていない場合、経済財務相理事会からチェックを受ける。同理事会の警告に従わなければ、最大GDPの〇・五%の「罰金」を取られる。
 イタリアは、EU加盟国中では最悪水準の財政赤字を有していた。リーマン・ショック後の財政出動で財政はさらに悪化、一一年にはGDPの一一六%以上に達し、国際通貨基金(IMF)の監視下に入った。同時期、ギリシャなども国家破綻の縁にあった(ソブリン=国家債務危機)。
 IMF、欧州金融資本は、首相にモンティ元欧州委員会委員(ゴールドマン・サックス元顧問)を担ぎ出した。米投資銀行の役員が、直接に政治を握ったのである。モンティ政権が行ったことは、年金制度改悪、間接税増税など、総額四百七十七億ユーロ(約五兆六千億円)もの緊縮財政策である。
 この緊縮策の一環として、一二年以降、七十五億ユーロ(約八千七百八十億円)もの医療費が削減された。助成金削減も、州を基礎とする医療サービス水準を低下させた。
 こうした措置で、五年間で約七百六十もの医療機関が閉鎖に追い込まれた。医師の高齢化も進んだ。イタリアの医師の約五五%が五十五歳以上で、日本の三七%と比べても異常に高い。
 イタリアは「コロナ以前」から「医療崩壊」に近い状態だった。こんにちの苦難の責任は、国際金融資本とその手先となったイタリア支配層にある。
 イランについて、マスコミはこれまた「集団礼拝の影響」などと報じている。原油採掘プラントに中国人が多いという報道もある。これらも一面にすぎない。
 イランは、一九七九年のイスラム革命以降、米国から敵視と制裁を受け続けている。二〇〇六年からは、「核開発」を口実として制裁が強化された。オバマ政権下の「核合意」で緩和に向かうかと思えたが、トランプ政権は一八年、「合意」から一方的に離脱し、イラン制裁を再強化した。
 イランとの商取引を行う会社も制裁対象となる。金融機関は米国の制裁対象になることを恐れてイランとの代金決済を拒否している。そのため、本来は「人道物資」として制裁の対象外であるはずの医薬品さえも、輸入が滞っている。
 一三年当時、米シンクタンクのウィルソン・センターでさえ「米国の制裁によって、イランへの薬品と医療器具の供給が滞っている」と述べていた。これが、トランプ政権下の制裁強化でさらに悪化した。
 ここに、パンデミックが襲いかかった。
 イランのラフマニ駐日大使も、米国の制裁を「医療テロ」と非難している。
 トランプ政権は今になって、イランへの「支援」を申し出ているが、制裁を解除するのが先である。
 米国の狙いは、反米国家であるイランの体制を転覆することである。近年では、イランが中国、ロシアとの関係を強化していることを口実に、敵視を強化しているのである。
 イランでの感染拡大は、米帝国主義による敵視と制裁の責任である。(K)


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