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2019年3月15日号 1面

ファーウェイ問題 
孤立し衰退する米国の悪あがき 
中国に対抗、技術覇権の維持狙う
 わが国財界にも深刻なジレンマ

  米国の「排除」要求に追随するな

   米トランプ政権は三月八日、ドイツに対し、中国の通信機器最大手・華為技術(ファーウェイ)による第五世代通信規格(5G)への参入を容認すれば、安全保障上の機密情報の共有などを制限すると警告した。

ファーウェイ敵視は焦りの反映
 これまで、米国は国防権限法を適用、ファーウェイなどの中国製品を「安全保障上の懸念」を口実に米政府や軍の調達から排除し、さらにカナダに要請して同社副会長を逮捕するなど、圧迫を強めてきた。今回の措置には、中国への攻勢でしゃにむに同盟国に同調を迫ろうという、米帝国主義の焦りが示されている。
 こんにち、米帝国主義は台頭する中国を抑え込んで世界支配を維持するため、追加関税などを使った通商要求にとどまらず、南シナ海での「航行の自由作戦」、台湾問題や新疆ウイグル自治区などの民族問題でも揺さぶりを強めている。その攻勢は、経済・政治・安全保障のすべてにわたる全面的なものである。
 ペンス副大統領は昨年十月、中国を「米国の民主主義に干渉している」などと、「宣戦布告」に等しい非難を浴びせた。「米中対立は習近平政権が終わるまで続く」(ルトワック・戦略国際問題研究所[CSIS]シニアアドバイザー)との発言に示されるように、米国がやり玉にあげているのは、中国の国家体制そのものである。
 とくに米国は、中国の国家経済戦略である「中国製造二〇二五」を阻止することをもくろんでいる。とくに5Gは、IoT(モノのインターネット)、ビッグデータ、AI(人工知能)などの次世代技術の基盤となる技術である。
 ファーウェイは米国企業から年間百億ドルもの製品を輸入している。ファーウェイなどへの制裁は、米国企業にも相当の「返り血」となる。
 それでも、米国は国益の維持をかけ、あらん限りの手段を使って策動をエスカレートさせている。5G技術において先行する中国を抑え込み、巻き返さない限り、米多国籍大企業が覇権を維持することはできないからである。ファーウェイに対する圧迫はこの策動の「環」である。
 米国は、三月から実施予定であった中国への追加関税を延期したが、米中間でファーウェイ問題での合意に向けた前進はない。中国の王毅外相が「我々が守らなければならないのは自らの科学技術を発展させたい全ての国家の権利」と述べていることは当然である。

米国に追随しない国多数
 米国が同盟国に同調を迫っていることに関して、オーストラリア、ポーランド、台湾などは追随する構えである。
 一方、ドイツはファーウェイ製品を「禁止する法的根拠はない」とし、同社による研究所の新設を歓迎した。ゼーホーファ内相は、同社を排除することが「ドイツ経済に悪影響を及ぼす」と述べている。フランスも、ファーウェイとの通信インフラの構築を「歓迎」すると表明した。
 米国にとって最大の同盟国である英国でさえ、「リスクは管理可能」(ヤンガー情報局秘密情報部=MI6長官)と明言、一線を画する構えである。英携帯通信大手ボーダフォンも、米国に「(排除を求める)証拠を示すべき」と迫っている。政府ネットワークからファーウェイを排除したカナダでさえ、「5Gに関しては排除する理由はない」との方針である。
 英国やカナダの態度は、重大な政治的影響力を持っている。これは、通信傍受システム協定(UKUSA協定※)に参加する「ファイブ・アイズ」(米国、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)が揺らぐことを意味するからである。
 帝国主義と中小国・人民の間の矛盾だけでなく、帝国主義国間の矛盾も深まっている。仮に今後、諸国が米国に追随する結果になったとしても、米国が「容易に屈服させらなかった」という事実は残る。
 米帝国主義を先頭とする帝国主義の世界支配を打ち破ろうとする中小国・人民、被抑圧民族にとって、大いなる好機である。

ジレンマ深める財界
 日本にとっては、米中の狭間で国の進路が問われる切迫した事態でもある。米国の理不尽な要求に屈するのか、断固としてはねのけるのかが問われている。
 安倍政権は米国の中国対抗策の先兵役を務めている。安倍政権はファーウェイへの制裁に同調、国内携帯各社もこの措置に追随した。「サイバー防衛」を口実に、防衛関連企業に米国基準の対策を要求する方針だが、これもファーウェイなど中国企業を排除することになる。
 だが、ファーウェイ問題の「とばっちり」を食うわが国財界のジレンマは深い。ファーウェイは、中国企業で初の経団連加盟企業である。「ファーウェイはコストも安く、技術的には先の世代を見ている」(宮川・ソフトバンク副社長)との見解もある。また、ファーウェイは、日本製電子部品の大口顧客である。液晶パネル、CMOSイメージセンサー、法人向けサーバなど、ファーウェイの日本からの調達額は、二〇一七年で約四千九百十六億円にも達する。この利益が消失、減少することは、わが国財界にとっては恐怖であろう。
 しかも、現在中国に向けられている米国の要求が、いつ日本に向けられないとも限らない。日米物品貿易(TAG)交渉はその最初の難関である。
 まさに、わが国支配層は戦々恐々(せんせんきょうきょう)としている。
 対米従属政治を転換させるための、広範な戦線を形成する一般的条件が広がっている。
 安倍政権は、ファーウェイ問題で同社の名指しを避けるなど、中国に「配慮」するかのような姿勢も見せている。わが国支配層の一定の「自主性」、対米矛盾のあらわれでもある。
 だが、安倍政権はしょせん、対米従属の枠を一歩も越えられず、「自主性」は欺まんにすぎない。
 ファーウェイ問題をはじめとする対中包囲網に与せず、安倍政権の欺まんを打ち破って、独立・自主の進路をとることこそ、わが国の活路である。
 労働組合、労働運動活動家は、国民的戦線の中心的組織者として力を尽くさなければならない。 (K)

※UKUSA協定=通信傍受システム「エシュロン」を運営し、世界中でスパイ活動を行っている。これを主導する米国が、証拠さえ示さないまま中国を非難し、ファーウェイを制裁することなど論外である。 


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