ホーム労働新聞最新号党の主張(社説など)/党の姿サイトマップ

2017年7月5日号 1面

米国、なりふり構わぬ「貿易戦争」 
売国安倍政権では国民生活守れぬ

要求はねのけ、国民経済再生を

 米国は世界に仕掛ける「貿易戦争」はますます激烈なものとなり、第二次大戦後最大規模のものとなっている。
 トランプ政権は六月十五日、「知的財産侵害」を口実に、中国製品への追加関税を発表した。産業用ロボットや電子部品などを中心に、五百億ドル(約五兆五千億円)分の製品に二五%の追加関税を課す。
 標的にされた中国は、農産物やエネルギーなどに対して、同規模の報復措置を発表した。
 トランプ政権は、中国通信大手・華為技術(ファーウェイ)と中興通訊(ZTE)の製品販売禁止措置なども行ったほか、中国企業を事実上の対象とし、対米投資の審査厳格化も打ち出した。トランプ大統領は、中国が進める製造業高度化計画である「中国製造二〇二五」を批判、計画をとん挫させようとしている。二千億ドル(約二十二兆円)の対中追加制裁の検討も表明した。
 トランプ政権が五月末、鉄鋼・アルミニウムへの追加関税を欧州連合(EU)、カナダ、メキシコに適用したことに対する反発も広がっている。メキシコがジャガイモや豚肉などに報復関税を課したのに続き、EUはウイスキーやオートバイなどに二十八億ユーロ(約三千六百億円)相当の報復関税を課し、カナダも鉄鋼や食品などに百六十六億カナダドル(約一兆四千億円)相当の報復措置を発表している。

米国の危機打開策
 米国の狙いは、急速な技術革新などで国際競争が激化するなか、他国の犠牲で、危機を深める自国経済を再建することである。戦略的には、台頭する中国を経済・政治・安全保障のすべての面で抑え込み、自国を凌駕(りょうが)することを許さず、世界支配を維持することである。持続不可能なまでに拡大した貿易赤字の削減、短期的には、今秋の中間選挙での支持獲得も狙っている。
 トランプ政権の通商政策の基礎とされる、ナバロ・カリフォルニア大教授の文書では、中国、カナダ、ドイツ、日本、メキシコ、韓国の六カ国を名指しし、「貿易戦争」の主たる対象としている。
 「貿易戦争」はトランプ政権だけの特殊な政策ではなく、危機に駆られた米帝国主義のなりふり構わぬ打開策なのである。

さらに進む米国の孤立化
 トランプ政権の策動は、当然にも、米国のいちだんの孤立を招いている。
 カナダのシャルルボワで開かれた主要七カ国(G7)首脳会議では、米国と他の参加国が対立した。トランプ大統領は、いったん合意した文書(コミュニケ)の承認を撤回するなど、「一対六」の分裂と混乱のうちに終わった。また、ユンケル欧州委員長も、米国を「全ての論理と歴史」に反していると厳しく批判している。
 全世界の労働者階級が自国政府と闘うだけでなく、被抑圧民族、中小国と連帯し、米帝国主義と闘って前進する好機である。米帝国主義の世界支配をよしとしない、一部の帝国主義国との足並みの乱れも利用し、戦略的に闘い、前進しなければならない。

醜態さらす安倍政権
 わが国安倍政権は、米国から制裁を受けながら抗議さえできず、醜態をさらしている。
 安倍政権は、日本を関税適用から除外するようトランプ大統領の「説得」を試みる一方、米国からの武器の大量購入や日本企業の対米投資促進などを約束することで機嫌をとろうとしている。併せて、米国抜きの環太平洋戦略的経済連携協定(TPP )や東アジア地域包括的経済連携(RCEP)などで「保険」をかけるべく、画策している。
 だが、トランプ大統領は、「安倍首相らはほくそ笑んでいる。そんな日々はもう終わりだ」と、対日要求を緩める気配はない。
 安陪首相による鉄鋼・アルミの適用除外要求はかわされ、結局、わずかな「緩和」にとどまった。安倍政権が日米首脳会談で受け入れた新たな通商協議(FFR)は、米国からの日米自由貿易協定(FTA)要求の地ならしである。これで、自動車や関連部品に対する追加関税をちらつかせた要求をかわせるはずもない。トランプ政権は、自らが一方的に離脱したイラン「核合意」を口実に、同国からの原油輸入の停止まで要求する理不尽さである。
 ドル体制にどっぷりと浸かり、対中国、あるいは対朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)で米国の支援を必要とする安倍政権には、対米報復関税を決めた諸国と比して自主性のない体たらくである。輸出の七六%、輸入の五二%を米国に依存するカナダでさえ、毅然とした態度で米国に臨んでいるのに、である。
 日米同盟を「絆」などと言い、トランプ大統領の就任前からシッポを振り、対米追随を深めることで中国に対抗しようとしてきた安倍政権の政策は、完全に行き詰まった。米国からの容赦のない対日通商要求だけではない。安倍政権は安全保障面でも、米朝首脳会談などのアジア情勢の激変の「らち外」に置かれ、孤立している。プーチン大統領が日ロ首脳会談後、「日本はどの程度、独自に物事を決められるのか」と苦言を呈したのも当然である。
 鉄鋼・アルミニウムへの追加関税の影響は数千億円に対し、自動車への追加関税が実施されれば、一兆円以上の影響となる。サプライチェーンや販売網などへの影響や為替変動なども考慮すれば、被害はさらに甚大なものとなる。自動車各社が制裁をかわずべく米国内への進出を加速すれば、国内産業はますます空洞化し、海外展開に付いていけない下請け企業は切り捨てられ、労働者は解雇され、地域経済は疲弊を深めることになる。
 トランプ政権によって、わが国国民経済、国民生活はさらなる危機に追い込まれる。

国民経済の再生を
 この事態に際し、わが国財界でさえ、「正直に言えば弱ったものだ」(小林・経済同友会代表幹事)など、危機感を深めている。
 安倍政権のように制裁解除を乞い願うことでは、この「トランプ津波」を防ぐことはできない。国民経済を守るための断固たる対応が必要である。カナダは米国への報復関税だけでなく、自国産業への支援策を決めた。こうした施策は独立国として当然で、参考になり得る。
 米国の理不尽な要求をはねのけ、独立・自主の国の進路を実現しなければならない。
 労働者・労働組合は自らの雇用や労働環境を守るために闘うだけでなく、国の独立のための闘いを主導し、広範な戦線をつくって売国・安倍政権を打ち倒さなければならない。(O)


Copyright(C) Japan Labor Party 1996-2018