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2017年9月15日号 2面・解説

米国、中国への制裁拡大を画策

日本も「貿易戦争」の対象に

  トランプ大統領は九月七日、中国からの輸入品に対して、新たに二千六百七十億ドル(約二十九兆八千六百億円)相当の追加関税を課す意思を表明した。トランプ政権による「貿易戦争」は、ますますエスカレートしている。この狙いは、台頭する中国を抑え込み、世界支配を維持することである。米国のあがきはいよいよ本格化し、わが国もらち外にはいられなくなった。世界を地獄の道連れにしかねない米帝国主義に対する闘いを強化し、独立・自主の政権を樹立することだけが打開の道である。


 トランプ大統領は「中国側の動き次第」としつつ、「二千億ドル規模の中国製品に対する関税措置が近く発動される可能性がある」とした。さらに、「私が望めば、さらに二千六百七十億ドル相当の追加関税を急きょ発動する用意がある」と述べた。

さらに本格化する貿易戦争
 トランプ米政権による対中制裁は、鉄鋼・アルミニウムに始まり、知的財産権の侵害を口実として七月に三百四十億ドル(約三兆八千億円)相当、八月には百六十億ドル相当の中国製品に二五%の追加関税が課された。これにより、生産機械、化学品・医薬品、自動車や航空宇宙産業などが制裁対象となった。
 検討されている二千億ドル分の追加関税については、パブリックコメント(意見公募)期間が九月六日に終了している。近く、カメラ、レコーダー、掃除機、ハンドバッグ、タイヤなどに対し、一〇〜二五%の関税が課される可能性が高い。
 これに加えて二千六百七十億ドルの追加関税となれば、これまでの追加関税と合わせ、中国からの輸入品のほぼすべてが制裁対象となる。
 これに対し、中国は米国からの液化天然ガス(LNG)、豚肉やワイン、果物などに報復関税を発動させている。
 トランプ大統領は、今後の対中制裁について「状況は一転する」と述べたが、まさに、米国による「貿易戦争」は、抜き差しならない局面に突入した。

企業買収や技術でも難クセ
 米国の対中制裁は、追加関税だけではない。
 トランプ大統領は八月、国防権限法(NDAA)に署名、中国の華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)と米国政府との取引制限を打ち出した。他の数社も制限対象とされた。すでにZTEについては、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)とイランへの輸出を口実に、米国企業との取引を七年間禁じている。併せて同法には、外国による対米投資を安全保障の観点から審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の権限を強化する規定が盛り込まれた。
 中国企業による米企業の買収は、これまでも何度か、米政府の介入で阻止されてきた。これをさらに強化し、審査対象を少額投資や合併企業の設立から投資ファンドにまで広げた。外国人による機密情報へのアクセス制限も強化される。
 商務省も、中国軍系の企業や研究機関など四十四社・機関を輸出管理規制の対象に指定した。
 これらの措置は、十一月の中間選挙での勝利を目的としているだけではない。
 中国企業の技術的発展、具体的には産業政策である「中国製造二〇二五」を抑え込み、中止させることで、技術競争に勝ち残ることが狙いなのである。
 産業競争力の基礎となる技術力は、安全保障でも重要な役割を果たす。ひいては、安全保障と経済力のいずれにおいても、先端技術で圧倒的優位に立つ国が、世界の覇者に近づくからである。

「人権」、安保でも圧力
 さらに最近では、中国・新疆ウイグル自治区の「人権」問題を口実に、十一日、「深い懸念」などと表明、この方面でも経済制裁を検討している。
 安全保障面では、南シナ海などをあげつらってアジアの分断を図り、インドとの連携強化で中国包囲網の形成を強めている。朝鮮の「非核化」においても、「中国の責任」を声高に叫び、追い詰めようとしている。
 トランプ政権は昨年十二月に打ち出した「国家安全保障戦略」で、中国を「修正主義勢力」と名指しした。同戦略は、南シナ海問題などを口実に、中国への対抗をあらわにさせている。
 以上の諸策動は、この戦略の下で行われている。米国の対中対抗は経済・政治・安全保障など全面的なものとなっており、台頭する中国が自らの世界支配を脅かすことを許さず、抑え込もうとしているのである。
 米中とも国内の政治的要因から、簡単に妥協することはできない。とくにトランプ政権は、衰退する製造業労働者の不満をあおって政権にありついただけに、なおさらである。
 「米国第一」を掲げたトランプ政権の策動は「歴史の歯車」を逆に回そうというものである。
 以降の数年にかけて、曲折はあれ、米中矛盾はいちだんと激化しよう。
 トランプ政権の通商政策に対しては、中国からの反発はもちろん、欧州や隣国・カナダなどからも批判が強まっている。中東諸国・人民も、あまりの「親イスラエル」政策に不満を高めている。アジア諸国も、米国の対中政策とは一線を画している。
 米国内でも、トランプ政権の政策への批判は、財界なども含めて広がっている。
 トランプ政権の策動は悪あがきにすぎず、その破綻は必至である。

日本も標的に
 トランプ政権による通商要求は、日米同盟下にあるわが国も例外ではない。
 トランプ大統領はこれまでも日米首脳会談などで、日本の対米貿易黒字に不満を表明してきた。安倍政権は、米国からの武器購入拡大などで応えてきた。
 だが、ここにきてトランプ大統領は、対日要求をいちだんと強化する発言を繰り返し、日本との通商協議が物別れに終われば、日本側が「一大事になる」と、どう喝している。ウォルターズ報道官も、日本を名指しし「自由、公正、互恵的な貿易を訴える考え」を明言した。
 トランプ政権が当面注力している、カナダ、メキシコ両国との北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉などの先行きにも規定されるが、以降もこの要求が強まることは疑いない。
 九月末に予定される、日米閣僚級貿易協議(FFR)、さらにニューヨークでの日米首脳会談では、日米自由貿易協定(FTA)などの要求が強まろう。市場開放の中心は、農産物と自動車である。
 農産物のさらなる自由化は、わが国農業にトドメを刺すものとなる。
 仮に、米国が輸入自動車に対して二五%の追加関税を実行すれば、日本の輸出収入(四半期で百四十億ドル=約一兆五千六百億円)の中核が脅かされる。
 自動車大手は現地生産のさらなる強化で対応しようとするだろうが、当然ながら、日本国内の産業基盤は空洞化する。自動車業界は、関連を含めて、わが国最大の雇用セクターであり、これは労働者の雇用や労働条件、地域経済の先行きに直結する「激震」となる。
 歴代政府はこれまで、米国からの市場開放を中心とするさまざまな要求に応え、自動車を中心とする基幹産業を守るため、農業や中小零細の小売業などの国民経済を犠牲に差し出してきた。対日要求の激化は、この手法が限界に達することも意味する。
 日米同盟を維持しつつ、対中関係の改善を図り、わが国財界の利益も守ろうという安倍政権のもくろみは、ますます「曲芸的」困難さを増す。
 米国の圧力を毅然とはねのけ、アジア諸国との経済・政治・安全保障面での関係を抜本的に強化する以外に、わが国の生きる道はない。      (K)


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