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2017年6月25日号 1面

日朝会談を探る安倍政権 
敵視政策の破綻は隠せず

 日朝即時正常化めざし闘い前進を

 安倍政権が、日朝首脳会談の実現に向けて策動している。
 安倍首相は六月十八日、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との首脳会談で拉致問題の解決を図ると力説した。首相は「相互不信という殻を破って一歩踏み出したい」などと述べた。
 安倍政権の態度は、六月中旬の米朝首脳会談を受け、「圧力一辺倒路線から転換を図った」(朝日新聞)などと報じられている。
 わが国政府・支配層は、とくに二〇〇〇年代以降、朝鮮に対する敵視と排外主義をあおり立ててきた。これは、中国へのけん制を強めるための米国のアジア戦略に追随しつつ、多国籍大企業の海外権益を守るための政治軍事大国化を実現する上での口実であった。
 安倍政権は「強い日本」などと言い、この方向をいちだんと強化した。朝鮮や中国の「脅威」を口実にした、集団的自衛権のための安保法制、特定秘密保護法、武器輸出三原則の廃止、南西諸島への自衛隊重点配備、垂直離着陸輸送機オスプレイの配備、スパイ衛星の導入、「イージス・アショア」の導入策動など枚挙に暇がない。
 安倍政権は、こうした自らの所業を「反省」したわけではない。米国の衰退と中国の台頭、さらに米朝首脳会談の開催、トランプ米政権による「貿易戦争」の開始などといったアジア情勢の激変への対処を余儀なくされ、あがいている。
 それでもなおかつ、安倍政権は朝鮮を圧迫する米韓合同演習の実施を乞い願い、主要七カ国(G7)首脳会議やフィリピンとの外相会談などで、朝鮮制裁の「厳格な履行」を持ち出すなど、性懲(こ)りもなく敵視を喧伝(けんでん)して回っている。
 安倍首相は「(対朝鮮政策は)日米韓で完全に一致している」などと強がっているが、韓国の文在寅政権は二度の南北首脳会談を行うなど、人民の支持を背景に、朝鮮との融和を確固として進めている。朝鮮への敵視と核放棄に固執する米国でさえ、今のところは「『最大限の圧力』という言葉はもう使わない」(トランプ大統領)などという態度である。「核放棄」をめぐって米国と一線を画す、中国やロシアは言うまでもない。
 まさに、安倍政権は自らが続けてきた敵視政策に自縄自縛となり、孤立をきわめている。
 安倍首相がかねてから政治利用してきた拉致問題にしても、「主体的に責任をもって解決しなければならない」などとはいうが、実態は、米国や韓国に「解決」を依頼せざるを得ないほどの体たらくである。安倍首相は「拉致問題の解決なくして経済協力を行うことはない」などと粋がっているが、これとて、トランプ政権の態度次第であろう。
 対する朝鮮は「世界の嘲笑の種にしかならない」(朝鮮中央通信)と、安倍政権の足元を見ている。朝鮮が日本の経済支援を求めているのは事実だろうし、日朝首脳会談はいずれ行われるだろう。だが、安倍政権にとって「ハードルが上がった」ことは疑いない。
 対朝鮮政策だけではない。トランプ政権は鉄鋼・アルミニウムなどでわが国に追加関税を仕掛け(最近やや緩和させた)、自動車や農産物の市場開放、さらに日米自由貿易協定(FTA)の要求と、わが国に対しても「貿易戦争」を仕掛けている。
 米アジア戦略に追随し、その先兵役を務めてきた結果がこれである。安倍政権の朝鮮敵視政策は破綻し、対米従属政治も行き詰まった。
 米朝首脳会談を受け、保守層の中でさえ、朝鮮敵視政策への異論が噴き出し、模索の動きがある。河野元衆議院議長は「(朝鮮と)国と国の関係を正して、(拉致被害者を)帰してもらうという手順を踏まざるを得ない」などと述べている。日朝議連の動きもある。
 これまで、支配層の朝鮮敵視政策に付和雷同してきた野党や労働組合は、朝鮮との即時・無条件の国交正常化を実現するための国民運動を巻き起こさなければならない。対米従属政治と闘い、独立・自主の政権をめざす闘いを前進させるべきなのである。
 ところが、ほとんどの野党は、依然として朝鮮敵視で、安倍政権と同じ立場である。アジア情勢の変化と安倍政権の行き詰まりを見抜けなくなっている。
 たとえば、国民民主党の共同代表による「談話」は「政府の説明責任」を問うのみである。連合の相原事務局長談話も、安倍政権と大差ない。
 これでは総裁選を控えて政権浮揚に必死の安倍政権を暴露できず、闘えない。
 朝鮮との国交正常化は、わが国がアジアで生きていく上で必要不可欠な、民族的課題である。こうした課題で政権、支配層の主流と争い、その欺まんを打ち破らない限り、広範な中間層の支持を支配層に奪われ、労働者階級は孤立させられることになる。
 これは、かつてのサンフランシスコ講和条約をめぐる闘いや、沖縄復帰闘争が、支配層主導の欺まん的「解決」にとどまった経験を見ても明らかである。サ条約は米国などとの「部分講和」で、沖縄はいまだ米軍基地に占拠されているが、歴代政権はこれを「成果」と打ち出して延命した。
 先進的労働者・労働組合は、独立・自主の国の進路をめざす戦略的闘いを準備しなければならない。 (O)


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