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2019年4月5日号 1面

新元号・代替わりによる

  対米従属下の国民統合を許すな

   安倍政権は四月一日、新元号「令和」を発表した。安倍政権は、五月一日の「代替わり」、十一月の大嘗祭(だいじょうさい)、来年四月の「立皇嗣の礼」という天皇に関する一連の行事を通じて、国民の「祝賀ムード」を盛り上げようとしている。マスコミはこれに全面協力している。
 新元号は「万葉集」に由来するものであるという。安倍政権の支持基盤である保守派は、従来のような中国の古典からではなく、わが国の古典から引用するよう求めていたが、これに応えたものである。
 安倍首相は新元号について「日本には決して色あせることのない価値がある」などと述べた。第一次政権時代の「美しい国」、第二次政権発足時に掲げた「強い日本」を、ここでも印象づけようとしている。
 わが党は、新元号と「代替わり」を通じたイデオロギー攻撃に対して、断固たる闘いを呼びかける。

 二〇〇八年のリーマン・ショックを端緒とする金融危機、その実体経済への波及によって、世界資本主義は「百年に一度」の危機に陥った。

対米従属支えた戦後天皇制
 戦前の天皇制は日本帝国主義の主柱として、国内では労働者・人民を弾圧・搾取して侵略戦争に動員し、海外でもアジア人民に過酷な占領政策と植民地支配を強いた。その犯罪行為は、南京大虐殺、従軍慰安婦や強制連行など枚挙に暇がない。
 第二次世界大戦の敗戦によって、天皇制は存続の危機に直面した。
 だが、連合国最高司令官総司令部(GHQ)は、日本革命を防ぎ、占領を首尾良く進める狙いから天皇制を利用した。わが国支配層、昭和天皇も、支配の安定のためにこれを受け入れ、「新たな主人」に恭順の意を示した。
 その結果が、「日本国民統合の象徴」(象徴天皇制)としての存続である。
 戦後の天皇制は、歴代政権による対米従属政治を補完する役割を果たした。
 昭和天皇は、新憲法公布直後、「日本の安全保障を図るためにはアングロサクソンの代表者である米国がそのイニシアティブをとることを要する」などと述べた。米軍による沖縄の軍事占領に対しては、四七年九月、「米国による琉球諸島の軍事占領の継続を望む」というメモをGHQに伝えていた(天皇メッセージ)。サンフランシスコ講和条約と日米安保条約の締結をめぐる交渉の中でも、天皇はダレス米国務長官にメッセージを送り、「米軍の半永久駐留」を後押しした。
 七四年十一月の現職米大統領(フォード大統領)による初訪問と、翌年の天皇訪米は、ニクソンショックとベトナム戦争の敗北で米国の世界支配が打撃を受け、ニクソン大統領がウォーターゲート事件で失脚するなど内外の困難に直面するなかで行われた。天皇は、日本が引き続き米国を支えるという意思表示に「一役買った」。
 平成天皇も、イラクやインド洋などから帰国した自衛隊幹部と「懇談」(二〇〇六年十二月、一三年二月)し、米国の世界戦略を支える自衛隊の活動を「誠に意義深い」などと「激励」している。
 平成天皇は、一九九四年の硫黄島(東京都)、二〇〇五年にサイパン島、一五年にパラオ共和国、一六年にはフィリピン、一七年はベトナムを訪問した。これらはいずれも、米国のアジア戦略上重要な国・地域で、中国を西太平洋に押し込めるための地政学上の要衝である。
 新(令和)天皇も、五月末、即位後の最初の「国賓」としてトランプ米大統領を迎える予定である。
 現行憲法で、天皇は「国政に関する権能を有しない」とされているが、実際には、わが国を米国の鉄鎖の下に置くことを認める役割を果たしてきたのである。

国民統合の役割狙う
 こんにち、米帝国主義は台頭する中国を抑え込んで世界支配を維持するため、経済・政治・軍事すべてにわたる包囲と攻勢を強化している。
 安倍政権は米国のお先棒を担ぎ、軍事費の突出、集団的自衛権行使のための安全保障法制などで、中国包囲網づくりの先兵の役割を果たしている。憲法改悪策動も、その一環である。
 だが、米国が単独で中国を抑え込む力はない。米国は、日本をはじめとする同盟諸国にいちだんの対米貢献を求めてあがいている。
 わが国支配層や保守層内にも、「自国第一」の米国にどこまで従うべきか、疑問と動揺が広がっている。日米間の矛盾は、ますます深刻化している。
 安倍政権は、これらを乗り切るため、天皇がいちだんと対米従属の下での「国民統合」の役割を演じることを求めている。「強い日本」を掲げる安倍政権だが、実態は対米従属のワクを一歩も出ないものである。
 同時に、一連の天皇制賛美は、二十カ国・地域(G20)サミットなどと同様、統一地方選、参議院選、さらに総選挙をにらんでの政権浮揚策でもある。

屈服・追随する野党
 だが、議会内野党は安倍政権による天皇制イデオロギー攻撃に屈服・追随している。
 一九年度予算案が三月二十七非、参議院本会議で可決・成立したが、野党の態度は「祝賀ムードで対立回避」(日経新聞)と書かれるほどに腰砕けのものであった。
 闘う勢力の中にも、戦後天皇制が対米従属政治を支えたことを見抜けず、「平成天皇はリベラル」などと美化する向きが見られる。
 なかでも、かつて「天皇制廃止」を掲げ、弾圧に抗して闘った共産党は、堕落をきわめている。志位・共産党委員長は、天皇制が「人間の平等や民主主義とどうしても矛盾する」などと言いつつ、「天皇の制度とは長期にわたって共存していく」(「月刊日本」十二月号)などと、象徴天皇制が対米従属政治を支える装置であるという肝心な点を暴露していない。
 このような勢力に期待せず、象徴天皇制の政治的役割を見抜き、対米従属政治の打破のために闘わなければならない。   (K)