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2019年11月25日号 1面

志位・共産党委員長/
香港問題で反動的談話 
「野党共闘」のため
中国敵視に加わる

 中国への内政干渉をやめよ

 共産党の志位委員長は十一月十四日、「香港での弾圧の即時中止を求める」なる談話を発表した。
 香港問題は中国の内政問題であり、内戦干渉は許されない。談話は「人権」を掲げつつ、米国と安倍政権の対中敵視に唱和し、対中国政策で安倍政権と同様の議会内野党と「共闘」する意図からのものである。
 共産党の反動的態度を暴露し、打ち破らなければならない。


香港は英国に奪われた
 香港では、中国本土への犯罪者の引き渡しを定める「逃亡犯条例」を直接の契機として、大規模な大衆行動が続いている。背景には「格差」や金融センターとしての地位低下など、香港社会の抱える深刻な矛盾もある。
 香港における問題は、中国の内政問題である。米国をはじめとする他国は、「民主」などを口実にした干渉を直ちに中止すべきである。
 香港は、一八三九年に始まったアヘン戦争で英国に割譲された。この戦争は、英国がインドで生産したアヘンを、清国が輸入禁止としたことを口実に仕掛けられた。「歴史上最も汚い戦争」といわれるほど、帝国主義の醜悪さ、残忍さが示された戦争である。
 中国が列強の植民地化されるなかで、香港は一九九七年まで「九十九年の租借」とされた。香港の現状自身が、こうした帝国主義による侵略と植民地支配、民族分断の結果にほかならないのである。
 中国と英国が香港返還で合意した「中英共同声明」において、香港の資本主義制度は「五十年間維持」とされた(いわゆる「一国二制度」)。この期限は二〇四六年だが、中国がこの期限終了を前に、主権回復の措置を進めることは独立国として当然のことである。

今なお残る治外法権制度
 香港には今なお、英国による植民地支配の制度が厳然として存続している。
 わが国をはじめ、米欧のマスコミが決して報じない事実がある。それは、香港終審法院(最高裁判所)の裁判官のほとんど(十七人中十五人)が、英国をはじめとする外国人であるという事実である(主席法官のみ、中国の全人代常務委員会が任命する)。
 香港においては、英国による治外法権(まさに植民地遺制)が今なお存続しているのである。香港終審法院が十一月十八日、デモ隊の覆面を禁じる香港政府の規則を「違憲」と断じたのは、主にこのためである。
 中国政府が、現行制度の枠内で不平等な実態の改善をめざすのは当然で、「逃亡犯条例改正案」はその一環という側面がある。
 この制度は、一九八四年の「中英共同声明」と香港特別行政区基本法によって合意されたものである。当時、中国はまだ国力が弱く、改革開放制度によって香港を通じて外国資本を呼び込むもくろみもあり、このような不平等な制度に合意せざるを得なかった。
 こんにち、習近平政権は、「建国百周年」である二〇四九年に、米国を抜く大国となることをめざしている。中国にとっては、アヘン戦争以降の「屈辱の歴史」から完全に脱却することでもある。

干渉強化する米帝国主義
 こんにち、米国は台頭する中国を抑え込み、共産党政権の転覆を策動している。
 ポンペオ米国務長官は、香港情勢に「重大な懸念」を繰り返し表明している。
 米議会上院は十一月十九日、香港のデモを擁護する「香港人権・民主主義法案」を可決した。下院ではすでに可決済みで、大統領が署名すれば発効する。
 同法は、香港の自治を年次報告書によって検証し、これに基づき、米国が採用している金融やビザ発給など香港の各種優遇措置を見直すというものである。米大統領が、中国や香港当局関係者への制裁措置を科すことも認めている。
 香港問題を口実とした対中圧力は、中国製品への広範な追加関税、成長戦略である「中国製造二〇二五」の廃棄要求、南シナ海や台湾問題での軍事挑発、新疆ウイグル自治区やチベットでの「人権」問題など、米国の大規模で執拗(しつよう)な対中攻勢の一部なのである。米中関係は、すでに広義の「戦争状態」にある。
 香港の運動にも、米国の各種団体による「支援」が入っている。
 現在の香港情勢は、こうした環境下で起きている。
 だが、わが国「左派」の中にも、香港問題での対中敵視に唱和する動きがある。日本共産党が典型である。

綱領案とさえ矛盾する
 志位委員長の談話は、(1)香港政府による弾圧は「絶対に容認できるものではない」、(2)弾圧は「中国の最高指導部の承認と指導のもとに行われている」、(3)「根本的責任は、中国政府とその政権党にある」、その態度は「民主主義と人権を何よりも尊重すべき社会主義とは全く無縁のもの」で、共産党は「中国指導部が、香港の抗議行動に対する弾圧を即時中止することを強く求める」というものである。
 志位談話は、ただ、「民主主義と人権」を口実に、一方的に中国と香港政府を非難している。そこには、香港への植民地支配という歴史的事実も、米帝国主義による中国への敵視政策も、まったく登場しない。
 志位談話は米国の策動に触れないことで、米国、さらにわが国安倍政権による中国敵視の世界戦略を免罪し、それに加担するという犯罪的役割を果たしているのである。
 ところで共産党はかねてより、植民地支配の打破の意義を高く評価している。十一月初旬の第八回中央委員会において提案された「綱領一部改定案についての提案報告」でも、「植民地体制の崩壊が『世界の構造変化』というべき最大の変化だった」、この変化が「二十一世紀のこんにち、平和と社会進歩を促進する生きた力を発揮し始めている」としている。
 だとすれば、中国が植民地遺制と闘い、打ち破ることは、本来、「平和と社会進歩を促進する」ことではないのか。
 志位談話は客観的にはこれと矛盾する立場である。

「野党共闘」のため敵視
 共産党が今回の談話を発表した狙いは、「野党共闘」を進めて政権にありつくためである。
 共産党は同じ八中総で、「二〇二二年までの野党連合政権樹立」を掲げた。
 だが、「野党共闘」の最大の対象である立憲民主党は保守政党で、基本的に「何よりも香港の自由と民主、人権と尊厳が守られること…」(蓮舫副代表)という立場である。国民民主党も同様である。
 志位談話は、これらの議会内政党と連携して政権の座にありつき、かつ「反中国」的気運におもねって票をかすめ取る狙いからのものである。
 中国敵視に加わり、米国とわが国支配層を利する共産党に、徹底的な批判を加えなければならない。(O)


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