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2018年2月25日号 1面

米国が新核戦略
衰退巻き返しで凶暴さ増す

 「評価」し追随する安倍政権許すな

  トランプ米政権は二月二日、米国の新たな核戦略の指針となる「核体制の見直し(NPR)」を発表した。
 トランプ大統領は昨年の政権発足直後から新たなNPRの策定を表明しており、八年ぶりの改定となる。
 新NPRは、核兵器の使用について「米国や同盟国のきわめて重要な利益を守るための極限の状況に限る」としつつ、「極限の状況」には「国民やインフラ、核施設などへの重大で戦略的な非核攻撃」もあてはまるとした。すなわち、通常兵器による攻撃に対しても、核兵器の使用をためらわないと公言したものである。
 さらに、新たな核兵器開発を進めるとしている。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)用「小型」核兵器や、空中発射長距離スタンドオフ・ミサイル(LRSO)の開発を検討。冷戦後配備を取りやめた、海洋発射型の核巡航ミサイル(SLCM)を再配備する方針も盛り込んでいる。
 核の使用条件は、オバマ前政権による前回のNPR(二〇一〇年)で、非核保有国に「核兵器を使用しない」としていたことから変わった。だが、今回のNPRは、トランプ大統領個人の性格によるものではない。核兵器の刷新計画が打ち出されたのは、オバマ政権時代の一六年である。
 なお、「小型」の核といっても、広島型原爆と同等以上の爆発力を持ち、数十万人を一瞬で殺戮(さつりく)できるものである。

中国・ロシアへの対抗
 トランプ大統領はNPRで、中国とロシア、さらに朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)を名指しし、対抗する意思を示した。
 NPRは、核兵器の使用に対するハードルを下げることで、自らの覇権にとって脅威となり得る大国、とくに中国を強くけん制し、さらに中小国・人民をどう喝して抵抗の意思をくじき、世界支配を維持しようとするものである。
 米国は最大の核保有国であり、世界の争乱の根源である。朝鮮戦争の際、当時、核保有国でなかった中国に対する核攻撃を検討したし、ベトナム戦争機関中には二百回も、核使用を検討したとされる。
 米帝国主義の危険性に変化はなく、ますます凶暴性を増している。


巻き返し策の破綻は必至
 米国経済は衰退を早め、国内では貧困化が進み、格差は耐えがたいまでに開いている。この内戦にさえなりかねない危機のなか、「米国第一」を掲げて人民の不満を利用し、登場したのがトランプ政権であった。
 その狙いは、金融を中心とする自国経済の再建と、軍事力の強化による世界支配の維持である。
 こんにち、トランプ政権は他国に通商上などの負担を押し付け、国内ではインフラ投資や大減税などを実施することで危機を乗り切ろうとしている。だが、これはすでに国内総生産(GDP)に匹敵するほどまでに膨れあがった累積財政赤字をますます深刻化させずにはおかない。
 財政危機の深刻化がもたらす事態は、二月初旬の株価急落とそれの世界的波及で垣間見えた。トランプ政権が世界支配を巻き返すために行う国内、対外政策は、米国を再生するどころか危機をさらに深化させ、世界に広げる。
 「核超大国」の米国であっても、中長期には、この限界から逃れられない。
 NPRは悪あがきにすぎず、米国は衰退を押しとどめることはできない。
 NPRに対して、朝鮮が反発したのは当然である。ロシア外務省は「自衛のため必要な措置は取らざるを得ない」と明言、中国の「環球時報」も「中国は対策をとる必要がある」と述べた。核保有国のインドも、以前から核戦略の「見直し」を掲げている。
 米国の巻き返し策によて、世界は新たな核軍拡の様相を強め、核戦争の危険性は高まる。
 諸悪の根源は、最大の核兵器保有国で、NPRで世界への核どう喝を強める米帝国主義である。
 全世界の労働者階級は、中小国・人民と連帯し、米帝国主義との闘いを強化しなければならない。米帝国主義の世界支配をよしとしない帝国主義国の一部ともときに連携することも可能である。

日本は核戦略で前面に
 核兵器の「小型」化と刷新が進めば、日本への「核持ち込み」は、従来以上に恒常化する。日本はますます、米核戦略で「対中国」の矢面に立つことになる。アジアの緊張はいちだんと高まる。
 NPRを「高く評価する」(河野外相)などという安倍政権の態度は、被爆国の政権にあるまじき、米国の先兵役で、断じて許しがたい。安倍政権の態度は、わが国をアジアでさらに孤立させ、核の惨禍に再度、巻き込みかねないものである。
 米国と、追随する安倍政権との闘いを前進させ、アジアの平和を守らなければならない。    (O)


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