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2019年9月5日号 3面・声明

声明/林横浜市長の
カジノ誘致表明について

 2019年9月1日 
日本労働党神奈川県委員会
委員長・中村 寛三

一、林文子・横浜市長は、八月二十二日、カジノを中心とする統合型リゾート(IR)を山下ふ頭に誘致する方針を正式表明した。
 九月二日から始まる市議会定例会に、IR関連の補正予算案として二億六千万円、債務負担行ため一億四千万円を提出し、「IR推進室」を新設して、二〇二〇年代後半の完成に向け本格的に推進するという。もし、これが実現するなら、開港以来世界への玄関として発展し、特有の歴史文化を育んできたミナト横浜は大きく損壊され、米国などのカジノ資本が日本国民を相手に荒稼ぎするばくち場へと変貌するに違いない。
 わが党は、林市長のカジノ誘致の選択が、横浜の将来に禍根を残す暴挙であることを指摘し、厳しく糾弾するとともに、市民各界の皆さんと広く共同して、市長に対しカジノ誘致の撤回を強く求め、断念するまで闘うことを表明する。

一、まず第一に指摘しておかねばならないのは、今回の抜き打ち的な態度表明が、市民にとっては、裏切り以外のなにものでもないということである。市長はカジノが争点になった一七年の市長選挙では「白紙」と言って当選し、昨年の十二月議会でも「白紙から態度を決める場合には、市民の声を聞く機会を設ける」と答弁していた。それは、各種世論調査でも六割を超す市民が「誘致すべきでない」と回答していることや、アリバイ的に行った「市民説明会」でも反対意見が強かったからであろう。
 こうした経過からみれば、市長の誘致表明は紛れもない公約違反であり、横浜の将来を左右する重大な選択であることを加味すれば、民意をないがしろにする重大な背任行為と言わざるを得ない。

一、第二に言わねばならないのは、カジノ誘致の最大の理由として挙げた「経済的社会的効果」なるものには、信頼に値する具体的根拠がないということである。
 市長は、カジノ誘致によって「観光の振興」で四千五百億円〜七千四百億円、「地域経済の振興」で六千三百億円〜一兆円、「財政への改善への貢献」(カジノ納付金や入場料収入、法人市民税など)で八百二十億円〜一千二百億円の「経済効果」が見込めるとアピールした。だが、この数字は、IRに加わろうとしている十二事業者の構想案を総括したものであり、つまりは事業者の皮算用にすぎない。たとえば経済効果が一兆円規模に上るとの「試算」だが、売り込み側の事業者が経済的なメリットを強調するのは当然である。しかも、ギャンブル依存症や治安対策など懸念されるデメリットに対するコストなどは一切計上されていない。
 そうした事業者の売り込み用の皮算用を、市政を運営する立場から何一つ検証せず丸呑みし、それを「根拠」にカジノ誘致にカジを切るなどというのは、市政を与る長として無責任極まりない。

一、第三に、IR型カジノのビジネスモデルが持つ深刻なマイナスの「経済的社会的効果」について直視しようとせず、市民各界の中にある不安の原因に向き合おうとしない態度である。
 カジノは、法整備でごまかしたとはいえ、刑法で禁止されている賭博(とばく)、ギャンブルである。IR型カジノのビジネスモデルは、IRに呼び寄せてきた多くの人びとをばくち場に連れ込み、高額の掛け金でばくちをさせ、ばく大な利益を巻き上げ、最大の収益力をあげる点にある。IRという衣に包むことで、その危険な本質を隠しているが、IRの諸施設は、カジノの集客装置にすぎないのである。
 市長は、そのようなカジノの収益力に頼って市財政の「改善」を図るという。なんという安易で、危うい財政運営であろうか。市財政問題は、より全面的かつ本格的な検討が求められているのだ。
 また、地域経済に及ぼすマイナスの影響も見ようとしていない。このビジネスモデルでは、カジノ誘致都市と周辺都市との格差、誘致都市内でIRと非関連施設の間の格差を拡大する。地域経済のバランスある自律的な経済発展が阻害されるのは必至である。
 さらに、ギャンブル依存症の悲劇が急激に拡大するのは避けられず、社会的コストの負担は地域経済に集中する。韓国の江原ランドの失敗の事実が示している。

一、第四に、市長の前のめりの誘致表明の背後には、安倍政権の「意向」が働いていると判断せざるを得ない。
 IR型カジノは、安倍政権によって「オリンピック後の成長戦略の切り札」と位置づけられ、「国家戦略」として推進されていることは周知の通りで、秋の臨時国会で具体化のための「カジノ管理委員会」が設置される予定になっている。それを前に、誘致をめぐる自治体間での争奪が激化、連動してカジノ未開地日本を狙う貪欲な海外カジノ資本が参入しようとしのぎを削っている。
 市長の誘致表明を待っていたかのように、米国カジノ最大手ラスベガス・サンズ社のアデルソン会長が、大阪から横浜への参入方針転換を表明した。同氏はトランプ大統領の盟友、巨額の政治資金提供者で、日米首脳会談にも同席して安倍首相に日本のカジノ解禁を説いたとされる人物である。IR推進本部長は安倍首相、副本部長は地元選出の菅官房長官である。市長の誘致表明と、これらは偶然のことであろうか。


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