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2019年7月25日号 1面

米主導の対イラン軍事挑発反対 
米戦略奉仕は中東の信頼失う道

 「有志連合」への参加・協力を許すな

  ダンフォード米統合参謀本部議長は七月九日、中東のホルムズ海峡などで「有志連合」軍を展開するとぶち上げた。
 米トランプ政権は昨年五月、欧州とロシアなどとともに合意したイラン「核合意」から一方的に離脱した。その後、イランへの再制裁を強化した。
 さらに、六月に起きたタンカーへの攻撃に「イランが関与した」と決めつけ、軍事的包囲をいちだんと強化している。二千五百人規模の米軍が中東に増派され、イラン近海に原子力空母を派遣した。さらに、イランの無人機を撃墜した。
 「有志連合」提唱後も、米国はイランのウラン濃縮活動を支援したとして、中国やベルギーに拠点を置く七団体を制裁の対象に加えた。二十二日には、中国の国営石油企業・珠海振戎と同経営者に制裁を科した。英領ジブラルタル自治政府も、イランの大型タンカーを拿捕(だほ)した。
 米国は「軍事的選択肢を検討してはいない」としつつ、「重大な結果が生じることになる」とイランをどう喝した。
 イランは、米国の一方的な「離脱」と再制裁に抗して、ウラン濃縮活動の水準を引き上げるなど対抗措置をとっている。さらに、英国のタンカーを拿捕するなど、屈しない姿勢を鮮明にさせている。
 米国とその追随者は、イランへの包囲を強化し、中東の軍事的緊張を激化させている。
 米国による包囲網と闘うイランと中東人民と連帯し、中東・アジアの平和を守らなければならない。

米国の狙いは体制転覆
 ホルムズ海峡は、世界で取引される原油の約四割が通過する要衝である。
 米国は「(この地域の)航行の自由を守ることはすべての国の責務」(アーバン米中央軍報道官)などと言い、各国に「有志連合」への参加を要求した。ムニューシン米財務長官は「ドルを使いたければ、米国の(イラン)制裁に従う義務がある」と、基軸通貨の「強み」も悪用して、各国に同調を求めている。
 米国は十九日、「有志連合」結成に向けた会合を行い、日本など六十カ国に参加を求めた。会合は、二十五日にも予定されている。
 米国のいう民間船舶の「護衛」は、口実にすぎない。
 米帝国主義は「有志連合」でイランへの軍事的圧迫を強化し、「核問題」での屈服、ひいては体制転覆をもくろんでいる。併せて、中東の「反米大国」であるイランを屈服させることで地域への影響力を強め、ドルと結び付いた原油価格への支配力も拡大させようとしている。

中国を見据えた戦略
 米国が狙うのは、衰退を巻き返して世界支配を維持することである。
 そのため、米国はアジア諸国を「有志連合」参加国として確保しようとしている。ポンペオ国務長官は、同海峡周辺の「安全確保」に関して、日本や中国、韓国、インドネシアなどを名指しした。
 だが、この策動は、逆に米国の国際的孤立を浮き彫りにさせている。
 フランスは中東情勢の緊張を招くとして、「有志連合」に懸念を表明した。すでに自国船の護衛活動を始めているインドは、「有志連合」には参加しない方針である。イランとの対立を深めている英国でさえ、むしろ欧州諸国との共同を重視する方針である。
 そもそも「有志連合」をぶち上げたのは、国連安全保障理事会での決議が期待できないからでもある。
 それだけに、米国がわが国の負担を求めることは必至である。米帝国主義は、日本などアジア諸国を自らの指揮の下に組み敷き、激化している対中国戦略にも活用しようとしている。

「有志連合」は亡国の道
 わが国は、原油輸入量の八八%を中東地域に依存しており、その多くがホルムズ海峡を通過している。
 安倍政権は今のところ、「有志連合」への参加を表明していない。
 安倍首相は六月にイランを訪問し、米国との「仲介外交」を演出したばかりである。だがこの訪問は、実態は対米追随の枠内で、国際的に恥をさらす結果となった。
 マスコミの一部は「旗幟(きし)を鮮明にすることが必要」(産経新聞)などと、「有志連合」への参加を後押ししている。
 ボルトン米大統領補佐官は日本を訪問し、河野外相や谷内国家安全保障局長らと会談した。「有志連合」への参加に向けた働きかけである。内容を公表できないのは、参議院選挙の投票前だったからだろう。
 仮に「有志連合」への参加を免れたとしても、日米物品貿易協定(TAG)をはじめとする通商交渉でさらなる譲歩を迫られる可能性が高い。逆に、通商要求を緩和してもらうために、安倍政権が安全保障上の譲歩を行うこともあり得る。
 日本の命運に関わる問題にもかかわらず、参議院選挙では、与野党間の論戦はほとんどなかった。
 加藤・自民党総務会長は「法律の範囲内で何ができるか」などと述べた。二〇一五年に制定された集団的自衛権のための安全保障法制でさえ、「有志連合」への参加は法律外である。
 野党は安倍政権に対する明確な対抗軸を立てられていない。
 立憲民主党の長妻代表代行は「必要なら新しい立法をせざるを得ない」と述べている。立憲民主党は新法の成立にどのような態度をとるのか、鮮明にすべきである。
 米国のアジア・中東戦略に加担せず、「有志連合」参加を拒絶しなければならない。そのためには、独立・自主の政権をめざした国民運動が欠かせないのである。      (O)


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