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2019年3月5日号 1面

米朝首脳会談/
共同文書に署名せず

  朝鮮は屈服要求を拒否

   ベトナムのハノイで開かれた二回目の米朝首脳会談は二月二十八日、合意文書に署名しないまま終了した。結果をめぐり、さまざまな論評がある。
 外交であるから明らかになっていない部分もあろうが、多くの見解は、米帝国主義による朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)への敵視と体制転覆の策動を隠すか、免罪している。
 共産党が典型である。志位委員長は会見で、米朝両国が共同で「非核化と平和構築という事業」に取り組んでいるかのように描き出し、将来についても「楽観論一辺倒」である。米帝国主義は、いつから平和勢力になったというのか。

朝鮮半島危機の根源は米国
 そもそも、朝鮮半島の緊張の元凶は「朝鮮の核」ではなく米帝国主義にある。
 米軍が「核の使用」を検討し、数百万人が犠牲となった朝鮮戦争は未だ「休戦状態」のままで、終わっていない。
 米国は朝鮮を正統な国家として認めず、朝鮮が一貫して求め続けた「平和条約」は無視された。朝鮮が核開発に成功する以前から、米国は朝鮮への敵視と包囲を続けている。
 一九九四年の米朝「核合意」は、米国が約束した制裁解除を実施しなかった。ブッシュ政権は二〇〇二年、朝鮮をイラク、イランとともに「悪の枢軸」とののしり、核を含む先制攻撃による転覆を公言した。
 朝鮮が「核・ミサイル」開発を進めたのは、国の安全と民族の尊厳を守るための当然の措置で、完全に正しい選択である。
 核施設の「無能力化」で合意した六者協議も、オバマ政権が「戦略的忍耐」を掲げて対話に応じず、さらに人工衛星発射を口実とした制裁強化でとん挫した。
 一七年に登場したトランプ政権は、「すべての選択肢がテーブルの上にある」と、武力攻撃をちらつかせて朝鮮をどう喝した。さらに国連を動員し、中国も引き込んで制裁を強化した。
 米国が台頭する中国への攻勢を「第一の課題」とするに至ったという情勢にも規定され、トランプ政権は首脳会談に応じた。

「一方的非核化」は不当
 米国がめざすのは朝鮮の「一方的非核化」であり、その上で朝鮮を市場経済に巻き込んで反米国家でなくし、あわよくば、安全保障上も「中国ののど元に突きつけた刃」とすることである。米国が掲げる「完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)とは、事実上、「非核化しなければ武力攻撃する」ということと同義である。
 朝鮮の狙いは、朝鮮戦争の終結と自国の体制保証である。そのためにも「非核化」は在韓米軍を含むもので、最低でも米軍の縮小は譲れないのは当然である。
 共産党の平和ボケした見解とは異なり、米朝は互いにめざすところはまったく異なる。昨年六月、シンガポールで合意した(1)新しい米朝関係の確立、(2)朝鮮半島における平和体制の構築、(3)朝鮮半島の完全な非核化でさえ、その意味する内容は異なっていた。
 米朝両国は、当初から「同床異夢」なのである。
 さらに朝鮮が、イラクとリビアを教訓とし、米国が求める一方的非核化に応じず、非核化プロセスと経済支援や制裁解除を同時並行させることを主張しているのも当然のことである。イラク・フセイン政権は米国の武装解除要求に応じたが、〇三年に「大量破壊兵器」のデマを理由に攻撃され、政権は転覆させられた。リビア・カダフィ政権は「核放棄」を宣言して経済制裁を解除されたが、一一年の内戦に米欧が介入、これまた崩壊させられた。こんにちもベネズエラへの軍事介入を策動している。
 自国の安全保障を他国に頼っては独立国ではあり得ない。米帝国主義に「善意」を期待することはできず、いささかの幻想を抱くこともできないのである。
 わが党はこうした経過を知った上で、平和を願う南北朝鮮政府と人民、アジア・全世界人民の願いを考慮し、米朝首脳会談の開催を「歓迎」したのである。

米国内の矛盾が大きく反映
 米朝首脳会談に先立ち、朝鮮への人道支援、連絡事務所の相互開設、寧辺核施設の廃棄、開城工業団地及び金剛山観光の再開などで合意するという報道が流れ、一部には「終戦宣言」に言及するものもあった。
 だが、会談は合意がないまま終了した。トランプ米大統領は「朝鮮が完全な制裁解除を求めてきたので応じられなかった」と説明した。朝鮮は、要求したのは制裁の一部解除であったとし、米国が寧辺地区以外の「核施設」廃棄を主張したためと反論している。
 主要因は、米国内の事情であろう。
 トランプ政権は、経済と財政危機の深まり、「ロシア疑惑」、民主党の反発など、数々の難題を抱えていた。トランプ政権は二〇年の大統領選挙を控え、朝鮮問題で政権浮揚を狙ったが、民主党はコーエン元顧問弁護士への公聴会を米朝会談当日にぶち当てて揺さぶった。
 米国の支配層内には、「『悪い合意』より『合意なし』の方がよい」という判断がある。政権内でも、ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)らが「会談に実りがなければ交渉の席を立つ」よう、トランプ大統領をけしかけた。

朝鮮の闘争は続く
 トランプ大統領は三回目の会談を行う可能性を示唆(しさ)したが、時期は示さなかった。今後の交渉進展の可能性も消えてはいないが、ハードルはより高くなる可能性が高い。
 仮に朝鮮が米国に屈し、一方的な「核廃棄」に応じれば、みせかけの「平和」は実現できるであろう。だがそれは、米帝国主義の下にアジアの中小国・人民がひざまずく「奴隷の平和」にすぎない。
 確かなことは、朝鮮は米国による居丈高な要求に応じなかったことである。また、文・韓国政権は「対話の勢いを維持していくためにあらゆる努力をする」と表明、平和と統一に向けた意思が揺るがないことを示した。
 わが党は、南北朝鮮・人民の平和と統一のための闘いを断固として支持する。朝鮮が自国の安全のために頼るべきは、米帝国主義の「約束」などではなく、南北朝鮮の労働者階級・人民、さらに全世界の労働者階級と被抑圧民族の闘いなのである。
 ひるがえって、安倍政権は一貫して「カヤの外」である。「トランプ氏の決断を全面的に支持する」などとあくまでも米国に追随し、朝鮮への敵視と排外主義をあおり立てている。
 安倍首相は、「私が金委員長と向き合わなければいけない」などと、首脳会談に「意欲」を示したが、〇二年に日朝平壌宣言に合意した小泉政権ほどの「自主性」さえ期待できるものではない。
 アジアの平和のため、即時・無条件の日朝国交正常化を求める世論を早急に高めなければならない。
 南北朝鮮・人民との友好交流、排外主義に抗する運動などを結びつけ、独立・自主の政権をめざす闘いへと発展させるため、労働者階級は認識と隊伍を整えなければならない。 (K)


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