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2019年4月15日号 1面

第19回統一地方選挙前半戦の結果について

   第十九回統一地方選挙前半戦が四月七日、投開票された。
 十一道府県知事選、四十一道府県議選、六政令市長選、十七政令市議選が行われ、二十一日投開票の後半戦もある。
 わが党は戦略的配慮から、知事選挙などへの候補者擁立を見送った。
 本来、地方選挙の総括は、後半戦の結果を受けて行うべきで、この時点で得られる情報にも限りがある。それを前提にしても、一定の総括を行うことは必要である。

政党の消長という面での主な結果
 十一道府県知事選挙では、与党系が十勝一敗であった。大阪府知事・大阪市長選では大阪維新の会が勝利したが、憲法改悪のために維新勢力の存続と連携を望む安倍官邸は「敗北」とはとらえていないであろう。
 自民党は道府県議の過半数を維持したが、獲得票数では前回を八十万票以上も下回った(3面に獲得議席数を掲載、以下同)。
 立憲民主党と国民民主党は合わせて二百を超える道府県議席を得たが、旧民主党時代の前回(二百六十四議席)から大幅に後退した。
 公明党は「守りの選挙」であったものの、「常勝関西」の大阪、京都で後退したのは打撃であろう。この結果が、大阪維新の会との関係にどう影響するか。
 大阪維新の会は、府・市長選挙で大勝して延命した。
 共産党は道県議会議席数が二ケタに再転落、票数も二割近く減った。政令市議選でも約一五%減らしている。「野党共闘」と自党の前進のバランスをめぐり、ジレンマは深い。
 社民党は道府県議席を減らしたが、政令市議は微増した。
 参議院選挙が迫り、衆議院解散による「ダブル選挙」の可能性もあるなか、安倍政権・与党は総じて、政局の主導性を維持した。

地方選を取り巻く情勢
 今回の地方選は、世界資本主義が末期症状を呈し、わが国の危機もいっそう深刻化、地方がますます深刻な状況に陥るなかで行われた。
 国際通貨基金(IMF)が成長率見通しを相次いで引き下げるなど、世界経済の成長鈍化は鮮明である。リーマン・ショック後、政府と民間が膨大な債務を積み上げるなかで辛うじて維持してきた成長は限界に達し、新たな金融危機が迫っている。
 米帝国主義、トランプ政権は、衰退を巻き返して世界支配を維持すべく、台頭する中国に対して、政治・経済・安全保障にわたる全面的な対抗戦に打って出た。
 「米国第一主義」の津波がわが国に押し寄せ、わが国経済はますます長期デフレの泥沼にはまり込んでいる。わが国は米戦略の下、中国に対抗する「矢面」に立たされている。軍事増強が急テンポで進み、沖縄だけでなく、輸送機オスプレイの配備などで日本全土に負担が押し付けられている。アジアでの政治的・軍事的緊張が高まっている。
 技術革新への対応も相まって、大企業はまたもリストラを強め始めた。労働者の実質賃金は下がり続け、社会保障費の負担は増える一方である。市場開放と大規模化・企業農業化の農政で家族経営はつぶされ、さらに豚コレラ被害などで経営はますます厳しい。中小零細商工業者の廃業はとどまるところを知らず、地銀の経営悪化が、地方経済の疲弊をますます深刻化させている。
 こうしたなかで行われる統一地方選挙では、安倍政権による多国籍大企業のための対米従属政治に反対し、一握りの地域反動派が牛耳る自治体政治と闘い、住民の生活と営業を守ることができるかどうかが問わるべきであった。

低投票率、無投票が最大水準
 今地方選の特徴の一つは、投票率がいちだんと下がったことである。
 全国の投票率は、道府県議四四・〇八%と史上最低を更新、知事選は四七・七二%で史上二番目の低さであった。県議選では、前回(一五年)、三十八府県で史上最低を更新したが、今回も三十三府県で最低を更新した。
 四割以上の有権者が投票所に足を運んでいないことになる。危機的状況にある地域経済と住民生活の打開の方向・選択肢を示し得なかった政党、とくに野党の責任である。
 さらに、県議選を中心に、無投票が増加した。
 無投票は県議選全選挙区の三九%にも達し、前々回(一一年、二七%)、前回(三三%)を上回った。無投票が全選挙区の四割を超えた同県は二十県にも達し、これまた前々回(八県)、前回(十五県)を更新した。
 道府県議選挙では、約四割の選挙区の有権者が意思表示する機会さえなかったのである。

「敵なし論」に陥る国政野党
 二〇〇七年は、五道県の知事選挙で与野党対立となり、前回も二道県で激突した。だが今回、十一道府県知事選挙のうち、与野党による対決型は北海道のみであった。有権者は、あらかじめ選択肢を奪われていたのである。これでは、投票率が上がるはずもない。
 国政では安倍政権への「対抗」を掲げる議会内野党だが、従来以上に「地方政治に与野党なし」という「敵なし論」に陥っている。
 闘わなかっただけでなく、知事選で自民党候補を積極的に推薦したところも多い。大阪知事選・市長選でも「反維新」を理由に、共産党も含めて自民党と相乗りし争っていない。有権者には「真の野党なし」と映ったであろう。
 対決した北海道でも、同時に行われた札幌市長選は「オール与党」であった。自民党がすり寄って相乗りになったとはいえ、共産党が独自候補を擁立したのみである。
 今回、四つの県(福井、島根、徳島、福岡)で自民党の「分裂選挙」となった。本来、野党には有利な条件だった。
 「分裂」の背景には、各県それぞれに事情があり、一様に断じることはできない。「自民党系」の県政が続く点では違いはないとはいえ、アベノミクスの下で地方経済の疲弊が進むなか、地域における階級矛盾、とくに保守層内の矛盾が激化していることを伺わせるに十分である。利害に敏感な保守勢力は、内心では「地方政治に与野党なし」とは思っていないのである。
 四県の「保守分裂」は、麻生副総理や二階幹事長、竹下元総務会長らの影響力を弱めるなどの影響を与えた。中央と地方の矛盾、地方政治での「保守分裂」は、今後、さらに拡大するだろう。
 安倍政権の悪政に自治体としてどのような態度をとるのか、野党は地方政治でも、一握りの支配層と争わなければならない。


北海道知事選について
 北海道知事選は唯一、与野党対立となった。高橋道政を継承する鈴木候補(前夕張市長)に対し、石川候補を擁立して闘った労働組合、諸団体、政党の姿勢を評価したい。
 だが、石川候補の得票は、前回の佐藤候補にも及ばなかった。
 北海道は、人口減少、北海道胆振東部地震からの復旧・復興、環太平洋経済連携協定(TPP )や日欧経済連携協定(EPA)による農畜産業への打撃、JR北海道の路線「見直し」、カジノを含む統合型リゾート(IR)、泊原発の再稼働など、問題が山積している。
 これに対する高橋道政の態度について、地元紙「北海道新聞」は「主体的に関わろうとする姿勢が希薄だった」と、批判的に述べていた。返す刀で、野党の選挙戦について「争点化しやすい課題がありながら、組織力や鈴木氏のイメージを基にした与党側の厚い壁を破れなかった」と述べている。一定の示唆(しさ)に富む見解と思われる。
 北海道知事選に限らず、野党は今回も、住民の苦境が深まりと不満が高まる客観的条件がありながら、安倍政権、保守県政に対する明確な対抗軸を示すことができなかった。


社民党について
 友党の立場から社民党について触れ、エールを送りたい。同党の先行きは国民運動、なかでも労働運動の将来に影響を与えるからである。
 今回、社民党が道府県議選において公認候補を擁立した県は十三県で、前回の十七県から減った。前回公認候補が落選した結果、今回は擁立を見送っただけではない。いくつかの県では、党籍のある現職議員が無所属に転じて立候補した。
 立憲民主党との候補者調整や地方連合との関係もあろうが、公認候補が少なければ党は見えず、当選者が減るのは当然である。
 わが党が見るところ、擁立見送りや「無所属化」は、議会政党としての自殺行為である。
 しかし、前進の芽もある。
 富山県は唯一、前回より一人多い四人(富山市、高岡市、氷見市、射水市)を県議選候補として擁立し、三人が当選(うち一人は無投票)した。当選者数は前回と同じだが、三人の候補が得た得票総数は、国政選挙と地方選挙の違いはあれ、社民党が前回総選挙(一七年)で富山県内で得た比例得票数を上回った。射水市で落選した新人候補は、最下位当選者を八百票差まで追い詰めていた。重要な足がかりとなり得る経験ではないだろうか。
 また、埼玉県さいたま市では、岩槻区で前回次点の候補が共産党候補に競り勝って当選している。
 旗を掲げて敢然と闘うこと、その前提として、住民の要求を掲げた大衆行動と結び付いてこそ、政党法上の要件維持にとどまらず、党の再建が可能となるのではないだろうか。 


ジレンマ深める共産党
 共産党の道府県議席減の理由は、一般的には党勢の後退と、「野党共闘」によって立民との違いがあいまいになったことであろう。とくに関西で減らしたが、大阪府・市で自民党候補を支持したことも大きく影響しただろう。
 共産党は千葉県議選でも三議席減らしたが、浮揚・千葉県委員長は、自党と立民が「政治的な立ち位置が同じように見える」(読売新聞)ことを認めている。
 共産党は昨年十月の第五回中央委員会総会で、地方の「オール与党」下でも、立民など野党への批判を控えることを決めた。千葉の例は、この方針の必然的結果である。
 一方、ブログなどを見る限り、立民との差別化を強調する戦術を採った候補も数人いたようである。
 共産党は、「野党共闘」と自党の議会内の前進との間でジレンマをますます深め、動揺するだろう。安倍政権や地方の反動派と闘う上で、この党に期待することはできない。


窮地の安倍政権を追い詰めよう
 安倍政権・与党による主導性は、将来にわたって保証されたものではない。
 連日報じられる閣僚の失言は、第一次安倍政権の末期に「似てきた」と言われる。
 何より、世界経済の危機は深く、その津波は日本にも龍来し始めた。
 国民生活の悪化に対処しようにも、日銀による緩和政策はすでに限界で、「先進国随一」の財政赤字も政府を縛っている。本来なら、消費税増税を行える情勢ではない。
 農産物と自動車を中心とする市場開放や武器購入など、米国からの対日要求がますます激化することは必至である。わが国は、米国が中国に対抗して世界支配を維持するために利用され、収奪される。
 わが国の進路は重大な局面に至っている。支配層の一部を含めて、日米関係を中心に矛盾が深まることは避けがたい。
 地方には、さまざまな犠牲が、いちだんと押し付けられることになる。地方における階級矛盾の激化、政治闘争の激烈化は避けがたい。
 労働運動の発展を基礎に、農林漁民、中小零細商工業者、学者文化人、心ある政党・政治家が連合し、独立・自主の国の進路をめざす強力な国民運動を巻き起こさなければならない。
 こうした戦略的方向と結び付いてこそ、住民大多数のための地方政治を実現し、議会でも前進できる。
 わが党は、その道を歩む。先進的労働者に、ともに闘うことを呼びかける。(O)


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