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2019年5月15日号 1面

延命策す安倍政権の悪あがきを打ち破れ

   統一地方選挙、衆議院補欠選挙が終了した。政局は衆議院の解散による「ダブル選挙」の可能性をはらみながら、夏の参議院選挙に向けて動き出している。
 他方、世界はますます激動している。
 米国による中国への攻勢はさらに本格化している。互双方が政権を維持できるかどうか、一種の「戦争」といえるこの状況が長期化することは必至である。
 わが国にも株安をはじめ、「大津波」が襲いかかりつつある。財界・支配層は動揺を深めている。
 わが国の進路が、本格的に争われなければならない情勢である。
   *    *
 衆議院沖縄三区補欠選挙では、辺野古新基地に反対する「オール沖縄」勢力が推す屋良候補が圧勝した。わが党は、沖縄県民の確固たる闘いに、改めて敬意を表する。
 安倍政権にとっては、衆議院大阪十二区補欠選挙と合わせて「連敗」で、打撃には違いない。沖縄三区での勝利は、闘う勢力を大いに励ますものである。ただ、安倍官邸にとって連敗は「想定内」で、大阪での日本維新の会の勝利は「敗北」とさえ受け取っていないだろう。
 十道県知事選挙で与党系候補が勝利するなどした統一地方選挙の結果と併せ、安倍政権、与党は、政局の主導性を何とか維持した。
 統一地方選挙で、野党は安倍政権、与党に対する政治的対抗軸を明確にできなかった。道県知事選挙において、与党候補と闘ったのは北海道のみで、ほかは与党との相乗りであった。道県議会選挙においては、候補者が定数を超えない「無投票」が、全体の約四割に達した。
 前後半選を通じたほとんどの選挙において、史上最低水準の投票率に終わったのは当然である。有権者にとっては、あらかじめ選択肢が奪われていた。
 安倍政権が主導性を維持できた第一の責任は、戦略性のない野党にある。
 自民党は道県議選挙で、約八十万票も得票を減少させている。自民党の得票数は約一千万で、これは一九八〇年代末の約半分にすぎない。もはや「自民党の一派閥」と化したごとき公明党も「常勝関西」の大阪、京都で議席を落とした。
 しかも、四県知事選挙では自民党が分裂した。アベノミクスの下で地方経済の疲弊が進むなか、地域における階級矛盾、とくに保守層内の矛盾が激化していることを伺わせる。
 主導性を維持した自民党だが、決して強くはない。
   *    *
 しかも、安倍政権を取り巻く内外環境は、いちだんと厳しさを増している。
 世界経済の成長鈍化は鮮明で、新たな金融危機が迫っている。
 米帝国主義、トランプ政権は、台頭する中国を抑え込んで衰退を巻き返そうとやっきになっている。トランプ大統領は中国への追加関税の拡大を表明した。米国は、政治・経済・安全保障にわたる全面的な中国への攻勢を激化させている。アジアにおける、米中間の軍事的衝突さえあり得る情勢となっている。
 わが国経済が長期デフレの泥沼から脱却できるメドがないなか、「米国第一主義」の津波が押し寄せている。急速な技術革新においても、日本企業の立ち後れは鮮明である。
 財界は「世界恐慌すら巻き起こしかねない状況」(永守・日本電産会長)、「(日本の)第二の敗戦」(小林・前経済同友会代表幹事)と緊張感を高め、生き残りに必死になっている。
 危機に対処しようにも、日銀の金融緩和は、買い入れる国債の枯渇が言われるほどに限界に達している。「先進国で最悪」の政府累積債務も危機的で、財政出動の余地はほとんどない。
 安全保障面では、わが国は米戦略に徹底的に利用され、対中国の最前線に立たされている。米戦略を支えるための軍事増強は急ピッチに進み、沖縄だけでなく日本全土に負担が押し付けられている。
 日本を取り巻く内外環境は、まさに逃れられない「底なし沼」である。
 アベノミクスの下、国民生活はますます悪化、労働者をはじめとする国民諸階層は貧困化させられている。実質賃金は下がり続け、社会保障費の負担は増える一方である。大企業は技術革新への対応を口実に、リストラを強めている。大規模化・企業農業化の農政で家族経営はつぶされている。中小零細商工業者の廃業は空前の規模に達している。地銀、信金・信組の経営悪化が、地方経済の疲弊をますます深刻化させている。
 国民諸階層は、消費税増税に耐えられるはずもない。
 安倍政権を取り巻く内外環境は、いよいよ危機的である。参議院選挙の結果がどうなろうと、遠からず「四面楚歌」に陥ることは避けがたい。
 だが、安倍政権も困難の打開をめざし、中国との関係「改善」、朝鮮民主主義人民共和国との「無条件の対話」をたくらむなど、自主性を模索している。
 維新を使って「連立の変更」をちらつかせて公明党を揺さぶり、憲法改悪を成し遂げようとしている。
 だが安倍政権は、多国籍大企業のための対米従属政治を一歩も超えることはできない。
 国民独立・自主、国民大多数のための政権をめざす闘いこそが、事態を変えることができる。
   *   *
 闘いを発展させる上で、支配層のたくらむ保守二大政党制の問題、とくに「野党共闘」を主導する小沢・元自由党党首(現・国民民主党)の役割について、改めて触れたい。
 自民党幹事長を務めるなど、一九八〇年代に政権中枢にいた小沢氏は、「政権交代可能な保守二大政党制」をめざして自民党を離党、新生党を率いて政権交代、さらに細川連立政権を主導した。
 わが国財界は一九八〇年代後半以降、国際競争に勝ち抜くための政治を必要とした。それまでの農民や中小商工業者を同盟者とする「利益分配型」の政治、自民党単独支配は限界に達し、財界は労働組合の「上層」を新たな同盟者として獲得しようと画策した。
 これは、「日米同盟」をはじめとする基本政策が同じ二大政党制による「政権交代」によって、財界による政治支配を維持しようとするものであった。連合指導部も、この策動に手を貸した。
 小沢氏は、財界の期待を担って画策を続けた。ときに「非自民」で野党を結集し、別の時期には自民党と連立した。二〇〇六年、旧民主党の代表となった小沢氏は、「二大政党制による政権交代」の実現を自らの「使命」と、自らの役割を財界に再度誓った。
 その後の、橋下氏を中心とする維新勢力、小池都知事、河村・名古屋市長らの「首長新党」も、似た狙いからの別働隊である。
 こんにち、小沢氏の政治的位置は変わっておらず、「社民化した」のではない。橋下・元大阪維新の会代表も「野党を一つにしていくしかない」と二大政党制の一方の極をつくることに意欲を示し、小沢氏について「権力の本質について一番理解されている」などと賛辞を惜しまない。
 こんにち、安倍政権を倒すことを願う人びとが、選挙における「野党共闘」を願う気運は理解できる。議会政党であれば、「その道以外にない」と思うのも、無理からぬ面があろう。
 だが、以上のような経過を再確認すれば、小沢氏が主導し、「議会唯一主義」の共産党・志位委員長が追随する「野党共闘」が誰のためのものなのか、違った見方ができるのではないだろうか。
 「日米同盟深化」を唱える立憲民主党や国民民主党では、安倍政権、自公与党に対する明確な対抗軸にはなり得ない。
 わが党は、わが国の独立・自主、安保条約破棄、国民大多数のための政権をめざすことこそ、真の対抗軸であると考える。そのための国民運動の発展こそ、喫緊の課題である。(K)


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