2019年9月25日号 1面
「福祉目的」はデタラメ
大企業・投資家に減税
国民生活はさらに危機
消費税増税許すな |
安倍政権は十月一日からの消費税増税を強行する。改造改革発足直後にも、増税を予定通り実施する考えを表明している。
世界経済は厳しさを増し、再度の金融恐慌が切迫している。米国による中国への種々の制裁をはじめ、英国の欧州連合(EU)離脱問題などは、危機を加速・深刻化させている。国際機関も、経済見通しを相次いで引き下げている。
その影響は、わが国経済にも輸出減退などとして波及している。日銀も「下振れリスクが高まりつつある」と言わざるを得ない。
大企業はこの事態と、急速な技術革新、国際競争の激化に対応しようとしている。ジャパンディスプレイ、カルソニックカンセイなど、リストラ、労働者への首切りが強まっている。
ただでさえ、アベノミクスによって、国民生活は厳しさを増している。「人手不足」などを理由に、大企業は物価を引き上げている。労働者の実質賃金は下がり続けている。
一九九四年の一世帯あたり年間平均所得は六百六十四万円であったが、二〇一六年には五百六十万円と、百万円以上も減っている。しかも、平均所得金額以下の世帯は六一・五%と、平均額に及ばない国民が多数なのである。まして高齢者世帯の貧困化は著しく、平均所得は約三百十八万円しかない。
収入が二百万円以下の「ワーキングプア」は、一千万人を超えている。
各種社会保障制度の改悪も続き、勤労者の可処分所得は減少の一途である。生活保護や年金の支給額も減り続けている。
消費税は逆進性が高く、低所得者ほど負担が重い。しかも安倍政権は、従来の税率引き上げの際の「便乗値上げ」への監視を、「経営判断」の名の下に緩めている。税率以上に諸物価が上昇する可能性が高い。
消費税率の一〇%への増税は、国民諸階層をさらなる貧困化へと突き落とすことになる。国民生活の再生どころか、安倍政権が掲げる「経済再生」「デフレ脱却」さえ、実現できるはずもない。
政府は国民に増税を「納得」させようと、「軽減税率」「商品券」「ポイント還元」、住宅や自動車への減税など、あの手この手の対策を打ち出している。
マスコミでさえ指摘しているように、これらの対策は条件の違いによって、実質三%〜一〇%という五段階もの税率が混在する。増税を機に、消費者や商店などが大混乱に陥ることは必至である。しかも、「ポイント還元」などは高額所得者ほど利益を得るものだ。
政府は、一〇%への消費税増税を中止すべきである。
国民生活が厳しさをましているのに対して、歴代政権、とくに安倍政権は大企業、投資家への大盤振る舞いを続けている。
日銀の大規模緩和政策はインフレ政策であり、国民大多数から大企業・投資家への「所得移転」政策である。「成長戦略」などとして繰り返される財政出動、さらに東京五輪なども、大企業を潤し続けている。
そもそも、消費税が一九八九年に導入されて以降、約四百兆円もが「税収」として国民から収奪された。
対して同じ期間に、法人税は、最高時の四三・三%、消費税導入時の四〇・〇%から、二三・二%にまで大幅に減税された。
加えて、輸出大企業への膨大な消費税分の還付(輸出戻し税)は、トヨタ自動車など製造業十三社だけで、年間計一兆円を超える。これは、輸出補助金にほかならない。
多国籍大企業を中心とするわが国財界は、長年、自らの国際競争力を高めるための法人税減税を求めてきた。かれらは「減税しなければ海外に出て行く」などと、政府を突き動かした。こんにち、「第四次産業革命」といわれるほどの国際競争の激化を背景に、財界はますます自らの競争力強化への支援を願っている。
歴代政権、そして安倍政権は、法人税減税だけでなく、研究開発減税や配当益金不算入制度、連結納税制度、投資家のキャピタルゲイン(資産売買差益)への減税延長など、数々の手厚い大企業優遇税制によって、これに応えている。
これらを加味すると、わが国大企業(資本金十億円以上)の法人税実質負担率は一〇・四%にすぎない。財界はこれに飽き足らず、ますます減税要求を強めている。
消費税増税は、多国籍企業、投資家の要求に応え、国民にその犠牲を押し付けるものなのである。
さらに安倍政権は、台頭する中国を抑え込むという米国の世界戦略を補完し、自らも「アジアの大国」として登場するため、米国製武器の購入を中心とする空前の大軍拡を進めている。安倍政権下、軍事費は二〇年度予算概算要求を含めると、八年連続過去最高を更新する。
たとえば、一機百億円以上もするF35戦闘機を百四十機以上、関連施設を含めると一基三千億円以上とされる地上配備型迎撃ミサイルシステム(イージス・アショア)を二基購入しようとしている。
この安倍政権下の六年余で、国の累積赤字は約百八十兆円も増加している。
対米従属で大企業のための政治こそ、わが国における財政赤字の原因である。
消費税増税に対する闘いが求められている。
野党のみならず、経済界や学者などからも、増税に対する批判や懸念の声が相次いでいる。
藤井聡・京大教授は、「消費増税など、論外中の論外」として内閣官房参与の職を辞している。岩田規久男・元日本銀行副総裁らも「現時点は消費増税のタイミングとして最悪」などと表明している。自民党内でも、西田参議院議員などが反対している。
ポイント還元などに対しては、チェーンストア協会、スーパーマーケット協会、チェーンドラッグストア協会が「強い懸念」などを表明している。
だが本来、国民運動の中心となるべき労働組合の連合中央は「福祉目的」という世論誘導に乗せられ、増税を尻押ししている。
これは、政党の責任でもある。
先の参議院選挙での野党の態度は、ほとんどが「増税凍結」(立憲民主党など)だけで、大企業優遇税制や累積赤字の原因の暴露もなかった。これでは、安倍政権、自公与党への政策的対抗軸になり得ない。
共産党も「内部留保への課税」がほとんどで、大企業優遇政策の全廃には「及び腰」である。
「財政再建」というのならば、歴代政権の政策によって肥え太った、大企業と投資家に負担を求めるべきである。米国製武器の大量購入も、直ちにやめなければならない。
国民生活を打開するには、当面の「増税凍結」だけでは不十分である。
国民生活を再生させるためには、当面の増税を中止させ、消費税の廃止を要求しなければならない。また、大衆減税と大幅賃上げこそ必要である。
労働組合は、国民諸階層の利益を代表し、先頭で闘わなければならない。(O)
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