2020年2月15日号 1面
世界資本主義の危機が深まるなか、一月末、スイス東部ダボスで世界経済フォーラム(WEF)年次総会(ダボス会議)が開かれた。今年のテーマは、「ステークホルダー(利害関係者)がつくる、持続可能で結束した世界」であった。 だが、「ステークホルダー資本主義」やSDGsでは、現在の危機を解決することはできない。 リーマン・ショック後の危機はさらに深まっている。世界経済の成長率はいちだんと鈍化し、新たな金融危機の襲来が不可避的となっている。 米国が中国に仕掛けている全面的な攻勢、中東地域の緊張、英国の欧州連合(EU)離脱など、国際関係も厳しさを増し、各国間の矛盾も激化している。 さらに、5G(次世代通信規格)や人工知能(AI)などを中心とする急速な技術革新も、企業と国会間の競争をいちだんと激化させている。 ダボス会議の参加者が懸念するように、地球環境問題も、世界経済の重大なリスクとなってきた。中国で発生した新型コロナ肺炎も、アジアを中心に世界経済に冷水をあびせている。 最新技術を握る巨大なグローバル企業を中心に、一握りの経営者・投資家が世界の富を独占している。対して、大多数の労働者階級・人民は貧困状態にたたき落とされ、「格差」は耐え難いまでに開いている。 これを背景に、各国内での階級矛盾は深まる一方である。 欧州を中心として、大衆の不満に応えられない旧来の二大政党(保守政党と社会民主主義政党)は信頼を失墜させた。代わりに、いわゆる「ポピュリズム勢力」が台頭し、一部の政治勢力は政権に参画する勢いを見せている。米国でも「米国第一」を掲げたトランプ政権が登場、衰退の巻き返し策を強引に進めている。 不満を高めた人民は、中南米諸国やフランスなどを中心に、デモやストライキに立ち上がっている。とくに中南米の一部の国は、国際通貨基金(IMF)による緊縮財政策への反発を直接の契機として、騒乱状態となっている。 こんにちの世界は、単なる循環的な景気後退期にあるだけではない。 私的所有に基づく資本主義という生産様式自身が大きく揺らぎ、限界に達し、「次の社会」への移行期、歴史的変動期が到来しているのである。 労働者階級の闘いこそ肝心 ダボス会議では、「ステークホルダー資本主義」や地球環境への「配慮」さえ、合意できなかった。トランプ米大統領は「世界中に米国より良き場所などない」などと誇り、環境に懸念する声を「悲観論」などと一蹴(いっしゅう)した。欧州の環境活動家らが強く反発したのは当然である。 「次の社会」は自然に到来することはない。危機の打開を、現在の支配層に期待することもできない。ダボス会議の宣言は、「企業は未来世代のために地球の管財人のように振る舞う」などと述べた。どうして、われわれの未来を企業に委ねなければならないのか。労働者には、自らの未来を決める権利と能力がないとでもいうのか。 高額所得者への増税など、所得の「再分配」を説く「論者」もいる。だが、大企業や投資家の支持を得て存続している現在の諸政府が、そのような政策を行うだろうか。現在の絶望的なまでの「格差」がなくなるほどの「再分配」が行われることはあり得ない。 勤労人民の果敢な行動なしには、わずかな「再分配策」でさえ実行されないことは確実である。世界の支配層、帝国主義者、なかでも最大の帝国主義で、戦後の資本主義を規定してきた米国と闘わなければならないのである。 支配層が「資本主義の再定義」が迫られているこんにち、解放をめざす労働者階級にとっては「夜明け前」である。 抑圧された労働者階級・人民自身が立ち上がり、マルクス・レーニン主義の革命政党を建設し、政治権力を握って、その力で「次の社会」、すなわち社会主義社会をめざさなければならない。そのためには、わが国においては、対米従属で多国籍企業のための政治を打ち破らなければならないのである。(O)
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