ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2019年10月25日号 1面

世界大恐慌から90年 
末期症状深める資本主義

 労働者階級は歴史的
任務達成のために奮闘しよう

 一九二九年十月二十四日、米国ニューヨークのウォール街で株価が暴落した。翌週にはさらに急落、最終的には八〇%以上下落した。一週間で吹き飛んだ「株式価値」は三百億ドル、当時の米連邦予算の十年分に相当する。
 未曾有(みぞう)の危機で企業破綻が相次ぎ、米国の工業生産は三分の一以上低下、失業者は一千二百万人・失業率は二五%に達した。
 三二年までに世界貿易は七〇%以上減り、主要国の失業者は五千万人に達した。世界大恐慌である。
 この原因は、直接には、米国での資産バブルである。これに先立ち、米国を中心とする農業恐慌もあった。根本的には、資本主義に必然の過剰生産である。
 帝国主義諸国は、自国人民と植民地に対する収奪のさらなる強化と、それぞれに「経済圏」をつくる「ブロック化」で危機を乗り切ろうとした。一部の国の支配層は、ファシズムによる打開を選んだ。
 この危機は、帝国主義諸国が二つの陣営に分かれての大戦争、第二次世界大戦の原因にもなった。
 それから九十年を経たこんにち、世界資本主義は末期症状を呈している。
 二〇〇八年のリーマン・ショックは、この大恐慌以来の「百年に一度の大津波」として、世界を揺さぶった。
 大手金融機関が連鎖的に経営危機に陥る金融危機が発生、実体経済も、日米欧は軒並みマイナス成長に転落した。金融機関をはじめ経営破綻が相次ぎ、失業率は米欧の多くの国で一〇%を突破した。青年層の失業率が五〇%に達した国もある。新興諸国の成長も大きく減速した。
 この直接の背景も、デタラメな金融商品の普及と結びついた米国を中心とする不動産バブルであった。
 各国支配層は、相次いで銀行への資本注入などを行った。中央銀行は政策金利をゼロ程度、さらにマイナスに引き下げ、国債などの資産買取による量的緩和政策に踏み込んだ。
 さらに各国政府は二十カ国・地域(G20)サミットなどで「国際協調」を図った。
 大恐慌のときとは異なるこの二つの対応が、世界を破局に陥ることをおしとどめた。
 だが、史上空前の金融緩和政策は、先進諸国中央銀行の資産規模を著しく拡大させた。日銀が発行済み国債の四割以上を保有し、資産規模は国内総生産(GDP)に匹敵するまでに膨脹するなど、金融緩和政策はすでに限界に達している。
 膨大な財政出動は、ギリシャなどの南欧諸国を中心に国家債務(ソブリン)危機を引き起こした。
 ソブリン危機に陥らなかった国々でも、国家債務がGDPの二五〇%にも達する日本を筆頭に、ドイツを除く主要国は軒並みGDPと同額程度の債務を抱えている。
 先進国・新興国を問わず、民間企業と家計も、空前規模の債務を抱えている。
 官民の債務は持続不可能なレベルである。
 これほどの手段を使ってもなお、経済成長率は世界的に鈍化したままである。投資は上向かず、消費も増えない。企業は有り余った資金を実体経済に回すのではなく(投資は省力化投資が主流である)、自社株買いによる株価つり上げや合併・買収(M&A)につぎ込んでいる。
 失業、給与引き下げ、増税や社会保障制度改悪などの国民犠牲政策によって、各国で階級矛盾が高まり、政府への不満と怒りが著しく増大している。
 国民の不満は、中東など一部の国では内戦や暴動となり、政権を打ち倒した。議会制をとる米欧諸国においても、政権交代が相次いだ。
 さらに、既存の議会政党は国民の信頼を失い、欧州を中心に、いわゆる「ポピュリズム政党」が勢力を伸ばしている。イタリアなど一部の国では「ポピュリズム政党」が政権に参画、政治は著しく不安定化している。
 一連の危機は、第二次世界大戦後の覇権国である米国の急速な衰退と、中国の台頭という、国際経済・政治面での力関係の変化のなかで進行している。
 米トランプ政権は「米国第一」を掲げ、世界支配を維持すべく、強引な巻き返し策動を強化している。
 米国による中国への全面的な攻勢は、世界経済に冷水を浴びせ、アジアの緊張を高めている。「国際協調」も、もはやガタガタとなった。
 人工知能(AI)などの急速な技術革新、地球温暖化を中心とする環境問題も、資本主義の限界をさらしている。
 再度の金融危機が切迫している。
 帝国主義者は打開策を求めてあがいている。
 サマーズ元米財務長官が主張する「長期停滞論」、ケルトン・ニューヨーク州立大学教授らが唱える「現代貨幣理論」(MMT)など、さまざまな対応策が提唱されているのも、この反映である。
 国連が提唱し、一部労働組合も取り上げている「持続可能な開発目標」(SDGs)も、もはや資本主義が「持続不可能」となっていることの裏返しである。
 本来、大幅賃上げを中心に労働者を豊かにすることでしか、危機は打開できないはずである。必要な財源は、肥え太った大企業・資本家に負担させれば事足りる。
 だが、利を求めて飽くことのない資本家・投資家と、かれらの代理人である各国支配層には、それは不可能である。
 結局かれらは、金融緩和を継続してバブルを膨らませ、財政出動で「債務地獄」を拡大させることを余儀なくさせられている。もはや資本主義は、バブル抜きには存続し得ないのである。
 帝国主義者は、戦争以外の打開策を失いいつつある。
 九十年前、圧政に虐げられた全世界の労働者階級と被抑圧民族は、帝国主義に敢然と闘いを挑んだ。共産主義者の断固たる闘いは、大戦後、中国などでの社会主義の勝利と植民地諸国の独立として結実した。
 こんにち、全世界の労働者階級が奮い立ち、歴史的任務の達成に向けて闘うべき情勢が到来している。
 世界情勢の推移は、米国を筆頭とする帝国主義者が人民に犠牲を押しつけて危機を乗り切るか、労働者階級が政治的に前進するか、その競い合いにかかっている。
 わが国においては、労働者階級が国民諸階層をひきいて対米従属政治を打ち破ることが、そのための早道である。
 そのために、労働運動を基礎に、マルクス・レーニン主義の革命政党を建設しなければならない。(K)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2019