ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2019年2月15日号 1面

軍事費 
安倍政権、米戦略に
追随し大軍拡 
「自主」掲げた欺まんを打ち破れ

  中国に対抗しアジアの平和脅かす

   安倍政権は昨年末、新たな「防衛計画大綱」と、それに基づく「中期防衛力整備計画」(中期防)を閣議決定、約二十七兆四千七百億円の大軍拡を決めた。両文書は、「従来とは抜本的に異なる速度で」防衛力を増強し、日米同盟を強化するとしている。新中期防の計画額は、現中期防を二兆八千億円も上回るものである。
 これに基づき、二〇一九年度予算案では防衛費に五兆二千五百七十四億円を計上した。これには、沖縄県民の意思を踏みにじっての、名護市辺野古への新経地建設費も含まれる。
 安倍政権下、すでに防衛費は七年連続で増え続け、五年連続で過去最高を更新している。ここ四年間は、連続して五兆円を超える規模に拡大しており、文教費とほぼ同額となっている。
 中期防は、戦後最大規模の大軍拡計画である。F35ステルス戦闘機は、次期中期防期間を含めて百五機(現有と合わせて百四十七機)、KC46A空中給油機を四機、E2D早期警戒機を九機、無人偵察機グローバルホーク一機、陸上配備型ミサイル迎撃システム(イージス・アショア)を二基設置、護衛艦「いずも」など二隻の空母化などである。
 これらのハイテク兵器を導入し、「宇宙・サイバー・電磁波を含む全ての領域を横断的に連携」させる「多次元統合防衛力の構築」を進めるというのである。とくに、護衛艦の空母化やイージス・アショアは、事実上、敵基地攻撃能力の保有を意味する。「専守防衛」、憲法第九条に反するものである。

米戦略に追随し中国に対抗
 中期防による大軍拡は、米国のアジア戦略を支えるためのものである。
 米帝国主義、トランプ政権は、台頭する中国を抑え込み、世界支配を維持するための策動を強めている。一八年一月に策定された「国家防衛戦略」では、中国との「長期の戦略的競争」と明記、ペンス副大統領は十月、「中国は米国の民主主義に介入している」などと、事実上の「宣戦布告」まで行った。
 米国の攻勢は、通商分野のみならず、科学技術、政治、安全保障を含む全面的なものとなっている。しかも米国は、それを「同盟国の負担」で実現しようとしているのである。
 安倍政権は米戦略に追随し、防衛費の増額だけでなく、集団的自衛権の容認やそのための安全保障法制、特定秘密保護法などの制定、自衛隊の南西諸島への重点配備などを矢継ぎ早に進めている。
 大綱は、中国、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を「強い懸念」「重大かつ差し迫った脅威」などと名指しした。中でも、中国を「パワーバランスの変化」の主因として描き、対抗する意思を明確にさせた。
 具体的には、米軍「艦艇、航空機等の防護」、後方支援やなどを「いっそう積極的に実施する」としている。まさに、米軍と肩を並べて武力行使を行うというのである。
 中国が新大綱に「強烈な不満と反対」(外務省)を表明したのは当然である。
 これは、米国の要求に忠実に従うものであると同時に、世界中に権益を有するようになった、わが国多国籍大企業の利益を守るためのものである。

米軍需産業に多大な奉仕
 ハイテク化によって、兵器の価格が上昇している。たとえば、F35Aは一機約百十六億円、イージス・アショアは一基当たり約一千二百二十四億円とされている。ただ、これはあくまで試算であり、米国からの購入時にはさらに上昇する可能性がある。実際、垂直着陸が可能なF35Bは、同Aに比して三十億円近く割高だとされる。
 これらは、米国に価格決定権がある有償軍事援助(FMS)制度に基づいて購入される。FMS額は年々増大しており、一九年度予算案では七千十三億円と、前年度比二千九百十一億円も増加、第二次安倍政権成立直後の約六倍にも増大してる。
 トランプ大統領は、安倍政権の態度を「高く評価」している。トランプ政権を支える基盤の一つである米軍需産業にとって、安倍政権は「上得意先」にほかならない。
 だがこれは、わが国が戦略や指揮系統だけでなく、装備面からも、ますます米国に依存することを意味する。とくにF35は当初、「自主開発」を求める支配層の一部の意見に配慮して機体の四割程度を日本でライセンス生産し、あわよくば第三国に輸出することになっていた。
 結局、パーツ以外は高価な完成品を輸入することになったわけで、国民の血税、国富は、ますます米国に収奪される。

「自主」装う欺まん
 米国からの多額の武器購入には、元制服組や元防衛官僚などからさえ、「安全保障上の自主性が失われてしまう」(山下裕貴元陸将)など、懸念の声が上がっている。イージス・アショアに対しては、山崎拓元幹事長も「わが国の防衛に必要ない」と断じている。
 だが、安倍政権は「主体的・自主的」という言葉を使って、米戦略追随の軍事大国化を推し進めている。新大綱、さらに一月の施政方針演説においても「わが国自身の主体的・自主的な努力」などと繰り返している。
 これは、徹頭徹尾の対米追随を隠し、国民を欺く術策である。
 世界的な経済の減速、株価下落、「統計不正」などで、アベノミクスの破綻は白日の下にさらされている。消費税増税や社会保障制度の相次ぐ改悪、「格差」拡大などで、国民の不満は高まっている。
 安倍政権は「自主」を掲げ、国民の大国意識をあおることで国民の不満をそらし、政権浮揚を図ろうとしている。だが、安倍政権が推し進める内外政策、とくに安全保障政策は対米従属の枠を一歩も超えるものではない。
 それでも、安倍政権の欺まんは、国民諸階層の支持をひきつけるのに一定「成功」している。
 統一地方選挙、参議院選挙が迫り、さらに衆参同日選挙が想定されるなか、安倍政権はますます欺まん的な策動への依存を深めている。
 米軍基地新設に反対する沖縄県民の粘り強い闘いは、安倍政権を揺さぶり続けている。イージス・アショアが配備される予定の秋田県、山口県では、すでに保守の首長を含む反対運動が起こっている。日米地位協定の改定を求める運動も各地で取り組まれている。こうした闘いを全国で巻き起こし、安倍政権を追い詰め、打ち倒そう。
 労働組合、先進的労働者は、安倍政権の欺まんを見抜き、暴露し、広範な国民的戦線をつくって闘わなければならない。  (K)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2019