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2019年12月15日号 1面

自衛隊の中東派兵を許すな 
中東諸国・人民の信頼失うもの

 安倍政権による軍事大国化反対

 安倍政権は中東への海上自衛隊と哨戒機の派兵を強行しようとしている。年明けに護衛艦を送り出し、哨戒機はソマリアで「海賊対処」にあたっている機体を活用するという。活動範囲はオマーン湾、バベルマンデブ海峡の東側を対象とする。
 わが党は、自衛隊の中東派兵に断固として反対する。
 ホルムズ海峡を航行する日本関係船舶は、年間延べ三千九百隻に達する。派兵は、これを「防衛」することを口実としている。
 だが、船舶を所有・運航する事業者団体である日本船主協会でさえ、「防衛」を求めていない。
 政府は「中東情勢の緊張」とも言う。
 誰が緊張をもたらしているのか。中東、とくにホルムズ海峡周辺の緊張は、米国が二〇一八年五月、「イラン核合意」から一方的「離脱」を表明したことによる。
 「緊張緩和」というのであれば、トランプ政権に「核合意への復帰」を求めるべきであろう。これは、イラン政府のみならず、多くの中東諸国・人民が要求していることでもある。
 わが国船舶の安全を確保したいのであれば、自衛隊派兵による「防衛」ではなく、中東諸国・人民との友好関係を発展させることこそ道理である。そうしてこそ、原油などの資源も安定的に取引できるのである。
 安倍政権はこうした本質的解決方向ではなく、「派兵ありき」である。しかも、「調査・研究目的」などという口実で、国会承認、果ては閣議決定さえないまま派兵を強行しようとしている。それにもかかわらず、万が一、日本関係船舶が襲撃された場合、「海上警備行動」を発令し武器使用に踏み切るというのである。派兵期間も「一年ごとの更新」で、事実上、際限なき派兵が可能である。
 この道は、中東の緊張をいちだんと高めるものである。わが国は、中東の紛争の当事者となる可能性さえある。資源の安定確保どころか、わが国の平和と安全を脅かす、危険きわまりないものである。
 米国は「有志連合」(番人作戦)によって、イラン敵視策動を強化している。
 トランプ政権は一八年、「核合意」から一方的に離脱した。さらに、弾道ミサイル開発の停止など、「核合意」よりも厳しい要求をイランに突き付けている。
 また、サウジアラビアで石油タンカーが破壊された事件を「イランが背後にいる」と決めつけた。イラクでのロケット弾攻撃に関しても、イランの関与を示唆(しさ)した。
 これらを口実として、米国はイランへの再制裁を強化した。空母とミサイル駆逐艦のペルシャ湾への派遣に続き、米軍一千五百人を中東に追加派兵することも決めた。
 これらの狙いは、中東への支配強化である。併せて、イランとの関係を強化している中国を抑え込んで、衰退を巻き返すことである。来年の大統領選挙に向けての支持を固める狙いもある。
 「有志連合」には、オーストラリア、バーレーン、サウジアラビア、アラブ首長国連邦、英国、アルバニアの七カ国が参加する予定である。フランスやドイツなどは米国と距離をおいている。米国は数十カ国の参加を想定していただけに、この規模にとどまったことは、米国の国際政治上の影響力低下を示している。
 安倍政権はこの「有志連合」には加わらないとしている。「だからよい」などとはとても言えない。むろん、「有志連合」への参加は中東諸国・人民と敵対する道である。
 だが、わが国「独自」の意志でイランを威嚇することも許し難いことである。
 歴代自民党政権でさえ、イランや中東諸国との関係は重視されてきた。
 今年は、日本とイランの国交樹立九十周年に当たる。日本にとって、イランはかつて第三位の原油輸入相手国(一九九五年〜二〇〇七年)であり、全輸入量の一割前後を占めていた。米国に「配慮」して最近は減ったが、それでも第六位である(一七年)。
 対米従属の枠内ではあったが、一定の「独自性」が維持されてきたのである。ところが今回、安倍政権は派兵を決定した。イランに近い「ホルムズ海峡は含めない」などというのは、言い訳にもならない。
 安倍政権が狙うのは「強い日本」の実現であり、わが国の政治軍事大国化である。
 すでに安倍政権は、防衛予算を毎年、過去最高額を更新させるほどの大軍拡を推進してきた。新たな「防衛計画大綱」と中期防衛力整備計画(中期防)、武器輸出三原則の廃止、特定秘密保護法、南西諸島への自衛隊重点配備など、策動には際限がない。地上配備型迎撃ミサイルシステム(イージス・アショア)導入、将来戦闘機の独自開発にも踏み込み、宇宙、サイバー、電磁波など新領域での軍事態勢を整備しようとしている。
 今回の中東派兵は、その危険な道をさらに進めるものである。
 公明党の態度は、欺まんそのものである。「慎重な検討」などとは言うが、「平和の党」の看板がデタラメであることは、ますます明白である。
 自衛隊の中東派兵に反対し、アジア・中東の平和と共生をめざす、各界の共同した闘いを呼びかける。(O)


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