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2019年2月25日号 1面

日韓関係/
排外主義あおる安倍政権許すな

  対米従属政治への怒りをそらし
「強い日本」演出する欺まん策

   安倍政権が、韓国に対する理不尽な排外主義を強めている。マスコミも使ったキャンペーンは、もはや「敵視」に近いとさえいえる異常なものである。
 河野外相は二月十五日、ドイツのミュンヘンで康京和・韓国外相と会談した。会談は一月二十三日のスイスでの会談に続くもので、元徴用工訴訟での資産売却問題や、文喜相・韓国国会議長が従軍慰安婦問題で首相か天皇の謝罪を求めた問題、韓国駆逐艦によるレーダー照射問題などが取り上げられた。
 だが、問題解決への合意はできず、両国の関係改善は容易ではない。
 安倍政権は施政方針演説では日韓関係に触れないことで、関係打開への消極姿勢を見せた。さらに、第三国を交えた仲裁を検討、国際司法裁判所(ICJ)への提訴さえ策動している。自民党内には、駐韓大使の召還や防衛関連品の対韓輸出規制、韓国製品の輸入関税引き上げや訪日ビザの免除停止などを求める声も出ている。
 マスコミは「対抗措置取り無法を正せ」(産経新聞)などと、韓国への敵視をあおり立てている。
 まさに官民一体となった排外主義扇動である。
 日韓関係の悪化は、安倍政権に全責任がある。

・元強制労働者問題
 韓国大法院(最高裁)は昨年末、三菱重工業に対し、韓国人元徴用工(強制された労働者)や元女子勤労挺身隊員への損害賠償を認めた。これは、新日鉄住金に対する判決に続くもの。原告は韓国内で新日鉄住金の資産を差し押さえ、売却に向けて動いている。
 日本政府は、賠償は「日韓請求権協定で解決済み」と、従来の立場に固執している。一方で日本政府は、米軍が広島・長崎に投下した原子爆弾による被害について、日本国民による「個人としての」対米請求権を認めている。まさに二重基準もはなはだしい。
 問題の根本は、日本政府が朝鮮半島に対する侵略と植民地支配を「合法」とする無反省な姿勢をとっていることである。植民地主義が不法・不当であることは言うまでもなく、大法院の判決はきわめて常識的なものである。

・駆逐艦レーダー照射問題
 岩屋防衛相は昨年末、海上自衛隊哨戒機が韓国駆逐艦から火器管制レーダー照射を受けたとして、「きわめて危険」などと韓国政府を非難した。発表は、韓国が「遭難した朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)船舶を捜索するためにレーダーを稼働した」と伝えたことを無視し、一方的になされた。安倍官邸は韓国軍のレーダー探知音を公開するなど、問題をエスカレートさせている。
 安倍政権は「米軍なら即座に撃沈」などと粋がっているが、類似の事案は世界で日常茶飯事に起きている。冷戦下の米ソ間でさえ、海上事故防止協定で禁じる「危険行為」にレーダー照射は含まれていなかった。だからこそ、右翼の田母神元航空幕僚長でさえ「(照射は)危険ではない」と述べているのである。
 本来、日韓の制服組同士で「抗議」レベルで済む問題をことさらに騒ぎ立てる安倍政権の態度は、断じて許せるものではない。

・従軍慰安婦問題
 韓国政府は昨年末、従軍慰安婦問題に関する「和解・癒やし財団」の解散を発表した。同財団に対しては、朴前政権当時から世論の反発が強く、文在寅政権はこれに応えたのである。
 さらに、文喜相・韓国国会議長が従軍慰安婦問題について「首相もしくは近く退位する天皇が(元慰安婦の)手を握り本当に申し訳なかったと一言いえば、問題はすっかり解消される」と述べた。
 旧日本軍による従軍慰安婦の強制は歴史的事実だが、わが国歴代政権は真摯(しんし)な反省を行わっていない。植民地支配は、明治以降の天皇の名において行われた。わが国政府・与党が「無礼」と粋がったとしても、文議長の発言は常識に照らしても、さらに韓国民の心情としても、当然のものである。

・東京五輪の合同チーム
 韓国と朝鮮が、二〇二〇年の東京五輪でバスケットボール女子、柔道など四競技で合同チームを結成する見通しとなった。七十年以上分断された南北朝鮮が、スポーツを機会に融和と統一の歩みを進めることは、隣国として、また五輪開催国として大いに歓迎すべきことである。
 しかるに、マスコミは「政治利用」(産経新聞など)と難クセを付け、朝鮮半島とアジアの平和に背を向けている。

 安倍政権の「ウリ」であったアベノミクスはすでに破綻している。日銀による金融緩和はもはや限界に達し、多額の政府債務によって財政出動もこれ以上持続できない。政権が力説してきたわずかな「成長」さえ、「統計不正」の暴露によって根拠が崩れた。消費税増税や社会保障制度の相次ぐ改悪などで国民の不満は高まっている。
 安倍政権は成立当初から「強い日本を取り戻す」と呼号してきた。昨年からは「戦後外交の総決算」を掲げ、軍備増強や北方領土問題の「解決」をあおるなど、わが国の「自主」「独立」を実現するかのような欺まんを繰り返している。
 これは、国民の大国意識をあおることで、政権への不満をそらし、政権浮揚を図る狙いも込められている。統一地方選挙、さらに参議院選挙が迫り、衆参同日選挙も想定されるなか、安倍政権はこうした策動への依存を深めている。
 安倍政権は、韓国に対する排外主義だけでなく、六月の日ロ首脳会談、さらに大阪での二十カ国・地域(G20)首脳会議などを最大限に利用しようとしている。
 だが、安倍政権の実態は対米従属の枠を一歩も超えるものではなく、「自主」「独立」の喧伝は欺まんにすぎない。
 わが国が対米従属政治に縛られ続ける限り、日韓関係の真の改善はあり得ない。アジアとの関係で歴史問題が繰り返し浮上するのはなぜか。戦後のわが国が「米国の庇護(ひご)」の下にあることで、侵略と植民地支配に対する謝罪と補償、関係者の処罰のないまま、アジアとの関係をつくってきたからである。
 枝野・立憲民主党代表は、元徴用工問題での判決に対し「大変、残念」という態度である。レーダー照射でも、その政治問題化には距離をおきつつ「明らかにわが方に理がある」と述べている。排外主義に唱和するもので、安倍政権と闘えない。
 労働組合、先進的労働者は、排外主義に抗して闘わなければならない。併せて、安倍政権による「独立」の欺まんを見抜いて闘うべきである。  (O)


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