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2017年10月25日号 1面

超党派報告、ルトワックなど
対日要求を背景に激しさ増す

米国の対日世論操作を打ち破れ

  衰退を早める米帝国主義は、台頭する中国を抑え込んで世界支配を維持しようとしている。
 オバマ政権時代から、米中関係はサイバー領域を含む「広義の戦争状態」にあった。
 トランプ政権は、これをいちだんと公然たる、激しいものとさせている。中国に対する通商要求や対米投資への規制だけでなく、南シナ海での軍事挑発、台湾への武器売却、新疆ウイグル自治区における「人権」問題での干渉など、全面的なものとなっている。とくに、中国の国家戦略である「中国製造二〇二五」を阻止しようと必死である。
 さらに、ペンス米副大統領は十月四日、中国を通商などの経済、外交・安全保障面で厳しく批判した。「中国は米国の民主主義に介入している」とまで難クセを付けた。
 これは事実上の「宣戦布告」とも言うべきものである。「ニューヨークタイムズ」は演説を「新冷戦への号砲」と書き、ドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル」も「北京への宣戦布告」と評価した。
 米中間の軍事衝突さえ想定可能な、緊張した情勢である。

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 こうしたなか、アーミテージ元国務副長官、ナイ・ハーバード大教授ら米国の超党派グループは十月三日、報告書「二十一世紀における日米同盟の刷新」を発表した。中国や朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を「脅威」と名指しし、日米同盟強化を力説したものである。
 具体的には、日米による「合同統合任務部隊」の創設、米軍と自衛隊基地の共同運用、日本の国内総生産(GDP)一%以上の防衛費支出、中国による「一帯一路構想」に対抗した日米による「インフラ整備基金」などを提言している。
 さらに、十月に来日したルトワック米戦略国際問題研究所(CSIS)シニアアドバイザーは、ペンス演説を「単なる政治演説ではなく、国家声明」と評価した。併せて、商業新聞へのインタビューで「米中対立は中国共産党政権が崩壊するまで続く」とし、中国の中長期的な「体制転覆」を公言している。
 さらに、日米同盟の強化を前提にわが国に長期戦への「覚悟」を迫り、具体的には、シベリア開発などロシアとの協力(資源を中国に渡さないための中ロ分断策)、独力での離島防衛を前提にした国を挙げた計画策定、自衛隊による先制攻撃能力の保持を求めている。
 さらに「日本は戦略を持つべきではなし、大きな計画をつくるべきではない」などと、独自の外交戦略を否定する。これは事実上、「日本は米国の戦略に従っていればよい」ということである。
 警戒すべきは、ルトワックの著作が次々と、しかも一般国民が手に取りやすい新書本として発売されていることである。「中国4・0」(二〇一六年三月)、「戦争にチャンスを与えよ」(一七年四月)、この秋にも「日本4・0」(一八年九月)と、まさに矢継ぎ早である。
 ルトワックの役割は、わが国に対する世論工作である。

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 こんにち、衰退する米国の世界戦略は、日本の支援と負担なしに成立し得ない。だがこれは、当然にも、日米矛盾を激化させずにはおかない。現に、日米物品貿易協定(TAG)、為替問題、防衛費負担などの対日要求が強まっている。
 わが国支配層、安倍政権さえ、どこまで負担を負いきれるか、不安とジレンマを深めている。自民党の閣僚経験者さえ、「(日米安保条約が)今後も安定的なものであるかどうか、かなり疑問」と発言するような事態である。支配層内部の分岐は、いちだんと広がることになろう。
 米国は、日本国民、とくにわが国支配層の動揺を沈静化する必要に迫られた。その任務を負ったのが、ルトワックである。
 これまでも米国は、この役割を果たす人物を日本に送り込み、著作などで世論工作を行ってきた。
 「米国の世紀は終わらない」(ジョセフ・ナイ)や「China2049」(マイケル・ピルズベリー)は、安倍政権が国民多数の反対を押し切って、安全保障法制を強行成立させた一五年秋に刊行された。日本国内で、「米国の戦争に巻き込まれるのではないか」という不安が広がっていた時期である。
 とくに、ピルズベリー(ハドソン研究所中国戦略センター所長)は、「中国がやがて民主的で平和的な国になる」と考えた歴代米国政府の認識は誤りであるなどとし、中国による「世界覇権戦略」との闘いを宣言している。
 ルトワックの役割は、これらを継ぐものである。
 米国の対日世論工作は失敗することが必至である。いくらわが国世論を締め付けたところで、米国の対日要求は止むことはなく、米国にも「手加減」する余裕はない。自動車や農産物、為替といった対日要求の激化は、支配層を含むわが国諸階層に、必然的に、対米従属路線の是非を迫ることになる。
 中長期的には、「事物の論理」は「意図の論理」に勝るのである。
 わが国とアジアの平和と繁栄のため、労働者階級は米国による対日世論操作を見抜き、闘いを強めなければならない。   (K)


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