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2019年10月15日号 1面

天皇制を政治利用した、
安倍の「強い日本」策動 
日米基軸の延命策する

 天皇「祝賀」の強制反対

 政府は、新天皇の「即位礼正殿の儀」などを十月二十二日〜三十一日に行う。二十二日は休日とされ、パレード「祝賀御列の儀」が行われる。二百近い国々の元首・使節が来日するという。
 こうした天皇制イベントは、四月の新元号発表、五月の「代替わり」に続くものである。この後も、十一月には大嘗祭(だいじょうさい)、来年四月には「立皇嗣の礼」が予定されている。
 マスコミはこれに全面協力し、「祝賀ムード」をあおっている。
 安倍政権・支配層は新天皇を政治利用した一大政治イベントを通して、国民を天皇制の下に統合するとともに、「国威発揚」を図ろうとしているのである。安倍首相が所信表明演説で述べた「誇りある日本」のための策動である。
 天皇による儀式は、明らかに神道に基づくものであり、政教分離の原則を定めた憲法に違反する。
 わが党は、一連の儀式を通じたイデオロギー攻撃に対する、断固たる闘いを呼びかける。

対米従属支えた戦後天皇制
 戦前の天皇制は、日本帝国主義の主柱であった。
 天皇の名の下、労働者・人民は侵略戦争に動員された。朝鮮半島、中国を中心に、アジア人民に過酷な植民地支配と占領政策を強いた。南京大虐殺、従軍慰安婦や強制連行など、犯罪行為は枚挙に暇がない。
 第二次世界大戦の敗戦によって、天皇制は存続の危機に直面した。
 だが、連合国最高司令官総司令部(GHQ)は、日本革命を防ぎ、占領を首尾良く進める狙いから天皇制を利用した。わが国支配層、昭和天皇もこれを受け入れた。
 その結果が、現行憲法の「象徴天皇制」である。これは、歴代政権による対米従属政治を補完する役割を果たした。
 昭和天皇は「日本の安全保障を図るためにはアングロサクソンの代表者である米国がそのイニシアティブをとることを要する」などと述べた。米軍による沖縄の軍事占領に対しては、四七年九月、GHQに「米国による琉球諸島の軍事占領の継続を望む」と伝えていた(天皇メッセージ)。
 平成天皇も、イラクやインド洋などから帰国した自衛隊幹部と「懇談」(二〇〇六年十二月、一三年二月)し、米国の世界戦略を支える自衛隊の活動を「誠に意義深い」などと「激励」した。平成天皇による「慰霊の旅」は、サイパン島、フィリピン、ベトナムなど、米国のアジア戦略上重要な国・地域を回るものであった。
 新天皇も、五月末、最初の「国賓」としてトランプ米大統領を迎えた。
 戦後天皇制は、わが国を米国の従属下に置く役割を果たしてきたのである。

国民統合の役割狙う
 こんにち、米帝国主義は台頭する世界支配を維持するため、台頭する中国に対する全面的な包囲と攻勢を強化している。
 安倍政権は米国のお先棒を担ぎ、軍事費の突出、集団的自衛権行使のための安全保障法制などで、先兵役を買って出ている。憲法改悪策動も、その一環である。
 だが、米国が単独で中国を抑え込む力はない。米国は日本と中国を争わせ、アジアで「漁夫の利」を得ようと狡猾(こうかつ)な策略を強めている。
 わが国支配層や保守層内にも、「自国第一」の米国にどこまで従うべきか、疑問と動揺が広がっている。日米間の矛盾は、ますます深刻化している。
 さらに、世界経済は停滞の度を強め、再度の金融危機が迫っている。わが国がその「大津波」にさらされることは必至である。
 日銀の金融緩和策、国の財政出動はいずれも限界に達している。安倍政権・支配層は危機に対処するため、大規模な国民への犠牲押し付けに踏み込もうとしている。消費税を中心とする増税、「全世代型」を掲げた社会保障制度改悪、「働き方改革」の名の下の労働条件引き下げが、その代表例である。
 安倍政権は、天皇にいちだんと「国民統合」の役割を果たさせることによって、日米基軸の政治の維持と、生活苦をはじめとする国民の不満をそらすことを狙っている。同時に、一連の天皇制イベントは、解散・総選挙をにらんでの政権浮揚策でもある。

堕落深める共産党
 議会内野党は、安倍政権による天皇制イデオロギー攻撃に屈服、追随している。
 前回、平成天皇への「代替わり」の際には、儀式が「政教分離の原則に反する」と、社会党などが与党を追及した。「大嘗祭」をめぐっては、各地で違憲訴訟が提起された。こんにち、野党はその程度の闘いさえできない体たらくである。
 せめて、「儀式よりも台風被災者への支援を優先せよ」と言うべきではないのか。
 かつて「天皇制廃止」を掲げ、弾圧に抗して闘った共産党は、堕落をきわめている。今回の一連の儀式には欠席するとしたが、すでに二〇〇四年に制定された現綱領で、「天皇の制度は憲法上の制度」として容認している。志位委員長は「天皇の制度とは長期にわたって共存していく」(「月刊日本」一八年十二月号)、「女性・女系天皇に賛成」(「しんぶん赤旗」六月四日付)と述べるほどだ。
 かれらは、象徴天皇制が戦後の対米従属政治を支える装置であることを一切暴露していない。
 共産党は解散・総選挙を前に、立憲民主党などと「野党連合政権の樹立」を呼びかけている。「真の保守」を自認する同党などと共闘するには、天皇制の容認は「不可避」なのだろう。
 「与党入り」のためなら裏切りも辞さぬこのような勢力に期待せず、象徴天皇制の政治的役割を見抜き、闘わなければならない。(K)


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