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2018年9月15日号 1面

台風21号、北海道地震…
相次ぐ災害 
被災者のための
復旧・復興を急げ

 「総裁選にプラス」の暴言許すな

 まさに「災害列島」である。六月の大阪北部地震、七月の西日本豪雨に続き、「一つの災害」(気象庁)とされるほどの歴史的猛暑、九月に入っては観測史上最大値を記録した台風二十一号、さらに北海道胆振東部地震が、矢継ぎ早に日本列島を襲った。
 国民の生活と営業は、アベノミクスに加え災害でさらに痛めつけられている。

未曾有のブラックアウト
 九月六日に発生した震度七の北海道胆振東部地震によって四十人以上が死亡、行方不明者も依然として残り、千五百人以上が避難を強いられている。地盤の崩落、道路の寸断と液状化、鉄道の破損などのインフラの被害は甚大で、物流網も寸断された。
 野菜や乳製品をはじめ、北海道を生産地とする農畜産物にも巨大な被害が出ている。
 さらに、北海道全体約二百九十万戸が同時停電(ブラックアウト)に襲われるという未曾有(みぞう)の事態となった。とくに、入院患者や人工透析患者は生命の危機に直面した。
 苫東厚真火力発電所の緊急停止で道全域の「電力需給バランス」が崩れたためというが、国と電力会社の責任である。
 世耕経産相は、電力復旧について「数時間以内でメドをつける」と発表したが、すぐに「少なくとも一週間以上」と後退させる体たらくで、その後、期間はさらに延長された。この事態一つを見ても、政府は、実情把握さえ満足にできていないことを露呈した。
 原子力規制委員会による安全審査中であった泊原発(泊村)は、停電によって外部電源を喪失、原子炉冷却の継続が深刻な課題となった。海外メディアが事故の可能性に最大の関心を寄せたのは当然である。大事故に至らなかったのは幸いだが、原子炉停止中で内部に核燃料がなかったため、冷却が可能だったにすぎない。実態は、「あわや大惨事」だったのである。

関空事故は歴代政権に責任
 これに先立つ四日、台風二十一号が西日本、東海地方などを襲った。家屋やトラックが吹き飛ばされ、駅ビルの天井ガラスが崩落するなど前代未聞の暴風雨、高潮などによって十一人が死亡したほか、約二百四十万軒が停電した。
 関西国際空港も冠水し、機能停止に陥った。
 そもそも関空は建設中から、地盤沈下や津波への脆弱性が指摘されてきた。台風二十一号が「最悪」規模の台風であることは、あらかじめ分かっていた。それにもかかわらず、関空は「施設閉鎖」などの対策をとらなかった。
 連絡橋に衝突したタンカーは、台風襲来まで給油などの作業を行っていた。前日までに作業を終えていれば連絡橋への衝突はなかったのである。空港内に取り残された乗客の誘導などはさらにお粗末そのもので、約八千人もの乗客が暗闇の中に放置され続けた。
 関空は政府の規制緩和政策によって、一五年、オリックスなどが出資する企業に運営権(コンセッション)が売却された。
 このような構造の下、運営会社はベテラン職員のリストラなど合理化を強行した。「関空が原因ではない」(吉村・大阪市長)どころか、歴代政府と「維新」府政下で進んだ規制緩和と安全性無視の経営が、「乗客取り残し」という惨状の原因なのである。
 安倍政権は、こうした事実に目を塞ぎ、「再開」を発表した。何を根拠に「安全」と言えるのか。

住民のための復興を急げ
 一刻も早い行方不明者の捜索・救助、復旧・復興を急がなければならない。
 相次ぐ災害の影響で、ジャガイモ、ニンジンなどの野菜や水産物の値上がりが始まっている。被災地にとどまらず、国民生活にさらなる打撃となる重大な問題である。
 災害の背景として、「地球温暖化」や日本列島が「地震の活動期」に入ったことなどが指摘されている。だが、災害以前の「備え」や復旧・復興は、すぐれて政治問題である。
 安倍首相ら自民党は、国民の苦難そっちのけで総裁選挙の茶番に明け暮れている。総裁選では、石破元幹事長が国民の権利を制限する「緊急事態条項の創設」と明言するなど、憲法改悪、民主主義破壊への世論づくりも策動されている。
 安倍政権は、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)がミサイルを発射した際には、仰々しく会見を開くなどして敵視をあおり立てた。だが安倍首相は今回も、視察などを取りやめたものの、激甚災害への指定もいまだなされていない(十三日現在)。中小企業への補償適用はわずか三町のみで、圧倒的に不十分である。
 「国民の生命・財産を守る」と粋がる安倍政権だが、実態は国民の命を軽視し、切り捨てている。
 それだけではない。安倍首相を支持する議員が「選挙戦にプラスになった」と発言したという報道もある。安倍政権の性格を示す暴言である。
 政府は今後、財政出動などで、被災者・有権者の歓心をひこうとするだろう。
 安倍政権の進める大銀行・大企業のための「復旧・復興」に反対し、労働者・国民諸階層の利益を最優先する復興を対置して闘わなければならない。
 被災者生活再建支援法による支給額を大幅増額し、現在ではほとんど支援対象にならない「一部損壊」を組み入れるなど、支援対象も拡充すべきである。
 被災地の労働者には被災前と同等以上の賃金を保証し、政府の責任で職を確保すべきである。全国の労働者にも大幅賃上げを行い、すべての失業者に職を保証しなければならない。
 農地を失った農民には、国の責任で基盤整備を行わなければならない。漁業に必要な設備も同様である。中小零細企業への補償範囲を広げ、倒産や廃業を防ぐ無利子・長期の直接融資を実行すべきである。
 地方自治体は、住民への影響を直ちに調査し、住民生活を守る観点から対処すべきである。自治体による「ハザードマップ」(現在は水害が中心)の拡充なども必要である。
 同時停電を口実に、支配層は原子力発電所の再稼働を進めるべきとの世論誘導を進めているが、断じて許せない。すべての原子力発電所を廃炉にし、自然エネルギーをベースにした分散型発送電網の構築を急ぐべきである。
 これらに思い切った財政を投入し、必要なら国債の増発も行うべきである。財源は大企業への法人税増税、内部留保のはき出し、投資家への課税強化、さらには外貨準備である米国債の売却などでまかなえる。国民の汗と血で稼いだ富は、国民のために使われるのが当然だからである。あらゆる大衆増税、負担増加は許してはならない。
 こうした闘いは、国民大多数のための実力ある政権をめざす闘いとして発展してこそ前進できる。(K)


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