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2019年6月25日号 3面・解説

香港問題

 中国への干渉をやめよ

  米帝国主義は、香港情勢を口実に、中国への干渉を強めている。
 香港では、中国本土への犯罪者の引き渡しを定める「逃亡犯条例」に反対する大衆行動が起こり、香港政府は六月二十一日、条例の廃案を表明した。
 一連の事態に際し、ポンペオ米国務長官は十六日、香港情勢に「重大な懸念」をもっているなどと述べ、大阪で開かれる二十カ国・地域(G20)サミットで香港問題を提起することを明らかにした。米議会でも、ペロシ下院議長(民主党)が香港の「一国二制度」を「再評価」する法案を呼びかけている。
 香港は、一八三九年に始まったアヘン戦争の結果として、英国に割譲された。アヘン戦争は、英国が植民地のインドで生産したアヘンを清国が輸入禁止としたことに対して仕掛けた戦争である。「歴史上最も汚い戦争」といわれるほど、帝国主義の醜悪さ、残忍さが示された戦争である。
 以降の経過のなかで、香港は一九九七年まで「九十九年の租借」とされた。
 中国にとって、現在の「香港特別行政区」という存在自身が、帝国主義による侵略と民族分断の結果にほかならないのである。
 中国と英国が香港返還で合意した「中英共同声明」において、香港の資本主義制度は「五十年間維持される」とされた。この期限は二〇四六年で、すでに半分近くが経過した。期限後、香港のあり方は、中国の主権に属するものである。
 こんにち、中国・習近平政権は「中華民族の偉大なる復興」を掲げ、「建国百周年」である四九年に、米国を抜く大国となることをめざしている。それは、アヘン戦争以降の「半植民地」の歴史から完全に脱却することでもある。香港の本土との一体化はその不可欠の一部であろう。
 一方、米国は中国を抑え込むことで衰退を巻き返し、世界支配を維持しようとしている。通商要求だけではない。中国の成長戦略である「中国製造二〇二五」の廃棄要求、南シナ海や台湾問題での軍事挑発、新疆ウイグル自治区やチベットでの「人権」問題など、米国の対中攻勢は全面的なものとなっている。米中関係は、すでに広義の「戦争状態」に入った。
 現在の香港情勢は、こうした環境下で起きている。
 条例を廃案としても、米国の干渉は終わらない。むしろ、中国と香港政府の態度を「弱さ」と見て攻勢を強める可能性が高い。
 わが国マスコミは、「中国の習近平政権は、混乱や衝突が拡大すれば、国際社会の批判が強まり、自らの威信にも傷が付くことを認識すべきだ」(読売新聞)などと、米国と同様、中国を批判する大合唱である。
 先日、香港の「民主」活動家が来日したが、日本国内においてかれらを担いでいるのは、地方議員を有する某右翼宗教団体である。
 わが国「左派」の一部にも、歴史の事実と切り離し、一方的に中国に「民主」を求める動きがある。
 典型は、共産党である。共産党は「自由、人権こそ社会主義」などと、没階級的に中国を非難している。参議院選挙対策であることは明らかだが、国際環境と香港問題を意図的に切り離し、日本国内で中国に対抗する世論をあおる策動に迎合している。
 米国による中国への干渉激化は、アジアの緊張を高めている。安倍政権の下、わが国は米国の「対中包囲網」の最前線に立たされている。独立・自主の国の進路を実現しなければならない。香港問題への態度は、その重要な「一里塚」である。      (K)


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