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2019年11月15日号 2面・解説

「ベルリンの壁」崩壊30年

 「勝利」うたった
資本主義は末期症状

 一九八九年十一月九日、東西を隔てていた「ベルリンの壁」が崩壊した。世界の帝国主義者、資本家は「勝利」をおう歌したが、つかの間のことにすぎなかった。こんにち、経済危機はいちだんと深まり、政治も不安定を増す大激動の世界となっている。労働者階級が歴史的役割を果たすべき情勢である。


「勝利」おう歌した帝国主義
 「ベルリンの壁」の崩壊を機に、それ以前から揺らいでいた東欧社会主義政権は崩壊し、八九年末の米ソ首脳による「冷戦終結宣言」と九一年のソ連崩壊につながった。
 さらに、米帝国主義は冷戦崩壊を「待ちきれないかのように」イラクを攻撃、「新世界秩序」の名の下で「一極支配」を誇った。
 世界の資本家・投資家には「未開拓」の市場が開け、米国主導のグローバリズムが全世界を収奪した。
 帝国主義者は「歴史の終わり」(フランシス・フクヤマ)などと、資本主義の「勝利」が永遠に続くかのようなイデオロギー攻撃を強めた。
 旧ソ連・東欧圏という「新市場」を得た資本主義は、グローバリズムの下、労働者階級・人民への収奪をいちだんと強化し、全世界の資本家はますます肥え太った。
 世界の共産主義運動、労働運動、さらに進歩的運動も、敵のイデオロギー攻勢の前に意志をくじかれ、闘いを放棄する勢力が続出した。

資本主義の危機深まる
 「百年に一度の大津波」と言われたリーマン・ショックは、「勝利」したはずの資本主義の危機を改めて認識させるに十分なものであった。
 こんにち資本主義が「勝利」したわけではないことは、マスコミでさえ言及せざるを得なくなっている。
 先進諸国を中心に、各国支配層は史上空前の金融緩和と財政出動を行った。二十カ国・地域(G20)首脳会議などの「国際協調」も図られ、破局に陥ることは押しとどめられた。
 それでも、成長率は世界的に鈍化したままで、国際通貨基金(IMF)などの見通しは下方修正が続いている。投資は上向かず、消費も増えない。企業は有り余った資金を実体経済に回さず、自社株買いによる株価つり上げや合併・買収(M&A)につぎ込んでいる。
 先進諸国中央銀行の資産規模は著しく拡大し、金融緩和政策はすでに限界に達している。
 膨大な財政出動も限界で、日本では国家債務が国内総生産(GDP)の二五〇%にも達している。ギリシャなど南欧諸国は国家債務(ソブリン)危機に陥った。
 国家だけでなく、世界の民間企業と家計も、空前規模の債務を抱えている。
 官民の債務は、持続不可能なレベルである。国家破綻に陥る可能性がある国は、すでにデフォルト(債務不履行)を宣言したアルゼンチンだけではない。
 急速な技術革新は、諸国・企業間の争奪を著しく激化させている。同時に、従来の資本主義の概念になじまない巨大企業を出現させている。地球環境問題の深刻化も、経済を大きく制約するようになっている。

人民の不満、民主主義も「後退」
 深刻な危機によって、人民は失業、給与引き下げ、増税や社会保障制度改悪などを押し付けられている。各国で階級矛盾が高まり、政府への不満と怒りが著しく増大している。
 「格差」は著しく開き、世界の資産家上位八人は、世界の貧困層約三十六億人とほぼ同等の資産を保有している。
 国民の不満は、中東など一部の国では内戦や暴動となり、政権を打ち倒した。
 議会制をとる米欧諸国においても、政権交代が相次いだ。欧州を中心に既成政党が人民の不満と批判にさらされる一方、いわゆる「ポピュリズム勢力」が台頭している。一部の国では、この勢力が政権与党となっている。「米国第一」を掲げたトランプ政権の登場も、こうした傾向の一部である。
 国家単位でも、中国やロシアといった、ブルジョア民主主義の基準とは異なる国々が政治経済上の存在感を高めている。とくに中国は、購買力平和ベースのGDPで米国をしのぐほどの経済力を有するに至った。
 世界の支配層は、「ブルジョア民主主義の後退」におびえている。
 ポーランド「連帯」の指導者で元大統領のワレサ氏は「あまりにも民主主義を信じすぎていた」などと「後悔」するありさまだ。
 経済だけでなく、資本主義の上部構造としての「ブルジョア民主主義」も、存亡の縁に立たされているのである。
 まさに、資本主義は末期症状を呈している。

米国の対中攻勢が危機加速
 こうした危機を背景に、最大の帝国主義国である米国で登場したのが、トランプ政権である。
 トランプ政権は「米国第一」を掲げ、自国の衰退を巻き返して支配を維持するため、中国に対する攻勢を全面化させている。その領域は経済・政治だけでなく、サイバー空間や宇宙空間を含む安全保障面にまで及び、「新冷戦」と呼ぶ向きもある。
 米国の狙いは、中国を抑え込み、共産党が指導する体制を転覆することである。ペンス副大統領は、二年続けて中国に関して演説し、事実上の「宣戦布告」を行っている。
 とくに、日本と中国を争わせることで、「低コスト」でアジアを支配しようとしている。こうした「勢力均衡策」は、対中東政策でも顕著になってきている。
 トランプ大統領が二〇年の大統領選挙で敗北したとしても、米国の長期戦略に変更はない。
 なり振り構わぬ米帝国主義の巻き返し策は、資本主義の危機を加速させている。アジアの軍事的緊張が高まっている。

嘆くマスコミ論調
 ベルリンの壁崩壊から三十年を期しての、マスコミの論調はどうか。
 「産経」は「民主主義守る決意固めよ」などと、支配層の意図そのままに中国脅威論をあおっている。
 財界の意思を受けてのことだろうが、「日経」は「中国に改革を促し、協調できる体制をつくる知恵」などと願望を述べる。
 「朝日」にいたっては、「格差と憎悪という内なる『壁』と、一国主義という対外的な『壁』を取りのぞき…」などと嘆くのみだ。
 資本主義の将来への確信はすでになく、かれらは途方に暮れるのみである。

打開は先進国労働者の肩に
 社会主義は冷戦崩壊によって後退したが、人類史から見れば一時的なことにすぎない。
 なぜなら、資本主義の危機は大幅賃上げを中心に各国勤労者を豊かにすること、さらに世界に紛争の種を振りまく米帝国主義と闘うことを通じてしか打開できないからである。私的所有を廃絶し、「収奪者を収奪する」ことによってしか解決できない。
 だが、資本家・投資家とその代理人である各国支配層には、労働者を抜本的に豊かにすることは不可能である。かれらは結局、金融緩和を継続してバブルを膨らませ、財政出動で「債務地獄」を拡大させることを余儀なくさせられている。もはや資本主義は、バブル抜きには存続し得ないのである。
 帝国主義者は、戦争以外の打開策を失いいつつある。
 いわゆる「ポピュリズム勢力」は国民の不満を取り込んではいるものの、一時的なことにすぎない。それはかれらが、人民の利益を長期に代弁する戦略を持っていないからである。
 かつて、圧政に虐げられた全世界の労働者階級と被抑圧民族は、帝国主義に敢然と闘いを挑んだ。社会主義の思想は、その中で権威と信頼を勝ち取り、主導的役割を果たした。
 こんにち、とくに先進国の労働者階級が歴史的任務の達成に向けて闘い、自ら政権を握ることこそ、肝心なことである。
 情勢の推移は、米国を筆頭とする帝国主義者が人民に犠牲を押しつけて危機を乗り切るか、労働者階級が政治的に前進するか、その競い合いにかかっている。
 わが国においては、労働者階級が国民諸階層をひきいて日米基軸の政治を打ち破ることが、そのための早道である。
 議会主義の日本共産党は、ベルリンの壁の崩壊に際して「これからが本当の社会主義」などと言った。現実には資本主義への逆戻り、反革命が進行していることをゴマ化し、わが国労働者階級の目を曇らせた。
 このような修正主義者の影響力を一掃し、労働運動を革命的に再生させなければならない。
 労働運動を基礎に、マルクス・レーニン主義の革命政党を建設しなければならない。(O)


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